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プロローグ
しおりを挟むリリアーナがグリードと正式に番いとなった事を発表され、そのまま祝賀会が行われている、ドラヴァール城。
リリアーナは仲の良かった令嬢達と10年振りの再会を果たした。
「リアナ様、お元気そうで何よりですわ」
「おめでとうございます」
「ありがとう、皆さん」
「あぁ、羨ましいですわ。グリード様からの刻印………」
10年も会わなくなると、本音を見せない友人達になってしまった気がしないでもなかった。
口では祝辞を述べていても、目が笑ってはいない知り合いばかり。
そういうリリアーナもそんな世界で生きていた筈なのに、そんな対応も忘れかけていて、村で生活していた時の本音をぶつかり合う会話に慣れてしまった。
違和感しかないのだ。それでも記憶を手繰り寄せながら何とか対応をしている。
羨ましそうに見られる下腹部の刻印。
その目線をするのは、グリードの番い候補に迄挙がった令嬢達ばかりだった。
リリアーナが産まれた後、国王と后の前での洗礼式に、まだ幼かったグリードに見初められた事で、リリアーナの人生が決まったのだ。
それから、グリードの番い探しは無くなり、リリアーナの前に候補に挙がっていた令嬢達は、リリアーナに奪われたと思っている節がある。
10年前迄はそんな事を思う事も無かったが、それから変化があったのかはリリアーナには知る術を今は思い付かない。
「少し触らせて貰っても良いかしら?リアナ様」
「え、えぇ………大丈夫だとは思うけど……」
「リリ」
「っと…………グリード?」
別に触るぐらいは良いと思ったリリアーナだが、グリードに止められる。
しかも後ろから抱いて迄、その令嬢が触れようとした刻印を隠した。
「悪いが、リリアーナに触れるのは私だけだよ、令嬢達」
「女同士だから良いじゃない」
「駄目、リリが汚れる………其方の言葉に悪意があるからね………違ったか?」
「っ!」
「グリード!彼女は私の友人の1人よ!そんな悪意ある訳が………」
【本当にそう思った?リリ】
「……………グリード……」
思念が送られてくる。
確かに、触れそうな時、昔とは違う雰囲気に戸惑ったし、嫌だった。
「リアナ様、も、もう大丈夫ですわ」
「サーシャ様………」
「私、他の方に挨拶して参りますね」
リリアーナに触れようとした令嬢、サーシャ。
そのサーシャは知人の居る所を探し、リリアーナから離れて行った。
「まだ諦められないのかしら、サーシャ様」
「そうかもしれませんね、ほら、彼女のお父様はずっと………」
「令嬢達、下世話な話は、隠れてリリにしてくれないかな?言わなくても、頭の良いリリには直ぐに知れるだろうけどね」
「「は、はい………グリード様」」
残った令嬢2人は、番い候補にも掛からなかった令嬢達だ。
だから、リリアーナを羨ましがっても無理なので早々と諦めていたのを子供の時に知っている。
「…………私、久々過ぎて人に酔ったみたい。少し休むわね」
「一緒に行こうか?」
「貴方も下がったら、疑われちゃうわよ。私に対する盲目的愛情は周知なんでしょ?今も」
「ゔっ…………分かった……後で迎えに行く」
「うん」
のどかな村で過ごした10年は、人を変えるのだ、と思ったリリアーナ。
治癒魔法を掛けて迄の疲れは無かった為、給餌から飲み物を貰い、人が少ない回廊のベンチで休む事にした。
「ふぅ………本当に、慌ただしかったから精神的に疲れたのかも……」
「ご機嫌よう」
「……………あら……私に声を掛けて来るとは思わなかったわ、フローレス嬢………外観も変わらなかったし、貴女は直ぐに見つけて目も合ったのに、声が掛からなかったからもう興味無いのかとばかり……」
「相変わらず…………嫌味な女だこと………」
リリアーナがフローレスと呼んだ女は、ドラクロワ公爵の政敵筆頭のサイモン公爵の令嬢だった。
子供の頃から、リリアーナは比較され続け、グリードの番い候補の最有力候補だった、リリアーナの2歳歳上の令嬢。
サーシャ共々、リリアーナが産まれた事で、グリードの番い候補から落ちた事をあからさまに恨む女だ。
「嫌味なんて言ってないわ。確認よ………まだ諦めてないのか、もう諦めたのか………の………こうして、私に声を掛けたという事は、前者だと思うのよね………1人になるのを待ってたのも、想像通り」
「っ!…………本当に嫌な女ね!」
「嫉妬に狂う女も嫌な女だと思うわ………グリードはもう、私と契約したの……これは紛れもない事実」
「貴女なんて、封印中死ねば良かったのよ!」
「まぁ、怖い事言うのね………同じ聖魔法の使い手なのに」
すっかり忘れていた存在で、唯一思い出したくない女だった。
リリアーナが洗礼式でグリードに見初められ、奈落の底に落ちた人生だと、不幸のオーラをフローレスはリリアーナに見せ付けてきていた。
僅か2歳の幼い女児が、そんな事を思う筈もない。
ドラクロワ公爵の政敵、サイモン公爵の入れ知恵でそう育ってしまったとは思うが、フローレスの表情を見る限り、本気でグリードに恋をしていたのをリリアーナは知っているし、今10年振りに会っても、その傾向がありそうだ。
「貴女が産まれて来なかったら、私がグリード様の番いだったのよ!」
「そんな事言われてもね………選ばれたのは私。私はそのグリードの番いとして、物心付く頃から愛してるの………間近で見る?グリードからの愛の証………竜の刻印」
「くっ!」
リリアーナも大概に大人気ないと思う言動だが、それだけの事を返すのは、フローレスとの長い戦いがあったからだ。
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