4 / 43
3 *思春期
しおりを挟むグリードに思春期が始まると、魔力の制御が再び難しくなってしまった。
性欲も加わって来た事で、昂ぶりが魔力の暴走に繋がったのだ。
グリードの性欲の捌け口は、リリアーナに必然的になり、リリアーナの身も危険が及ぶ可能性も出て来た。
「離れるんだ!リリ!」
「い、嫌よ!だって辛そうなグリードを見ていられないもの!」
「っく………お願いだ………落ち着かせてみせるから、今は離れて……」
その頃になると、グリードは番いの間に身を潜める様に閉じ篭っていた。
番いの間のある洞窟は、魔力を溜めてくれる霊山でもあり、竜の魔力を持つグリードと相性は良い。
「そろそろ、決断の時が迫っている」
「…………陛下……それは、竜の王になるべく為の番いへ封印が近い、という事でしょうか」
「…………そうだ……日に日に増す制御不能の年頃に、リリアーナに協力して貰わねば………」
議会の間で、グリードの番いのリリアーナに、グリードと魔力の保持をし、一時グリードの魔力を減らすのだ。
減らしたからと言って、竜の血脈の魔力は、人間に匹敵しない程の魔力だ。
「異議ございます、陛下」
「サイモン公爵……何だ?」
「些か、番いと仰る令嬢では、難があるかと思うのですが………」
「何故そう思う」
「まだ10代前半でしたな?ドラクロワ公爵の令嬢は………若過ぎやしませんか?」
反対したい気持ちは、番い候補から外された家の者なら分かる。
グリード本人が選んだリリアーナなのに、納得しないのだ。自分の娘以外の娘は。
それ程、竜の血脈に番いを出した家は、その後も恩恵を受けられ、地位も高く、権力や権限も強くなるのだという。
公爵の位を与えられる事もあるので、国政を担う役職を持つ者には、喉から手が出る程欲しいのだ。
なので、過去にドラクロワ公爵家やサイモン公爵家は、竜の血脈に番いを出していた名門中の名門。
余程の事が無い限り降位はあり得ない。
「その点、我が娘フローレスは、純粋にグリード様を愛し、魔力も高く、聖魔法を得意としており、グリード様とは歳も近いではありませんか」
「グリードを愛しているから、という理由だけでは、番いには出来ぬ………それに、リリアーナも聖魔法の持ち主で、魔力も高く、今迄もグリードの魔力を制御しておった………知らなかったのか?」
「っ!………そ、その様な事、初耳ですぞ!陛下!」
「グリードとリリアーナを見ていれば分かる事だ。グリードが精神が揺さぶられる度に、リリアーナが抑え込んでいたのを」
邪な目で見ていたのではないか、と国王に続けられた。
元より、番い候補さえも挙がらなかった貴族達は、その時点で諦めが付いていて、頷く者も多い。
しかし、一度でも候補になった家は、夢見てしまう、私利私欲の塊だ。
次は、その次代の番い候補を狙うしかなく、その時になったら、世代交代になってしまうからだ。
「くっ………し、しかしですな……」
「しかしも、だからも無い………それで、リリアーナに害を与える事も許さぬからな?」
こうなる事は見越している国王。
リリアーナさえ居なければ、とリリアーナの生命の危険もあるので、リリアーナが番いと決められた時に、国王の魔力でリリアーナに防御魔法が掛かっていて、リリアーナが狙われても、魔力で弾き飛ばされるのがオチだった。
ドラヴァールで一番高い魔力の持ち主は国王なのだから、敵う筈も無い。
リリアーナがグリードの番いとなり、過去何度もリリアーナは生命の危険に晒されてきている。
実行犯は処罰しているが、主犯格はリリアーナ反対派の家の者達。
何度、リリアーナの事を認めさせようとしてきた国王やグリードだが、例え番いが誰かに変わろうとも、また同じ事が起こる為、認めさせる事を選んでいる。
命令を降した者達は巧妙に、魔力残渣も残さなかったり、魔力を使わなかったりと、実行犯と主犯格の繋がりが出て来る事が無かったのもあった。
「心外でございます。私は陛下やグリード様に忠誠を誓う者。グリード様が悲しむ様な事は決してしておりませんし、する事はございません」
「……………ならば、リリアーナの封印を早急に準備する!異論のある者は挙手せよ!」
リリアーナの封印とは、グリードの膨大な魔力をリリアーナの魔力に抑制させる事を意味する。
グリードの成長と共に、制御出来るようになる力であるので、封印中はグリードには早い制御が余儀なくされるのだ。
そして、共鳴しあう両者には、お互いの魔力で暴走し傷付け合う事を避ける為、リリアーナにはグリードやリリアーナ周辺にまつわる記憶をも封印し、グリードの居ない地で生活してもらう事になる。
まだ、親離れしていない少女に、離れて暮らさせるのは酷であるが、リリアーナは1人で生活出来る知恵も、后教育で身に付けさせられている。
料理、掃除、平民として生きる一般的常識等だ。
そして、聖魔法を使うリリアーナには薬学知識も叩き込まれていて、薬師としての職の資格さえも持たせている。
よって、リリアーナの方は用意は出来ていると言っても過言ではない。
後は、リリアーナの覚悟と、グリードの説得だった。
グリードがリリアーナと別れ離れになる事は、自分が死ぬより嫌な思いをするだろう。
それだけ、リリアーナに執着する盲目的愛情者なのは、出会ってから一寸も衰えていないからだ。
リリアーナには四六時中警護を付けていて、異変があれば一目散に駆け付けに行くぐらい、リリアーナが優先される。
そんな執着をされると普通は嫌がるが、リリアーナは嫌な顔をしても、グリードなら仕方ない、と許している。
リリアーナも大概で、グリードにラブレターが届くのを知ると、ラブレターを贈った主の前で破り捨てるのは当たり前で、それをグリードは喜んで見ているぐらい、リリアーナもグリードしか見ていなかった。
リリアーナ自身は自分が虐げられるのは良くても、グリードに害を成す者には容赦しなかったので、愛情の深さはお互い様である。
5
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
巨×巨LOVE STORY
狭山雪菜
恋愛
白川藍子は、他の女の子よりも大きな胸をしていた。ある時、好きだと思っていた男友達から、実は小さい胸が好きと言われ……
こちらの作品は、「小説家になろう」でも掲載しております。
責任を取らなくていいので溺愛しないでください
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
漆黒騎士団の女騎士であるシャンテルは任務の途中で一人の男にまんまと美味しくいただかれてしまった。どうやらその男は以前から彼女を狙っていたらしい。
だが任務のため、そんなことにはお構いなしのシャンテル。むしろ邪魔。その男から逃げながら任務をこなす日々。だが、その男の正体に気づいたとき――。
※2023.6.14:アルファポリスノーチェブックスより書籍化されました。
※ノーチェ作品の何かをレンタルしますと特別番外編(鍵付き)がお読みいただけます。
感情が色で見えてしまう伯爵令嬢は、好きな人に女として見られたい。
鯖
恋愛
伯爵令嬢のソフィアは、子供の頃から、自分へ向けられる感情が何故か色で見えてしまう。黄色やオレンジ色、朱色は親愛の色。青色は嫌悪の色。ソフィアが成長し、昔は見えなかった色が見える様になった。
それは、紫色。性的に興味のある時に見える色だ。豊満な身体つきのソフィアを見て、大抵の男性には紫色が見えてしまう。家族以外で親愛の色が見える男性は、兄の友人で、昔から本当の兄の様に慕っているアンドリューだった。
アンドリューのことが、好きだと気づいたソフィアは、アンドリューから女性として見られたいと願う様になる。
可愛すぎてつらい
羽鳥むぅ
恋愛
無表情で無口な「氷伯爵」と呼ばれているフレッドに嫁いできたチェルシーは彼との関係を諦めている。
初めは仲良くできるよう努めていたが、素っ気ない態度に諦めたのだ。それからは特に不満も楽しみもない淡々とした日々を過ごす。
初恋も知らないチェルシーはいつか誰かと恋愛したい。それは相手はフレッドでなくても構わない。どうせ彼もチェルシーのことなんてなんとも思っていないのだから。
しかしある日、拾ったメモを見て彼の新しい一面を知りたくなってしまう。
***
なんちゃって西洋風です。実際の西洋の時代背景や生活様式とは異なることがあります。ご容赦ください。
ムーンさんでも同じものを投稿しています。
婚約破棄された私は悪役令嬢に貶められて、妹皇女の身代わりとして他国に嫁ぐ
sweetheart
恋愛
アザルヘルド大陸の南に位置する皇国エンフェルトに住んでいる伯爵令嬢のリアラ・エメラルドは20という若さで皇子に見込められて、皇子の婚約者となったのだが、あまりに可愛すぎると妹皇女に嫉妬されて嫌がせをされてしまい手を挙げてしまった。
それを見た皇子の激情にあい婚約破棄されてしまう。
残された道は、国外追放で国を去るか、皇女の身代わりに北の帝国エルシェルドに嫁ぐことに皇帝はしかも、かなりの遊び人と聞いていたのに?!
「君以外考えれない」
と夜な夜な甘い言葉を囁いてきて……?
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる