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倍以上の鬼畜へ♡
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しおりを挟むコンコン。
『おはようございます、ルカス様、マシュリー様…………朝食をご用意致しますが、召し上がりますか?』
お互いに笑い合った後、扉の外からカレンの声が掛かる。昨夜用意された軽食はクロワッサンにサラダや生ハム、卵が挟まったサンドイッチと、果物少々。もう時間が経ち過ぎて、野菜は萎びて、クロワッサンや生ハムは乾燥してしまっていた。
「た………食べれません………よね……」
「さ、流石に………腹壊すかもな……」
『ルカス様?』
「あっ!すまない!入って来てくれ!起きてるから」
料理の事は全く分からないマシュリーとルカスに、昨夜の軽食を食べていいか判断は出来ず、カレンに聞くつもりなのだろう。マシュリーの肩に、真新しいバスローブを掛けて、開けた胸を隠させてから、カレンに返事をした。
「失礼します…………えっ!えっ!えっ!」
「…………あ………そういえば、髪色と目の色変わったんだった……見慣れてくれ、カレン」
「ル、ル、ルカス様っ!い、医者を!」
慌てふためくカレンや侍女達だが、エリスだけは至って冷静だった。
「カレン様、落ち着いて下さい、マークもルカス様程では無いですが、髪色や瞳が白銀に近い色に変化しましたよ」
「マーク迄もかぁ……」
エリスはマークと交際している。見ていても不思議ではない。マークは皇族の血脈。皇帝の腹違いの弟の、妾腹の子。身分は低いが、れっきとした皇位継承権は持っている。
「び、びっくりしましたが……ルカス様の髪色の方が…………きらびやかでらっしゃって……」
「あぁ、驚いたよ………で?マークも離してくれなかったろ?エリス」
「!!」
「ルカス様、そのお言葉の返事はマーク卿に伺って下さいね」
「……………あ、強制的になってしまうか……すまない、エリス」
「い、いえ………」
顔を赤らめ、エリスは俯いたままだ。言葉じりで、受け取る側が不快になりそうな言葉は、避けねばならない。
「ところで、カレン………昨夜用意してくれた軽食が手付かずなんだ……まだ食べれるだろうか………作ってくれた料理人に悪い事してしまった」
「………………召しがってないのですか?」
「召しがったのは、マシュリーだけだ」
「ル、ルカス様っ!」
「食べ逃してな………腹は減ってるが、大丈夫なら食べようかと………」
「新しく用意致します………生物ですし、体調を崩しては大変ですから」
「…………そうか………料理人には謝っておいてくれ」
「畏まりました………その前に、湯殿を使われますか?」
「そうだな…………マシュリー、一緒に入ろう」
「えっ!」
抱き締められている腕に力が入り、マシュリーはビクッと身体が跳ねる。
「嫌?」
「い、嫌では…………でも………あの……シーツの片付けは………」
「……………あぁ……カレン」
「はい」
「今迄、房事後はアナやエリスに頼んでいたが、お前達にも知っておいて欲しい……」
ルカスはマシュリーやアナ、エリスがツェツェリア族で、体液から宝石が出来る事を説明する。その力は神力だと、昨日の結婚式での話を始める。カレンやマシュリー付き侍女達は黙って聞いていた。悪用されかねない神力である事、コルセアやアガルタに狙われている事等、説明を事細かく話す。
「分かりました、私達は皇太子妃マシュリー様をお守りするのが仕事……………そのお力があるのならば、マシュリー様が非公開を望むのですし、私供でその秘密を守りましょう」
「頼んだ………必ず他言無用にしてくれ」
皇太子妃になった以上、公務で外泊もあるだろう。必ずしもアナやエリスが付いてくる訳ではない。だからこそ、ツェツェリア族の神力を知っておいて欲しかったのだろう、とマシュリーはルカスを見て思った。
「これで納得致しました」
「…………え?」
「いえ、侍女内の仕事の事でございますから、お耳に入れる事ではございません」
カレンは、何故房事後のベッド処理をアナとエリスにだけ頼んでいたのか納得したのだ。アナとエリスはツェツェリア族で、長年マシュリーの侍女であるから、事情は知り尽くしているからこそ、ルカスは頼んでいたのだろう、と納得したのを、わざわざ答えをルカスは求めてはいない。
「…………では、風呂に入っている間、朝食とベッドの処理を頼む………アナとエリスに処理等は聞いてくれ………マシュリー、風呂に入るよ」
「畏まりました」
そして、風呂場からまたマシュリーを貪っているルカスの気配を感じ取りながら、黙々と朝食の準備とベッドのシーツ替え、宝石回収等、仕事を全うする侍女達の姿が、薔薇の間にあったのだった。
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