31 / 46
爆買いも程々に
しおりを挟む紗耶香を追い返した日の翌朝。ベッドに居ない律也に気が付き、目が覚めた羽美。
裸で、微睡みながら身体を起こすと、リビングの方から話声が聞こえた。
『…………助かったよ、母さん…うん………え?何で俺達が行かなきゃならないんだ、今忙しいよ……嫁さんの写真、送る………2ショット?裸ん時ならある……はいはい……で?母さんは帰ってこないのかよ、親父寂しそうだぞ…………ふざけんな、誰が親父と住むか……はい、口座に振込んだら移行して………じゃ…』
―――お母様?
羽美は、ベッド下に落とされたパジャマを着て、リビングへと出る。
「律也さん、おはようございます」
「あぁ、羽美おはよう」
「国際電話ですか?」
「まぁね、母親と………頼んでた事あったから」
「指輪、ですか?」
「それもあるけど、今のはまた別件………まだ出社には少し早いな」
「朝食作りますね、私」
電話の会話から、憎しみあって律也の両親は離婚した感じではないようだが、踏み込んで話す内容でもないので、触れないように羽美はキッチンへ行く。
「羽美、朝の運動しない?」
「しません………昨夜もかなりシたと思いますけど」
「可愛いかったなぁ………悶え狂った姿……思い出して抜ける……」
「………どうぞ、トイレで」
「夜は可愛いのに、朝は辛辣だな、羽美」
「朝から卑猥なんですもん………しかも夜はハード過ぎて……体力考えてくれてますけど、縄の痕とか隠すの苦労するんですから……」
律也の趣味には付き合う羽美だが、社会的にその趣味は隠した方が律也の為だと思っている羽美。
昨夜も縄が使われ、胸や腹、背、二の腕に縄の痕が付いている。服で隠れる結び方をしているのは、律也自身が隠しておきたい、と思っているからだと、羽美の想像でしかない。
「可愛いと縛りたくなるのは、羽美が度が過ぎる可愛いさだからだろうな」
「律也さんだけですよ、私を可愛いなんて言うのは」
珈琲豆をミルで挽き、1杯ずつフィルターをマグカップにセットし、沸いた湯をゆっくり落とす羽美。
律也が珈琲はそうやって飲むのが好きだと言うので、羽美も同じ様に飲み始めた。
「ブルーマウンテン?」
「少し、ロースト系の豆も入れました……コクが欲しいな、と」
「味覚の好みが合う奥さんで、癒やされる………」
「危な………もぅ……溢れますよ、いきなり抱き着いてきたら」
期間限定なのか、それとも無期限なのか曖昧な結婚なのに、律也は甘い言葉を絶やさない。勘違いしてしまうんじゃないか、と思ってしまう。恋人の期間が短過ぎて、羽美はこの結婚に自信等無かった。
その律也は、冷蔵庫から野菜を取り出し、器用にピーマンや玉ねぎを千切りにし始めた。卵もあるのでおそらくオムレツだろう。手際よく準備されて、主婦になった羽美は面白くない。それでも、律也の母親との会話で気になった事は聞いた羽美。
「お母様に、私の写真送るんですか?」
「落ち着いたら、とは思うけど……何分、いろいろ通り越して端折り過ぎた結婚だからな………羽美の手続きも大変だろうし」
「私、昨日の内に銀行は名前は変更しておきました……給料の事もあるし……保険や免許証はまだ出来てないですが」
「免許あったのか」
「ペーパーですけど」
羽美の横で、パパッとオムレツをひっくり返す律也。
「料理上手でムカつく……」
「俺ん家………母さん料理作れなかったからな………家政婦の負担軽減で、料理を教えて貰ったんだよ……兄貴も一通り出来るぞ」
「だから、調理器具も揃えてあるんですね………私のお気に入りは無水電気圧力鍋ですが………」
「ズボラ飯最高……もし、欲しいのあれば言えよ、買うから」
「充分過ぎますよ、パスタ迄作れるんだから」
「料理は趣味だからな……出来たし食べよう」
「はい」
オムレツだけではない、他の常備菜やヨーグルトも準備し、ダイニングに運ぶ律也。綺麗好きな為、無駄に汚さない徹底振りだ。
バスタカッター迄あるキッチンに、これ以上何を求めていいか分からない。
―――どっちが奥さんか分からないなぁ
珈琲を運ぶ羽美。いつの間にかペアのマグカップを使うようになっていた。
「ちょっと今からニュース読む」
「あ、はい」
新聞は取ってはいない様で、スマートフォンで新聞記事を読む律也は、朝食時に行儀は悪いが仕事が忙しいので、仕方ないのかもしれない。
羽美も朝食だけの間の行動なので、朝を一緒に迎える様になってから慣れていかなければならない。
「私、お弁当作らせてもらいますね」
「俺のも作れる?」
「今日は外回りの予定は無いんですか?」
「重役会議になると思う」
「え?予定ありましたっけ」
「作った………今」
「作った?………重役会議を?そもそも係長で重役会議に参加ありませんよね?」
弁当箱に炊き立てのご飯を詰め、おかずを作りながら会話する羽美。律也は朝食を食べ終え、食器を運んで来た。
「母さん名義でとある会社の株を買占めてな………金は俺の金だが」
「買占めて、て………どれぐらいを……?」
「今30%かな………まだ奪ってくつもりだが」
「一体何処の会社を………」
「白河酒造」
「…………業務提携しないつもりですか?」
「先に喧嘩を売ってきたのは、向こうだ……買いやすい所から徐々に蝕んでいってる」
「そ、そんなに安い買い物じゃないですよ……ね……」
「まぁ、ちょっとした餌さ………買い戻させるつもりだが、どう出るか、だな」
株主になるつもりではないようだが、律也が何を考えているかは羽美には分からなかった。
0
お気に入りに追加
171
あなたにおすすめの小説
孤独なメイドは、夜ごと元国王陛下に愛される 〜治験と言う名の淫らなヒメゴト〜
当麻月菜
恋愛
「さっそくだけれど、ここに座ってスカートをめくりあげて」
「はい!?」
諸般の事情で寄る辺の無い身の上になったファルナは、街で見かけた求人広告を頼りに面接を受け、とある医師のメイドになった。
ただこの医者──グリジットは、顔は良いけれど夜のお薬を開発するいかがわしい医者だった。しかも元国王陛下だった。
ファルナに与えられたお仕事は、昼はメイド(でもお仕事はほとんどナシ)で夜は治験(こっちがメイン)。
治験と言う名の大義名分の下、淫らなアレコレをしちゃう元国王陛下とメイドの、すれ違ったり、じれじれしたりする一線を越えるか超えないか微妙な夜のおはなし。
※ 2021/04/08 タイトル変更しました。
※ ただただ私(作者)がえっちい話を書きたかっただけなので、設定はふわっふわです。お許しください。
※ R18シーンには☆があります。ご注意ください。
5人の旦那様と365日の蜜日【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる!
そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。
ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。
対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。
※♡が付く話はHシーンです
性処理係ちゃんの1日 ♡星安学園の肉便器♡
高井りな
恋愛
ここ、星安学園は山奥にある由緒正しき男子校である。
ただ特例として毎年一人、特待生枠で女子生徒が入学できる。しかも、学費は全て免除。山奥なので学生はみんな寮生活なのだが生活費も全て免除。
そんな夢のような条件に惹かれた岬ありさだったがそれが間違いだったことに気づく。
……星安学園の女子特待生枠は表向きの建前で、実際は学園全体の性処理係だ。
ひたすら主人公の女の子が犯され続けます。基本ずっと嫌がっていますが悲壮感はそんなにないアホエロです。無理だと思ったらすぐにブラウザバックお願いします。
【R18】転生先のハレンチな世界で閨授業を受けて性感帯を増やしていかなければいけなくなった件
yori
恋愛
【番外編も随時公開していきます】
性感帯の開発箇所が多ければ多いほど、結婚に有利になるハレンチな世界へ転生してしまった侯爵家令嬢メリア。
メイドや執事、高級娼館の講師から閨授業を受けることになって……。
◇予告無しにえちえちしますのでご注意ください
◇恋愛に発展するまで時間がかかります
◇初めはGL表現がありますが、基本はNL、一応女性向け
◇不特定多数の人と関係を持つことになります
◇キーワードに苦手なものがあればご注意ください
ガールズラブ 残酷な描写あり 異世界転生 女主人公 西洋 逆ハーレム ギャグ スパンキング 拘束 調教 処女 無理やり 不特定多数 玩具 快楽堕ち 言葉責め ソフトSM ふたなり
◇ムーンライトノベルズへ先行公開しています
【R18】寡黙で大人しいと思っていた夫の本性は獣
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
侯爵令嬢セイラの家が借金でいよいよ没落しかけた時、支援してくれたのは学生時代に好きだった寡黙で理知的な青年エドガーだった。いまや国の経済界をゆるがすほどの大富豪になっていたエドガーの見返りは、セイラとの結婚。
だけど、周囲からは爵位目当てだと言われ、それを裏付けるかのように夜の営みも淡白なものだった。しかも、彼の秘書のサラからは、エドガーと身体の関係があると告げられる。
二度目の結婚記念日、ついに業を煮やしたセイラはエドガーに離縁したいと言い放ち――?
※ムーンライト様で、日間総合1位、週間総合1位、月間短編1位をいただいた作品になります。
【R18】義弟ディルドで処女喪失したらブチギレた義弟に襲われました
春瀬湖子
恋愛
伯爵令嬢でありながら魔法研究室の研究員として日々魔道具を作っていたフラヴィの集大成。
大きく反り返り、凶悪なサイズと浮き出る血管。全てが想像以上だったその魔道具、名付けて『大好き義弟パトリスの魔道ディルド』を作り上げたフラヴィは、早速その魔道具でうきうきと処女を散らした。
――ことがディルドの大元、義弟のパトリスにバレちゃった!?
「その男のどこがいいんですか」
「どこって……おちんちん、かしら」
(だって貴方のモノだもの)
そんな会話をした晩、フラヴィの寝室へパトリスが夜這いにやってきて――!?
拗らせ義弟と魔道具で義弟のディルドを作って楽しんでいた義姉の両片想いラブコメです。
※他サイト様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる