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アンナレーナ♥
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しおりを挟む「お帰りなさいませ、お嬢様」
「…………入浴するわ」
「ご用意してあります」
アンナレーナの住む屋敷、法務大臣の侯爵邸。アンナレーナは、帰宅後直ぐに入浴し、最先端のその時期の最高級のドレスやアクセサリーに見を纏い、手紙の返信を書く。
「これをルカス殿下に出して」
「畏まりました」
色香の香るお香等で焚き染めた紙での返信等以ての外だった。アンナレーナがルカスの事を好きだと思わせてはいけないからだ。ルカスからアンナレーナに来る手紙もまた然りで、短的な要点しか書かれてはいない手紙。今来たルカスからの手紙もただ、『直接話したい事がある』だった。挨拶も何も無いのだ。暫く待つと、ルカスから迎えが来る馬車に乗るアンナレーナ。城にある皇族専用庭園に、馬車は入る。それがアンナレーナには特別に感じていた。『皇族専用』それがアンナレーナにとっては最高のステータスだからだ。待ち合わせの庭園内のガゼボに座って待つアンナレーナ。
「この庭も来るの久々ね………」
ルカスはジェルバ国の事で忙しくしていて、つい先日帰国したばかり。まだ忙しいだろうに、会いたいと言うルカスの仕事に進展があって結婚話でも出るのかと思っていた。
「アンナ?…………待たせたな」
「…………ルカス様、お帰りなさいませ………お忙しいのでしょう?帰国早々話したい事があるなんて、お珍しい事」
「あぁ、如何しても早く話ておきたくてな」
「まぁ、何ですの?」
「婚約話の事だが…………」
アンナレーナは扇を口元に持っていたのを顔を隠し、『キタ!』と思い、扇を開く。
「あぁ、忘れてました………婚約発表でもします?」
「いや……………その反対………無かった事にしてくれ」
「……………は?」
「だから、婚約破棄」
アンナレーナは驚き過ぎて、扇を落とす。
「今、破棄と仰ったの?」
「そう…………扇落としたぞ?……お前、汚れるの嫌がるよな………?………アンナ?」
青褪めて固まるアンナレーナだが、ルカスは続ける。
「まぁ、理由は………お前と結婚する気無くなった、てだけなんだが、地位や権力に固執していたお前の事だ、不服があるだろうがお前は俺の子を産む気もないだろうし、考えたら俺はお前に勃たないだろうから、皇太子として、やっぱり俺の子じゃなきゃ駄目だ、と思ってな」
「……………」
「おい、大丈夫か?」
「…………大丈夫じゃないわよ!!私は最高権力が欲しい!貴方は干渉しない女であればいい!て言ったじゃないの!!」
「だから、それは俺の我儘で、お前がそれに付き合う事は無いんだよ」
ルカスはマシュリーの事はアンナレーナには言わなかった。何故なら直前にレナードからの情報で、アンナレーナの思惑が分かったからだった。ルカスが手紙を書いた先を追ったレナードは、アンナレーナの元にも部下を潜り込ませていた。裸にされ縛られ凌辱されてしまったが、その光景をレナードは見ていて、アンナレーナがその屋敷から出た後、部下を助け出し、ルカスに報告をしていた為、マシュリーの事は内密にし、ただ『婚約破棄』を言い通す事にした。
「嫌よ!貴方は私と結婚するのよ!」
「………………お前、俺の事好きじゃないだろ?…………権力に縋りたいなら、身近な所でコルセアやアガルタに嫁げばいいんじゃないか?」
「嫌!!私は婚約破棄には応じないわよ!」
「………ふ~ん…………なら法務大臣伝てに破棄を申し立て、アンナが俺に付き纏う邪魔な女だと、接近命令をすればいっか」
「貴方は、私と利害一致していたじゃないの!!」
「俺…………女に固執しないの、お前も知ってるよな?」
「ルカス様!!」
「……………皇族専用庭園に侵入者だ!連れ出せ!!」
縋り付いて来そうな勢いだったアンナレーナに、一足先に潜ませていた兵に追い出させたルカス。叫び声に似た罵声がアンナレーナから聞こえ、しかめっ面をするルカス。
「拘束しなくて良いんですか?ルカス様………あの女、如何わしい煙管を吸い、ジェルバ国の事でコルセアとアガルタを焚き付け、恐らくマシュリー様の出す宝石を狙ってますよ?」
「……………泳がせる」
「は?」
「コルセアとアガルタの動きも気になるんでな………あの2国がある限り、マシュリーは狙われる」
レナードが心配をしている他所に、ルカスは先の事を考えていた。
「確かに、マシュリー様を狙っている感じでしたね」
「…………マシュリーとの婚約発表前に、法務大臣を納得させるか………異議申し立てしたら更迭するしかないが………」
「アンナ様の父上ですしね……」
「甘いからな、法務大臣は娘のアンナに……」
「ですね」
「とりあえず、お前はこの事を父上に報告してきてくれ」
「構いませんがルカス様は何方に?」
「アンナの隠れ場所に行ってくる………怪しい煙管を吸ってたんだろ?………出処はアガルタの様だが、証拠にはなる」
「………分かりました、陛下に報告後、直ぐ俺も追います」
「マーク!お前はアンナを法務大臣の侯爵邸から出さないように見張れ!」
「はっ!」
仕事を真面目にしているルカス。マークもレナードもこういう所をマシュリーに見せればイチコロなのに、と思ったが、黙っていた。
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