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第3部.リムウル 第2章
11.反撃
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“そろそろ頃合いだな”
ギメリックはそう思い、戒めを解く呪文を口の中で唱え始めた。
欲しかった情報は、イェイツの心を読むことで得られた。
思った通り、ルバートはアイリーンへの執着から、エンドルーア本国へは知らせず、自分一人で事を収めてしまおうとしている。
“一時はどうなることかと思ったが、おかげでこっちは命拾いだ”
20人ばかりの兵士の小隊は、闇にまぎれて静かにラザールの町並みを通り抜け、森の中に分け入ってきた。
方角から見て、間違いなくベルガードのルバートの屋敷へと向かっている。
“たいした執心だな。5日もかけて俺たちを追って来たとは……”
ルバートの馬車へと連れ込まれた彼女が心配ではあったが、何かあれば心話で知らせろと言ってある。
できるだけ、町中で騒ぎを起こしたくはなかった。
エンドルーアの密偵であるルバートの部下は表向きにはアドニアの兵だ。
小隊とは言え、アドニアの兵が密かに国境を越えてリムウル国内に入り込んでいると知れたら、国際問題になる。
エンドルーアの侵略を受けてただでさえ過敏になっているリムウルに、よけいな紛争の種をまきたくはなかった。
しかしここまで来れば、誰かを巻き添えにする恐れもなく、自由に魔力を使って暴れられる。
ギメリックは一気に力を解放し、自分を戒めていた鎖を断ち切った。
驚いた兵士たちが剣を向けてきたが、彼らの乗った馬に強く気を送ると馬たちは一斉にいなないて、さお立ちになった。何人かが馬から転げ落ちる。
斜め後ろのイェイツが魔力で攻撃を仕掛けてくるのを軽くかわし、馬を駆って前を行く馬車に迫った。
異変を察した馬車がスピードを上げる。
ルバートが馬車の周りに結界を張ったらしい。
強固なガードが簡単には中へ踏み込ませまいとする。
“引け! この娘の命がどうなってもよいのか?”
焦った様子のルバートの心話が響いて来た。
それには答えず、アイリーンに向かって問いかける。
“アイリーン、状況を教えろ!”
“……”
一瞬、苦しげに息をつく彼女の気配が伝わって来て、ギメリックは眉をひそめた。
“どうした?! 大丈夫か?”
“……ええ、ルバートは結界を保つので精一杯みたいよ。私は大丈夫”
“よし、自分の周りに結界を張っておけ。少々荒っぽいぞ、気をつけろ”
ギメリックは呪文を唱えて風を集め始めた。
そうするうちに、何人かの兵士たちが追いついて来た。今にも彼らの剣がギメリックに届きそうになる。
ゴォッ!!
耳がつぶれるかと思うほどの轟音とともに、突風が襲って来た。
馬車は傾いて木にぶつかり、宙に浮いた車輪を空回りさせながら横転した。
馬に乗った兵士たちも、ことごとくなぎ倒されて地面に転がる。
スピードがついていたからたまらない。
彼らはそのまま気絶して、森の下草の中から起き上がってこなかった。
風塵がおさまるのも待たず、ギメリックは馬から馬車の上に飛び移った。
彼が天に向いた馬車の扉を開けようとするのと、その扉が内側から開いたのはほぼ同時だった。
「ギメリック、これ……」
アイリーンの声がし、突き出されたものは、取り上げられていた彼の剣だった。
もちろんルバートには触れることができず、常人の兵士に持ち込ませたのだ。
アイリーンもそのまま持つのはつらかったのだろう、馬車の小窓を覆っていた布で巻いてある。
ギメリックは剣を受け取り、馬車の中をのぞき込んだ。
ギメリックはそう思い、戒めを解く呪文を口の中で唱え始めた。
欲しかった情報は、イェイツの心を読むことで得られた。
思った通り、ルバートはアイリーンへの執着から、エンドルーア本国へは知らせず、自分一人で事を収めてしまおうとしている。
“一時はどうなることかと思ったが、おかげでこっちは命拾いだ”
20人ばかりの兵士の小隊は、闇にまぎれて静かにラザールの町並みを通り抜け、森の中に分け入ってきた。
方角から見て、間違いなくベルガードのルバートの屋敷へと向かっている。
“たいした執心だな。5日もかけて俺たちを追って来たとは……”
ルバートの馬車へと連れ込まれた彼女が心配ではあったが、何かあれば心話で知らせろと言ってある。
できるだけ、町中で騒ぎを起こしたくはなかった。
エンドルーアの密偵であるルバートの部下は表向きにはアドニアの兵だ。
小隊とは言え、アドニアの兵が密かに国境を越えてリムウル国内に入り込んでいると知れたら、国際問題になる。
エンドルーアの侵略を受けてただでさえ過敏になっているリムウルに、よけいな紛争の種をまきたくはなかった。
しかしここまで来れば、誰かを巻き添えにする恐れもなく、自由に魔力を使って暴れられる。
ギメリックは一気に力を解放し、自分を戒めていた鎖を断ち切った。
驚いた兵士たちが剣を向けてきたが、彼らの乗った馬に強く気を送ると馬たちは一斉にいなないて、さお立ちになった。何人かが馬から転げ落ちる。
斜め後ろのイェイツが魔力で攻撃を仕掛けてくるのを軽くかわし、馬を駆って前を行く馬車に迫った。
異変を察した馬車がスピードを上げる。
ルバートが馬車の周りに結界を張ったらしい。
強固なガードが簡単には中へ踏み込ませまいとする。
“引け! この娘の命がどうなってもよいのか?”
焦った様子のルバートの心話が響いて来た。
それには答えず、アイリーンに向かって問いかける。
“アイリーン、状況を教えろ!”
“……”
一瞬、苦しげに息をつく彼女の気配が伝わって来て、ギメリックは眉をひそめた。
“どうした?! 大丈夫か?”
“……ええ、ルバートは結界を保つので精一杯みたいよ。私は大丈夫”
“よし、自分の周りに結界を張っておけ。少々荒っぽいぞ、気をつけろ”
ギメリックは呪文を唱えて風を集め始めた。
そうするうちに、何人かの兵士たちが追いついて来た。今にも彼らの剣がギメリックに届きそうになる。
ゴォッ!!
耳がつぶれるかと思うほどの轟音とともに、突風が襲って来た。
馬車は傾いて木にぶつかり、宙に浮いた車輪を空回りさせながら横転した。
馬に乗った兵士たちも、ことごとくなぎ倒されて地面に転がる。
スピードがついていたからたまらない。
彼らはそのまま気絶して、森の下草の中から起き上がってこなかった。
風塵がおさまるのも待たず、ギメリックは馬から馬車の上に飛び移った。
彼が天に向いた馬車の扉を開けようとするのと、その扉が内側から開いたのはほぼ同時だった。
「ギメリック、これ……」
アイリーンの声がし、突き出されたものは、取り上げられていた彼の剣だった。
もちろんルバートには触れることができず、常人の兵士に持ち込ませたのだ。
アイリーンもそのまま持つのはつらかったのだろう、馬車の小窓を覆っていた布で巻いてある。
ギメリックは剣を受け取り、馬車の中をのぞき込んだ。
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