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婚約内定

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 謁見の間から続き間になっている部屋に連れて来られたマシュリー。皇帝、皇妃、ルカス、そして、入口に待機するマーク。

「仰々しくて申し訳なかったな、王女」
「大丈夫ですか?マシュリー王女………陛下が泣かせるから……」

 皇帝と皇妃がソファに座ったので、ルカスもマシュリーにソファに座る様に促され、ルカスはマシュリーの横に座った。しかもべったりと寄り添う様に座るので、マシュリーは如何したらいいのか分からない。

「本心を見たくてな………ルカスが惚れた女性だ………今迄の遊びじゃなきゃいいと思っていた…………ルカス………少しは離れなさい」
「嫌ですよ………密着出来る機会なんて無いんだから」
「ルカス…………マシュリー王女が困ってるわよ?」
「……………」
「困ってるのか?マシュリー」
「………………は、はい……ち、近い………です………」

 先程とは売って変わり、恥ずかしそうにするマシュリーに、皇帝と皇妃は察した。

「ほぉ…………満更でもないのだな、マシュリー王女」
「そうですわね」
「可愛いでしょう?マシュリー」

 ルカスはもうデレデレとしている。

「…………ルカス、少しはマシュリー王女に合わせなさい」
「合わせる?」
「…………皇妃、ルカスには難しいな………」
「マシュリー王女の気持ちが、貴方に追い付いてないのだから、ルカスはベタベタとマシュリー王女にしてはなりません」
「そういうものですか?」
「…………来るもの拒まずだったからな………で?アンナレーナには話したのか?ルカス」
「いえ、まだ…………会ってませんし」
「法務大臣には伝えておいてやるが、お前からも法務大臣に話しをする様に…………あと、レナードにアンナレーナの動向を探らせてる様だが、それは破断しても続けさせておけ」
「それは構いませんが、何かありました?」
「……………コルセア国の男と付き合いがある様でな」
「…………分かりました、明日にでもアンナに会ってみますよ」

 砕けた会話でも、真面目な内容の様で、耳に入れないようにしていたマシュリー。腰に手を回されているというのもあるが、気になって仕方なかったのだ。

「ジェルバ国の移住は順調なのか?」
「…………えぇ、それについては近日中にジェルバにまた行こうかと………コルセア国の使者が誰か探っておきたくて」
「…………では、マシュリー王女の身の安全は任しておけ……連れては行けぬだろう?」
「確かに連れて行くのは怖いですが…………離れたくない………なぁ………と……」
「…………ち、近いです!!ルカス様!!」

 抱き締めようとするので、手で阻止しようとするマシュリー。

「ジェルバ国心配だろ?マシュリーも」
「そ、そうですが………少し離れて下さいませ!!」
「ルカス…………マシュリー王女には、モルディア皇国の皇妃教育させますから、遠慮なく行ってらっしゃい」
「「え!?」」
「そのつもりでしょう?ルカスは見るからに、マシュリー王女を妃にしたがってますし、マシュリー王女もルカスの事を満更でもない様ですし………何よりも、モルディアとジェルバのになりますわ」

 確かに、マシュリーはと担架を切った。だがそれはルカスとの結婚を仄めかすつもりではなかった筈。

「早い内にマシュリー王女は、皇妃教育を初めてしまいましょう………ルカスがまたいつものに走る前に」
「……………そうだな………避妊に気を付けてはいる様だが、子供が出来て妾等作らせる訳にはいかないからな……さっさと、アンナレーナと婚約破棄してこい」
「…………他人事だと思って……」
「お前が勝手に決めたんだろう……身辺調査中だったのに、『お互い干渉し合わないから』と傍迷惑な相手を選びおって……」

 どうやら、『政略的結婚』はルカスとアンナレーナ間で決めたもので、親や国が絡む事の様ではないらしい。

「お互い飽きっぽいから、選んだ相手ですし……」
「それで、愛人の子をアンナレーナが孕んだら如何する予定だったんだ!」
「別にどうもしませんよ、認めないだけで終わりです」

 マシュリーはそれを黙って聞いていたが、如何しても腹が立っていった。

「ルカス様…………」
「何だい?マシュリー」
「……………わたくし………軽蔑しますわ……ルカス様を………」
「え!!」
「子は親を選べませんのよ?親も子を選べません!産まれる命を無責任に扱わないで下さいませ!仮にも婚約者で結婚しようとしたお相手ですわよね!?子も出来る可能性もあるのに、相手が違うから責任は無い、とは言えませんわ!妻に浮気させる夫としての責任はありませんの?」
「………………ま、まだ結婚もしてない相手………だし………」
「その考えを改めて頂かないと、わたくしはルカス様に嫁ぎませんわ!わたくしは夫になる方に浮気されたくありませんし、妻になったら、浮気等出来る性格ではありませんから、軽蔑します!」

 皇帝や皇妃は、マシュリーにたじろぐ。そして、皇妃はマシュリーに落ち着く様に宥める。

「マシュリー王女、そんなルカスを繋ぎ留めておくのはマシュリー王女の手腕ですのよ………頑張りなさい………ルカスはそのマシュリー王女の努力を無下にするのはしないわよね?……………したら………皇太子剥奪しましょうか、陛下」
「おい………ルカスしか息子は居ないのだぞ?」
「関係ありません、陛下の弟君が居られますし、皇位継承順位が繰り上がるだけですわ………ルカスの従弟であるマークが皇太子になれば良いのです………ねぇ、マーク?」
「そうですね、そうしたらマシュリー王女を私が娶ればいいのですし」
「……………」

 蒼白したルカスに追討ちを掛けたマーク。単なる侍従かと思っていたマークが従弟とは思わなかったが、ルカスには効いたらしい。

「ゴメンナサイ………」
「……………忘れないで下さいませ、ルカス様」
「これは頼もしい皇妃候補だ」
「ですわね」



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