32 / 126
ルカス、再びジェルバ国へ
31
しおりを挟む百合の間に戻ったマシュリー。カレンや他の侍女達が、夕食の準備を完了させ、待っていた。
「マシュリー様、お顔が優れませんね……如何されました?……アナ、エリスも……」
「…………戦になるかもしれない、と聞きました……」
「…………それはルカス様から?……」
「…………はい……」
「マシュリー様………この国はこの大陸一と言われた大国……戦をし続けこの領土となり、長く戦はしなくなりました………久しぶりの戦になると、その記憶も無い者ばかり……平和に慣れてしまっても、殺し合いにならない為に、防衛には力を入れております………攻め込まれても、国境より入られる事はありませんわ」
「…………いいえ……ジェルバ国はそうやって防護壁を破られ続けた国………安心等ありません………わたくしは戦になるなら、それを止めたい!」
「…………そうですね……それが一番ですよね………」
だが、結論等出ない。結局頭を悩まし、マシュリーは食事も喉を通らず就寝した。
♡♡♡♡♡
翌朝、マシュリーが起きた頃、ルカスがジェルバ国へ旅立って行った、と聞かされた。
「え?何故ですの?」
「移住住民を早急に移動させる為に、兵を派遣し指揮を取る、と仰って夜中に旅立たれて行かれました。民の代わりに、兵を配備しコルセア国の使者を捕らえ、思惑やモルディアへの侵略意志の有無を確認する、と……モルディア皇国の兵は、ジェルバ国の兵に武装もさせるので、民達は安全に移住させる、と仰っていかれました。」
「…………教えて頂ければ、お見送りしたのに……」
「姫様が、昨日のお話で、気が重いだろうから、と…………」
「いつ帰ってくるのかしら………」
「コルセア国の使者がジェルバ国へ来た後ではないかと」
「………………」
マシュリーは窓辺に立ち、ジェルバ国がある方角を見た。壁も見えない遥か向こうに向かいルカスは移動している。胸の前で手を組み、マシュリーは祈る様に呟いた。
「…………どうか、ご無事で………皆も無事に移動出来ます様に………」
「「姫様……」」
アナもエリスもマシュリーを見て祈ると、カレンや他の侍女達も同じ様にして帰りを待つのだった。
♤♤♤♤♤
「寝みぃ…………」
「何も夜中に出発する事ないと思うんですけどねぇ」
数台の馬車や荷台等、運んで移動するルカスとマーク。荷台の上で仮眠し、寝るに寝れなかったのか、首の関節をポキポキ鳴らして、起き上がる。
「夜中に出発したら、街一つに泊まらず行けるだろう?それに帰りは大所帯、街に寄らずに帰路に着くつもりなんだから、少しは慣らしとかないと…………マークも少し寝ろ……馬も任せとけ」
「…………では、遠慮なく」
荷台から、馬に飛び乗り、マークが持つルカスの馬の手綱を渡すと、マークは馬から下り荷台へ寝転がる。
「責めて馬車内で寝たいんですけどねぇ……」
「文句言うな………馬車はジェルバ国王夫妻用だ」
「……………そういう気遣いが出来るなら、もう少し、マシュリー様の気持ちを組んで、直ぐに抱き着こうとするの辞めればいいのに……」
「五月蝿い……マシュリーのあのふわふわした感が俺の欲に負けるんだ!」
「…………あぁ、確かにふわふわ………」
マークの脳内に、マシュリーを思い起こし、触れている様な物言いに尽かさず、ルカスは激高する。
「マーク!!脳内でマシュリーを汚すな!」
「………は?汚すなって言いました?ルカス様が言います?ルカス様だって、毎夜マシュリー様想像して、汚してるんじゃないんですか?だから、夜中出発する、て急遽変更したんでしょ!余計な鬱憤を考えずに済むから!」
「……………ぐっ………」
「いい迷惑ですよ、本当に………予定にはしていたから良いものの、本当だったら今頃出発だったのに………昨日のマシュリー様に抱き着いて、己の欲の捌け口に部下達を振り回さないで下さ~い」
「……………」
「で?マシュリー様には、『気が重いから』と、昨日の不安そうなご様子を気にする素振りで言葉残して、本音違いますよね?」
「………………五月蝿い!!さっさと仮眠しろ!!」
図星だった様で、ルカスはもう何も言い返せなかった。ルカスの欲求不満が増していく。姿を見れば益々汚したくなりそうで、会わずに出発した事を、マークは気付いていた様だ。既に寝息を掻くマークに憎しみさえ覚えてきてしまうルカスだった。
8
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
【R18】初夜を迎えたら、夫のことを嫌いになりました
みっきー・るー
恋愛
公爵令嬢のペレーネは、婚約者のいるアーファに恋をしていた。
彼は急死した父に代わり伯爵位を継いで間もなく、ある理由から経済的な支援をしてくれる先を探している最中だった。
弱みに付け入る形で、強引にアーファとの婚姻を成立させたペレーネだったが、待ち望んでいた初夜の際、唐突に彼のことを嫌いだと思う。
ペレーネは離縁して欲しいと伝えるが、アーファは離縁しないと憤り、さらには妻として子を生すことを求めた。
・Rシーンには※をつけます。描写が軽い場合はつけません。
・淡々と距離を縮めるようなお話です。
表紙絵は、あきら2号さまに依頼して描いて頂きました。
つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福
ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる