23 / 37
暴露
しおりを挟む翌朝、アンジェリークはまたセシリアに会いに行く。
落ち着いたかどうかは分からない。
「セシリアお姉様にお会い出来る?」
リュイに部屋の入り口で聞くアンジェリーク。
「アンジェリーク様、昨日は失礼な事を申し上げてしまい、申し訳ありませんでした。……セシリア様に確認してまいります。」
一礼して、部屋の奥に入るリュイ。
「………落ち着いてくれてるといいですね、アンジェ様。」
「………あら、アンジェもお姉様に会いに?」
「ナイアお姉様。おはようございます。」
(………昨日の事聞きましたわ、貴女の事だからまた会いに来ると思って、会えるようにわたくしも協力しますわね。)
コソッとアンジェリークに耳打ちするナイア。
時折、ナイアは何を考えているか分からない事があるのだが、協力してくれるなら利用しようと思うアンジェリーク。
(ありがとうございます、ナイアお姉様。)
「………失礼します。やはりアンジェリーク様にお会いしにくいみたいで………。」
「リュイ、わたくしもお姉様に会いに来たのだけど?わたくしも駄目かしら?誤解を溶きに来たのよ?お姉様はアンジェに誤解をしてらっしゃるようだから。」
「………ナイア様迄………お待ち下さい。」
再度、奥に入るリュイ。
「………お姉様?何を……。」
「……わたくし、お姉様の我儘な振る舞いに少々苛立っておりますのよ。」
「ナイア様、アンジェリーク様、お入り下さい。」
「ありがとう、リュイ。さ、アンジェ、入りましょう。」
奥に入ると、ベッドで少々窶れたセシリアの姿。
「セシリアお姉様!お食事出来てますの?」
「…………アンジェ、心配はご無用ですわ、お姉様に……いつもの我儘ですもの。」
「ナイアお姉様、我儘、て………。」
「……ナイア、またわたくしを詰りに来たの?心配はしてくれないの?」
「………心配はしておりますわ、お姉様にもアンジェにも……アンジェがかわいそうだと仰るその口は、嘲笑う口ですもの。」
セシリアの顔色は青ざめていく。
「………昔からお姉様はそう。ご自分が無い物を例えご自分が劣っていようとも、馬鹿にされるそのご性格。改めませんから、キルスト様に好かれないんですのよ?アンジェが子供の頃から、魔力が強い事を疎ましく思ってらっしゃいながら、優しいお言葉を掛けて、裏腹な態度をずっと見てきましたわ。そして今回の騒ぎ……。アンジェがキルスト様との婚姻の話を聞いてのヒステリック。嫉妬もここまで来ると見苦しいですわ。」
「…………な、何が貴女に分かるの!?貴女は好きな方と結婚も決まって、優位に立ってるつもり?わたくしより魔力が弱いのに!」
「弱いですが、何か?わたくしはそんなわたくしが良い、と言って頂ける方に嫁ぐ幸せがあります。弱いのは関係ありません。お姉様に感謝すべき事はコレですわね。醜い姿を側で見てきたので、良き反面教師となりましたわ、お姉様は。」
「…………ナ、ナイアお姉様!!」
「アンジェは黙っていて頂戴。………お姉様は誰に対しても優位に居たいのです。わたくしの学友のお姉様がキルスト様に片恋した子が居りましたわ。その方はキルスト様と話をするだけで、お姉様から意地悪された、と泣きつかれた事がありましてよ?ずっと心に留めるつもりではありましたが、流石にお父様の前で暴れるという醜態をさらしては、黙っていられませんわ。お姉様にはお姉様だけを愛してくれる方がお似合いです。」
「………ナイア……………。」
セシリアはとても悔しそうな顔を見せる。
アンジェリークには今迄見せた事の無い顔をする。
「アンジェの前で言いたくありませんでしたわ、わたくし。ですが、この国の婚姻で大切な事は魔力の波長が合うか……。お姉様はキルスト様とは合わないとお父様から言われてるんですから、諦めなさいませ。さぁ、お話は終わりました。アンジェ、行きましょう。」
ナイアは言いたい事だけ言って、部屋を出て行く。
アンジェリークは残って話そうとしたが、セシリアと穏やかに話せるような状態ではなかった為、一礼してナイアを追ったのだった。
3
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。
airria
恋愛
「私、アマンド様と愛し合っているの。レイリア、本当にごめんなさい。罪深いことだとわかってる。でも、レイリアは彼を愛していないでしょう?どうかお願い。婚約者の座を私に譲ってほしいの」
親友のメイベルから涙ながらにそう告げられて、私が一番最初に思ったのは、「ああ、やっぱり」。
婚約者のアマンド様とは、ここ1年ほど余所余所しい関係が続いていたから。
2人が想い合っているのなら、お邪魔虫になんてなりたくない。
心が別の人にあるのなら、結婚なんてしたくない。
そんなわけで、穏便に婚約解消してもらうために、我儘になってナチュラルに嫌われようと思います!
でも本当は…
これは、彼の仕事の邪魔にならないように、自分を抑えてきたヒロインが、我儘に振る舞ううちに溺愛されてしまう物語。
【R18】王太子は婚約者に婚約破棄を言いたい。
平山美久
恋愛
この国の王太子である
グレンリードはここ最近
婚約者であるリリアンヌ・マドリーノとの婚約を破棄したいと考えている。
それは最近仲良くなったミシェルに
対してひどい仕打ちばかりをし始めたから。
前々からリリアンヌに嫌われていたと思っていたし
もうそろそろいいかな?いいよね?
……あれ、リリアンヌがなんか可愛くない?
突然ですが、偽装溺愛婚はじめました
紺乃 藍
恋愛
結婚式当日、花嫁である柏木七海(かしわぎななみ)をバージンロードの先で待ち受けていたのは『見知らぬ女性の挙式乱入』と『花婿の逃亡』という衝撃的な展開だった。
チャペルに一人置き去りにされみじめな思いで立ち尽くしていると、参列者の中から一人の男性が駆け寄ってきて、七海の手を取る。
「君が結婚すると聞いて諦めていた。でも破談になるなら、代わりに俺と結婚してほしい」
そう言って突然求婚してきたのは、七海が日々社長秘書として付き従っている上司・支倉将斗(はせくらまさと)だった。
最初は拒否する七海だったが、会社の外聞と父の体裁を盾に押し切られ、結局は期限付きの〝偽装溺愛婚〟に応じることに。
しかし長年ビジネスパートナーとして苦楽を共にしてきた二人は、アッチもコッチも偽装とは思えないほどに相性抜群で…!?
◇ R18表現のあるお話には「◆」マークがついています
◇ 設定はすべてフィクションです。実際の人物・企業・団体には一切関係ございません
◇ エブリスタ・ムーンライトノベルズにも掲載しています
変態御曹司の秘密の実験
綾月百花
恋愛
10社落ちてやっと入社できた会社で配属された部署は、大人の玩具を開発する研究所の社長専属秘書だった。社長専属秘書の仕事は、人体実験!処女なのにあれこれ実験されて、仕事を辞めたいけど、自宅は火事になり、住む場所もなくなり、家族親類のいない亜梨子は、変態社長と同居?同棲?することになった。好きだとか愛してるとか囁いてくる社長に、心は傾けど意地悪な実験で処女なのに快感に翻弄されて。ああ、もう辞めたい!やっと抱いてくれると思ったら、お尻に入れられて欲しい場所にくれない。ALICEプロジェクトという実験は一体なんでしょう?エッチで悶々しちゃう亜梨子のシンデレラストーリーです。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる