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しおりを挟むデュークはやはり誰かに呪印を残していた様だった。
その者に殺害された可能性が高く、リリアーナだけでなく、グリードも納得する者だった。
「陛下、魔具の事での件でも追求しましょう」
「…………未承認の魔具だな……リアナの魔具の解除も聞き出さねばならんし」
原始的な方法でも、リリアーナが拘束されている魔具も取れず、救出から一度も自由に動けるどころか、傷の手当ても応急処置しか出来ていない。
「私の事は後回しで構いません、陛下、お父様」
「リリ!駄目だ、怪我から時間経ってるから、化膿し始め…………え?……な、何だ?……な、何故リリを抱いてるのに、別の場所からリリの気配がするんだ?」
リリアーナはグリードに横抱きされ、一緒に居るのだが、グリードが不思議そうに天井を見上げた。
「グリード?」
「上階から、リリの気配するんだ………」
「リアナは今、魔力は使えぬ……グリード………気配を感じるならば、番いの刻印以外考えられんぞ!」
「父上………確かに、リリの刻印から来る気配なんです………まるで引き寄せられるみたいに呼ばれ………」
「グリード!ち、ちょっ………きゃぁっ!」
グリードの力が抜け、リリアーナが落ち掛けた。
「っ!…………リ、リリ!す、すまない……な、何で………私のリリは此処に居るのに……」
「リアナ、力が吸い取られている感覚はあるか?」
「へ、陛下………い、いえ……全く……何も感じないんです。誰かの魔力も、グリードの気配も………グリードは目の前に居るから感じないのだと思ってるんですけど、魔力が使えない、というだけで、何も変わらず……」
「陛下、上階へ行きましょう!何かが起きているかもしれません!」
「グリード、リアナを后に任せよ」
「…………分かりました……母上、シャル、リリを頼みました」
リリアーナ達はまだ医務室だ。
上階には人々の気配を感じるので、その中で何かが起きている、という事か。
「ま、待って下さい!私も連れてってグリード!」
「リリ………駄目だ、危険かも」
「危険でも、グリードが私の気配と間違えるのなら、私とも関係がある筈よ!引き寄せられるなら、何かが私の魔力を吸い取ってるんじゃないの?この魔具とか………魔力を吸い取るなんて魔具聞いた事無いけど………」
「…………あながち、予想は間違ってはいないかもしれません……これ迄、未承認の魔具が立て続けに使われていますし、以前からこの準備をしていたのでしょう………恐らくリアナが産まれ、グリード様の番いとして選ばれてから………」
「お父様………」
ドラクロワ公爵の考えは一理ある。
魔具の開発には時間が掛かり、それが最近未承認の物が出てくるという事は、以前から計画していたとしか考えられないだろう。
「うむ………分かった……グリード、惑わせられるな」
「はい………父上………リリ、もう少しの辛抱だなら」
「心配なのはグリードよ、しっかり私の身体を認識してて!」
「フッ………この件が終わったら隅々迄身体を認識する」
「そ、それは今言わなくて良いでしょ!」
デュークの事で悲しむ暇も無いだろうに、冗談で紛らわしているのが痛々しい。
拘束等されていなければ、リリアーナはグリードを抱き締めて慰めていただろう。
急いで、リリアーナの気配がする方へ、グリードの感覚で向かうリリアーナ達。
上階は、デューク死亡説に駆け付けた貴族達が、事実確認をするのに集まって来ていた。
「陛下!グリード様!デューク様が殺害された、とは本当なのですか!」
「今は話をしている場合ではない!犯人追跡中だ!」
悲しむ事は後だ。
事実確認をしに来ていた者達は、大半が関与はしていないだろう。
「止まって下さい!父上!」
グリードは急に止まり、目の前に現れた者を睨み付けていた。
「フローレス嬢!」
「…………慌てていらっしゃいますが、急いで何方に行かれるのですか?グリード様………陛下もお出でとは、嬉しい事です………」
フローレスはグリードが抱くリリアーナは完全に無視だ。
「グリード様、私………嫁ぎに参りましたの……魔力も高めて、そんな無能な女より、グリード様のお役に立てましてよ?」
「っ!…………近寄るな………フローレス嬢………リリの気配でその憎々しい姿で近付くんじゃない!」
「…………憎々しい、だなんて……愛しい、と仰って下さいな………その女から全ての魔力を奪う事に成功したんですよ?」
リリアーナの本来の魔力に切り刻まれた番いの刻印。
それさえも奪う魔具という事なのだろうか。
「危ないですね、あの娘………」
「うむ…………許容範囲以上の魔力を持つ事で、暴走する」
ドラクロワ公爵と国王は、フローレスの状態を冷静に分析をしていた。
「グリード様………その女は近くに置いといてくれて構いません……だって、その女が居ないと、番いの刻印の力も貰えませんもの……」
「フローレス嬢!その魔具は危険だ!今すぐ処分するんだ!」
「…………何故?……私、とても気分が良いんです……」
「だ、駄目………フローレス嬢……正気に戻って!魔力に支配されてるんじゃないの?感じなくても分かるわ!だって、いつものフローレスじゃないんだもん!大っ嫌いだから分かるわ!」
いつもリリアーナはフローレスに虐められて嫌いになったが、リリアーナはフローレスへの謝罪の気持ちもあった。
自分が番いに選ばれていなかったら、最終候補のフローレスに決まっていたのを知っていたから、恨まれる気持ちも分かる。
会う度に、喧嘩して結局負けていたリリアーナは、フローレスの性格も言動も分かっているのだ。
「…………うっ………さい……うっさ……い………」
「フローレス………」
「良い子振って…………グリード様に守られて………私の方が………愛してるのに………アンタなんか…………居なくなればいいっ!」
「っく!」
「ちょ………っ!」
フローレスは聖魔法しか持ち合わせていないのに、攻撃が出来るとは思えない。
だが、確かに攻撃を受けている。
魔力の圧と光線で、視界が悪くなった。
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