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日取り決定
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しおりを挟むルカスはその後、ジェルバ国に約1ヶ月滞在した。兵力の安定や街整備、防衛強化等、やらねばならぬ事が山積みで、帰りたくても帰れなかった。
「帰りたいっての!」
「まだ残って下さい!殿下!!ここでの指揮もまだお願いしたいのです!」
「指示は手紙でやれるだろ!!」
あれもこれも、と指示待ちの案件を抱えさせられているルカス。街整備に連れてきたモルディア皇国の役人達や、ジェルバ国に残っている大臣等に引き止められている。
「……………はぁ……会いたい」
「手紙出されたら?」
「書く暇ねぇじゃねぇか………朝から晩まで」
「…………そんなルカス様にお手紙が………!!」
マークがルカスに渡そうと、手紙を見せた途端、奪っていくルカス。しかし、差出人はマシュリーではなかった。
「………………父上か……捨てといてくれ……じゃない、代わりにお前見ておいて、返事しておいてくれ」
「いいんですか?見ても」
「…………構わん………どうせ、こっちであれやれこれやれ、だろ?」
皇帝から来た手紙等、全く興味が無く、仕事への士気も上がらないルカスはマークに任せてしまう。仕方ないなぁ、と言いたそうな顔をしたマークは、封を開け、手紙を読んだ。
「……………………ほぉ………これはこれは……俺が返事していいなら書きますけど?マシュリー様との結婚式の日取りを勝手に決めるがいいか、と陛下から」
「!!…………何!?」
「なかなか帰って来られないから、決めれないと書いてあります…………まだ帰れないから5年後ぐらい後に予定しといて下さい、でいいですか?」
何故5年?とマークが勝手に決めるのか。そして、そんな勝手に決めるな、とルカスはマークを睨む。5年もマシュリーに会わない、と勘違いされてしまう。
「直ぐに帰る!!そして帰ったら直ぐに挙げる、て書いとけ!!」
「………………そんな訳ないでしょ……ですが、日取りは決めたいとは仰ってますね……1度帰って来い、と」
「じゃぁ、俺の採決を求め過ぎるな、と言っておけ!仕事が出来る者を選んでここに来てるんだ。採決求めなくとも、専門家なんだから俺が指摘する事も少ない……如何しても悩むなら、採決を求めに書簡を送れとな!」
「はいはい………じゃあ、そう通達しときますよ………で?いつ帰ります?」
「今直ぐ!」
「それは無理………せめて明日に」
結局、マークに阻止され翌日帰る事になったルカスは、帰路の5日間、うきうきそわそわして、マークにウザがられ、モルディアー二に到着した。
「え?ルカス様が?今日お戻りになるの?」
「はい、先程早馬が到着しまして、午後には到着される、と」
マシュリーがルカスの帰郷を聞いたのは、皇妃と一緒に居た時だった。
「やっと帰って来られたのね………余程、コルセア国との戦闘は厄介な事だったのかしら」
「…………お怪我はされてないのでしょうか………」
心配そうにするマシュリーと、心配している様子ではない言葉が皇妃から出る。
「その様な話は聞いておりません………お迎えのご準備されますか?マシュリー様」
「はい、お出迎えはしたいです」
「では、ルカスが帰郷したら知らせに来て頂戴、カレン」
「畏まりました」
しかし、ルカスはその午後ではなく、早馬からの知らせから昼前にモルディアー二に入ったと知らせが入り、マシュリーは急ぎ城門へと歩く。マシュリーが城門に着く頃には、城門がざわざわしていた。
「まぁ、何かしら?もうお帰りになったとか?」
「違う様ですよ………貴族のご令嬢方ですね」
「ご令嬢?………何故ご令嬢方がこんなに集まって………?」
野次馬の様に、城門では令嬢達が集まっている。
「ルカス様がお帰りになられるんですって!」
「凱旋帰国のお祝いを伝えなければ!」
城門がざわついていたのは、ルカスが帰郷するのを聞きつけた令嬢達が集まっている様だった。
「カレン………わたくしは少し離れますわ」
「マシュリー様?」
「…………ルカス様がわたくしを見つけられる様に……あの中では、見つけて頂けない気がして」
「大丈夫かと思われますが…………」
「いいのです」
婚約者なのに、控えめで見守るつもりのマシュリー。城門から離れた所で立ち止まり、ただじっと城門の方をみつめる。
「……………ふぅ……着いた………て、何だあの人集り!」
「…………女っぽいですよ?」
「マシュリーか?」
「違うっぽいですね」
「…………ちぇっ」
街を騎乗で走る訳にはいかず、モルディアー二に入ると馬を歩かせていたルカス。糠喜びになりそうな為、それ以上は言わず、ただ一点、城門を目指した。
「ルカス様~!」
「殿下~!!おかえりなさいませ~!」
「お帰りを心待ちにしておりました!お疲れを癒やしに参りましたわ!お召し下さいませ!」
「何よ!図々しい!!私よ!私をお召し下さい!!ルカス様!!」
「……………マーク、癒やして貰え」
「嫌ですよ、俺だって好みがありますから」
「…………お前、馬鹿そうな女嫌いだもんな……」
「………俺、今女居ますし」
「は!?いつの間に!!」
「ま、それは後程……俺も1ヶ月振りですから、早く開放して下さいね、俺も、彼女も」
「誰だよ!!」
「マシュリー様とイチャイチャしている時間、俺もイチャイチャ出来ますしね~」
「誰だよ………」
マークにも彼女が居るらしく、それを知らなかったルカスは気になって仕方ない。だが、そんな事がすっ飛ぶ程、ルカスは城門に入ると、一目散に馬から降り、駆け出して行った。
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