上 下
12 / 126
返事

11

しおりを挟む

 暫くして、ジェルバ国王、ジェルバ国の重鎮達、ルカスとマークで話し合いが再び執り行われた。

「ルカス殿………マシュリーに申した言葉は本心か?」
「…………えぇ、本心ですが?………ツェツェリア族同士と結婚させたい、と仰るなら、また策を考えますが、私は冗談で彼女に告白したつもりはありません」

 晩餐会で、匂わせる言葉を口にしていたルカスだが、ジェルバ国王が思っていた以上に、マシュリーが反応した事に驚き、満更ではなかったのに少々焦りを滲ませている。ツェツェリア族の長として、ツェツェリア族の男と結婚する事を望んでいたのも事実で、『未婚を通す』というのなら、貫き通してもいいとさえ思い始めていたジェルバ国王だったのだ。

「其方はマシュリーを妻にして、利用するおつもりか?」
「『利用』と言えば一部そうなるかもしれません」
「許さんぞ!!マシュリー王女は、ツェツェリア族の宝!!移住に前向きであったのに、マシュリー王女を利用に使う等、あってはならぬ!!」
「全くだ!!今すぐモルディア皇国にお帰り願う!!」

 罵詈雑言が飛び交う室内。だが、ルカスは動じる事等無かった。

「モルディア皇国からの移住に関する提案について、お話させて頂くが、自治区の準備は進めています…………モルディア皇国には昔から他種族を奴隷にしてきた歴史もあり、今はその奴隷自体存在せず、異種族もそれぞれ自治区を持ち、生活をしている……だが、問題もまだ山積みなのです………それはこのツェツェリア族との問題を解決しなければ、奴隷問題の解決等しない、という事…………同じ人間で、特殊な力があるツェツェリア族に対する妬みがモルディア皇国には根強い。それは【宝石】を生みだす力………贅沢が出来る様になると、人は自分に無い物を欲する、そしてまた嫌悪感を持つ………それがツェツェリア族に対する恐怖で押さえつけた奴隷として迫害し続けた歴史がある………奴隷制度を廃止した今、今も尚ツェツェリア族との和解に至っていない………和解出来れば、我々モルディア皇国も、人種差別や格差をしない国作りが出来るのではないか、と先々代からの課題だった………先ずは、奴隷解放から始まり約100年、やっとここ迄漕ぎ着けた結果があり、私はジェルバ国に来る事が出来たのです」
「だ、だからといって、何も移住迄せずとも……」
「そ、それに王女を妻に等………」
「既に、モルディア皇国内に、数十人程の少数ですが、ツェツェリア族の者も居ります………お伝えしてませんでしたが………彼らから、迫害の状況を聞いてはいましたが、現実もっと酷かった………彼らには、先に自治区に入り、住んでもらっています………いずれは、そんな自治区等無くなってもいいような国にしたいのが、私の望みであり先々代からの望み………その為に、皇太子としての立場から申せば、異種族であろうと婚姻者が出てもいい、と思っています。現に民の中で異種族間の婚姻をしている夫婦も既に居ますからね…………長年蓄積された因縁を取っぱらい、私がツェツェリア族のマシュリー王女と婚姻を結べば、更に異種族間の人種差別や格差等無くなっていく筈………移住に関しての条件の内、言わなかった条件は、私とマシュリー王女との婚姻………そういう点では『利用』と言えるでしょう……因みに、その婚姻はマシュリー王女をこの目で確認した上で、私の独断で決めた事…………マシュリー王女から断られたとしても、移住計画は進めたいと思ってます」
「「「「………………」」」」

 ツェツェリア族であるジェルバ国側からすれば、迫害を受けなくなるだけでも有り難い話であり、身の安全が確保出来るのなら願ったり叶ったりだった。

「……………ルカス殿…………我々は如何すれば良い?」
「国民への説明は、ジェルバ国の責務かと……もし、移住を拒む民が居ても尊重は必要かとは思います………移住をするのであれば早い方がいい………コルセアやアガルタの事もありますし、移住後はモルディア皇国から、兵を派遣し常駐はさせるつもりです…………侵攻されてはモルディア皇国も困りますからね」
「……………このまま、ここに住み続け、モルディア皇国の兵に守ってもらう訳にはいかないのだろうか………」
「そ、そうだ……それなら移住迄しなくても………」
「………奴隷制度廃止した国が、他国へ奴隷として誘拐等されては、人身売買を斡旋する輩も出てきますが?………モルディア皇国より東側にも異種族の国があり、その様な事を実行しましたが、多勢に無勢だったのか半数は連れ去られて行った過去があった為、それは薦められません…………マーク、今計画書は持っているか?」
「部屋にあります」
「では、それを明日中にはジェルバ国王や他大臣方に、目を通してもらってくれ…………私は、伝えたかった事は全て伝えた……今日はもう休ませてもらう」
「分かりました、直ぐに用意します」
「ジェルバ国王、皆様………よくご検討の程お願い申し上げる」

 そう言ったルカスは、席を立ち、客間へ戻るのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

【R18】悪役令嬢を犯して罪を償わせ性奴隷にしたが、それは冤罪でヒロインが黒幕なので犯して改心させることにした。

白濁壺
恋愛
悪役令嬢であるベラロルカの数々の悪行の罪を償わせようとロミリオは単身公爵家にむかう。警備の目を潜り抜け、寝室に入ったロミリオはベラロルカを犯すが……。

処理中です...