上 下
49 / 126
コルセアと開戦

48

しおりを挟む

 怒涛の初体験と、ルカスの鬼畜さを理解した夜から1週間。マシュリーはルカスをそれから拒否をしている。日を跨ぐ迄に、部屋の続き扉をノック3回をマシュリーは毎夜していた。

「マシュリー様、本日は皇妃様から、皇族専用庭園でお茶のお誘いが入っている以外、ご予定はありません」
「分かりましたわ」

 マシュリーは睡眠不足から解消され、にこやかな表情をカレンに返す。
 2回目の房事の朝、今度はルカスだけでなく、マシュリーも怒られた。身体中、キスマークだらけの朝から腰砕けのマシュリーを1人ベッドに残し、薔薇の間に帰り幸せそうに眠るルカスを叩き起こし、マシュリーに対しては、と言った手前、抱き潰されている状況に呆れ、流されて結局してしまった事に、マシュリー自身にも責任があるのだ、と懇々とカレンに説教されたのだ。母親の様に、ルカスを見守り、その妻の様に扱うカレンは最早、姑だった。2人に接近禁止令迄通告され、おかげでマシュリーはキスマークも消え、睡眠不足も無く、本当の姑になる皇妃とのお茶会に参加出来るのだから、結果的に良かった。
 だが、マシュリーはルカスと会えない日が続き、少し寂しく感じている。そして、先日マークが帰国したらしく、忙しさが増したらしく会えなくなってしまった。

「ルカス様は忙しいのかしら……」
「何でも、コルセアの方で動きがあったそうですね」
「…………やはり、輸出量と質に問題があったのね………」

 政の事は、あまり関与していないマシュリーには、ルカスも教えてはくれない。ジェルバ国の事に関しては、簡潔に教えてはくれてはいるが、どこ迄簡潔にしているか分からないのだ。

「失礼します………マシュリー様、ルカス様がお見えになりました。」
「ルカス様が?」

 カレンの監視下であれば、接近禁止令は解かれるが、マシュリーはカレンをチラ見する。

「過度な接触で無ければ」

 身体を重ねて以降、所構わずスキンシップをするルカスに対し、マシュリーも付き合う必要はない、と言われ、モルディア皇国でのモラルをマシュリーはカレンから教えて貰う事も屡々だった。

「マシュリー」
「ルカス様………ご機嫌如何ですか?……またお忙しい様ですが、お休み取れていますか?」

 数日振りのルカスの姿に如何しても質問してしまうマシュリー。そんなマシュリーにルカスは抱き締め、頬にキスを贈る。
 カレンからは、注意を受けず、は許容範囲内となる事を覚える。

「ご機嫌は悪いよ………マシュリーを抱けない日が続くから…………カレンの目が痛いし」
「ルカス様、当然です!」
「口にキスぐらいは良いだろ!?」
「それ以上しなければ」
「じゃ……………マシュ………んぐっ!」

 口にキスをしようとするルカスにマシュリーの手が塞ぐ。

「ルカス様に唇を許せば、押し倒されそうな予感しかないので………それに……今侍女達の前ですし………恥ずかしいです」
「ちぇ………あ、そうだ……報告があって来たんだ………明日朝にジェルバ国に旅立つんだよ………暫くはあちらに行かなければならない…………戻るのはまだ未定なんだ」
「長くなる、という事ですか?」
「コルセアに動きがあってね………今戦闘中なんだ………だから、マークと兵士達を連れて暫く戦地に行ってくる」
「…………大丈夫なのでしょうか……」
「本格的な戦闘になるのはもう少し先になるとは思う」
「…………戦争……阻止は出来ないのですか?」

 心配そうに、マシュリーはルカスを見つめ、抱き締めている腕に力を入れ、更に抱き締めていくルカス。

「コルセア側はまだジェルバ国がツェツェリア族の治めていると思っている。現に、兵士の武装はジェルバ国の武装だからね……だから、のらりくらりと戦って、時折殲滅させるぐらいで時間稼ぎは出来る筈………王が……義父上が居ると信じてね」
「コルセアから使者や兵士が来る度に、戦闘になって大丈夫なのでしょうか?」
「コルセアだけじゃないよ、アガルタもあり得る話だ………だから、城塞が出来る迄の時間稼ぎ」
「……………お気を付けて行ってきて下さいませ、ルカス様」
「大丈夫…………俺にはがあるからね」

 ルカスは、小さな布袋をマシュリーに見せ、マシュリーの手に乗せた。

「昨日、出来てね………カフスと、ピンバッジを作った………流石ツェツェリア族の加工技術だ……君のネックレスを頼んだ職人に、また頼ませて貰って作ったよ」
「……………お守りにして下さいますの?」
「当然………俺は君と共にあるからね」

 赤い宝石が着いたカフスとピンバッジ。黒髪のルカスには似合う色だ。血の深い赤い色の宝石は、マシュリーには気恥ずかしいが、ルカスが大事にしたい、と言うならば、マシュリーは構わなかった。
 ルカスの背に腕を回し、温もりを感じる。

「ルカス様………今夜………駄目……ですか?」
「俺が断るとでも?」
「思いません………」

 イチャイチャするな、とは言われてはいたが、私室の中ではあるのと、暫くルカスは留守になる為、カレンは聞かなかった事にした。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

【R18】初夜を迎えたら、夫のことを嫌いになりました

みっきー・るー
恋愛
公爵令嬢のペレーネは、婚約者のいるアーファに恋をしていた。 彼は急死した父に代わり伯爵位を継いで間もなく、ある理由から経済的な支援をしてくれる先を探している最中だった。 弱みに付け入る形で、強引にアーファとの婚姻を成立させたペレーネだったが、待ち望んでいた初夜の際、唐突に彼のことを嫌いだと思う。 ペレーネは離縁して欲しいと伝えるが、アーファは離縁しないと憤り、さらには妻として子を生すことを求めた。 ・Rシーンには※をつけます。描写が軽い場合はつけません。 ・淡々と距離を縮めるようなお話です。 表紙絵は、あきら2号さまに依頼して描いて頂きました。

つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福

ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡 〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。 完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗 ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️ ※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。

処理中です...