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土曜の夜はNG

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 ラブホテルでを取った後、律也は羽美をマンションに連れ帰った。

「このクローゼット使ってくれていいから」

 服や下着を保管する場所を羽美に案内し、何点か入れた羽美。

「本当に、これ代金お返ししなくて良いんですか?」
「無理矢理、俺好みにされたんだと思っておけばいい。羽美の好みじゃないのは分かった上でソレにしたんだ……下着はな」
「………絶対、コレ家で着れませんよ……」
「じゃあ、全部下着置いておけば?」
「そうしたいぐらいです………」

 下着をチェストにしまい、顔を赤らめて蹲る羽美。

「だが、金曜はじゃなきゃ、だからな、一着二着は持って帰って貰わなきゃ」
「…………お兄ちゃんが見たら卒倒します……きっと……」
「早めに、挨拶しとかなきゃな……その中に、シアー素材じゃない下着も買った筈だが?」
「あれは、持って帰りますよ……唯一でしたから……まだ……でも色っぽ過ぎて………恥ずかしいです……」
「………今から、全部着せ替えて見てみたいな……」

 突拍子の無い事を突然言われて、羽美は律也を睨む。

「嫌ですよ!また雪崩れ込みでセックスされそうですもん!」
「ちぇっ………お見通しか……」
「私、そろそろ帰りますね……このワンピースも着替えていいですか?」
「は?何で着替えるんだ?しかも、もう帰る、て………」

 羽美は今着ている服以外の収納を終え、クローゼットを閉めると、昨日の服に着替えようとする。

「だって、こんなの着て帰ったら、普段と違う服装だから勘ぐられちゃいますし……下着だって……とりあえず下着も変えて、普段通りにしようと。外泊も1泊で話してますし」
「今夜も泊まっていけばいいだろ、明日は日曜だ」
「土曜の夜は店の手伝いしたいんです、忙しいので」
「…………分かった……なら、明日午後から会えないか?夜には帰す」
「…………それなら、大丈夫ですが……」

 ちゃっかり、日曜もデートの約束を取付ける律也。

「じゃ、決まりだな………て、何処に行くんだ?」
「着替えてくるんです、脱衣場お借りしますね」
「此処で着替えれば?」
「………目の前で着替えるの恥ずかしくて嫌なんです」
「今更だろ」
「下着も変えるんですよ?嫌ですよ」

 脱衣場に行ってしまった羽美を見送り、律也は頭を掻いた。

「………性急過ぎてんな、俺………はぁ……」

 ぼやきが、律也の居る寝室に寂し気に漏れた。

       ❊❆❊❆❊❆❊

 翌日の午後のデートはランチデートとなった。
 待ち合わせは羽美の住む街の最寄り駅にはなったが、羽美が到着するより前には律也は駅で待っていた。

「律也さん」
「…………いいな、それも」
「お待たせしてました?」
「いや、5分ぐらい前に着いたかな」

 スマートフォンの見ていた律也はポケットにしまい、羽美の肩を抱き寄せて、羽美に囁く。

「今日も可愛い」
「!………あ、ありがとうございます………」
「さ、何処で飯食う?何でもいいぞ」
「今日は、私に奢らせて下さい、昨日散財させてしまったので、申し訳なくて」
「気にしないでいい、と言ったろ?」
「駄目ですよ………そうでなければ、帰っちゃいますからね、私」
「……………い、言うなぁ……分かった、デートしたいから奢ってもらおうか」

 駅から歩き出した羽美と律也。だが、律也は一向に羽美の肩から手を放さない。

「いつまで肩抱くんです?」
「デートなら普通だろ」
「そうなんですかね……」
「まさか、そういう事もしてこなかったのか?」
「手ぐらいは繋ぎましたよ」

 律也が思う、羽美の恋愛経験は乏し過ぎて、本当に不思議だった。それでも、律也の恋愛経験を羽美に教えていけばいい事だし、人それぞれの価値観から、付き合い方も変えていけばいい事であるから、律也は食い込んで聞きたいとは思わない。

肩抱いて歩きたいから」
「………はい……」

 羽美の食べたいと言ったのがパスタで、オススメの店に入る。
 女性客に人気なパスタ店だからか、チラホラと女性客は律也へ目線が送られていた。

「スーツ姿もですけど、今日の服装も素敵ですね、律也さん」
「………あぁ……母親がな………デザイナーで送ってくるんだよ、『新作だから着心地確かめろ』とな………兄貴も俺にも居るが、兄貴と同様いい迷惑してる」
「だから、センスいいんですね、きっと」
「服、自分のは買う事もなく助かるけどな」

 仕事着のスーツの着こなしも、普段着もおしゃれだと思っていた羽美。しかも羽美の服選びもは無いと感じた。ただ、羽美自身が着こなし出来ているかは不安ではあるのだが、と思っている。

「お母様とお兄様とは一緒に住んでないんですね」
「離婚してるからな、親……俺と兄貴は父親に引き取られ、母親は今イタリアに住んでる」

 そういうプライベートな話をしてこなかったからか、初めて聞く律也の事。お互いに知らない事がまだ多いのだろうと思った羽美だった。

 •*¨*•.¸¸♬︎

「あ、すまない、マナーにしてなか………ちょっと出てくる」
「あ、はい」

 慌てる様子の律也。スマートフォンが鳴り店の外へと出て、通話をし始めた途端、怒鳴っている様子が見て取れる。
 料理が来てもなかなか戻って来ないぐらい長い電話で、羽美は食べずに待っていた。

「すまなかった………あれ、食べずに待っていたのか」
「先に食べるのも違うな、と」
「…………ごめんな、羽美」

 頭を撫でられ、ドキッとさせられた羽美。でも、その撫でた律也は何処か寂しそうな顔をしていた。

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