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暴露

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 翌朝、アンジェリークはまたセシリアに会いに行く。
 落ち着いたかどうかは分からない。

「セシリアお姉様にお会い出来る?」

 リュイに部屋の入り口で聞くアンジェリーク。

「アンジェリーク様、昨日は失礼な事を申し上げてしまい、申し訳ありませんでした。……セシリア様に確認してまいります。」

 一礼して、部屋の奥に入るリュイ。

「………落ち着いてくれてるといいですね、アンジェ様。」
「………あら、アンジェもお姉様に会いに?」
「ナイアお姉様。おはようございます。」
(………昨日の事聞きましたわ、貴女の事だからまた会いに来ると思って、会えるようにわたくしも協力しますわね。)

 コソッとアンジェリークに耳打ちするナイア。
 時折、ナイアは何を考えているか分からない事があるのだが、協力してくれるなら利用しようと思うアンジェリーク。

(ありがとうございます、ナイアお姉様。)
「………失礼します。やはりアンジェリーク様にお会いしにくいみたいで………。」
「リュイ、わたくしもお姉様に会いに来たのだけど?わたくしも駄目かしら?誤解を溶きに来たのよ?お姉様はアンジェに誤解をしてらっしゃるようだから。」
「………ナイア様迄………お待ち下さい。」

 再度、奥に入るリュイ。

「………お姉様?何を……。」
「……わたくし、お姉様の我儘な振る舞いに少々苛立っておりますのよ。」
「ナイア様、アンジェリーク様、お入り下さい。」
「ありがとう、リュイ。さ、アンジェ、入りましょう。」

 奥に入ると、ベッドで少々窶れたセシリアの姿。

「セシリアお姉様!お食事出来てますの?」
「…………アンジェ、心配はご無用ですわ、お姉様に……いつもの我儘ですもの。」
「ナイアお姉様、我儘、て………。」
「……ナイア、またわたくしを詰りに来たの?心配はしてくれないの?」
「………心配はしておりますわ、お姉様にもアンジェにも……アンジェがかわいそうだと仰るその口は、嘲笑う口ですもの。」

 セシリアの顔色は青ざめていく。

「………昔からお姉様はそう。ご自分が無い物を例えご自分が劣っていようとも、馬鹿にされるそのご性格。改めませんから、キルスト様に好かれないんですのよ?アンジェが子供の頃から、魔力が強い事を疎ましく思ってらっしゃいながら、優しいお言葉を掛けて、裏腹な態度をずっと見てきましたわ。そして今回の騒ぎ……。アンジェがキルスト様との婚姻の話を聞いてのヒステリック。嫉妬もここまで来ると見苦しいですわ。」
「…………な、何が貴女に分かるの!?貴女は好きな方と結婚も決まって、優位に立ってるつもり?わたくしより魔力が弱いのに!」
「弱いですが、何か?わたくしはそんなわたくしが良い、と言って頂ける方に嫁ぐ幸せがあります。弱いのは関係ありません。お姉様に感謝すべき事はコレですわね。醜い姿を側で見てきたので、良き反面教師となりましたわ、お姉様は。」
「…………ナ、ナイアお姉様!!」
「アンジェは黙っていて頂戴。………お姉様は誰に対しても優位に居たいのです。わたくしの学友のお姉様がキルスト様に片恋した子が居りましたわ。その方はキルスト様と話をするだけで、お姉様から意地悪された、と泣きつかれた事がありましてよ?ずっと心に留めるつもりではありましたが、流石にお父様の前で暴れるという醜態をさらしては、黙っていられませんわ。お姉様にはお姉様だけを愛してくれる方がお似合いです。」
「………ナイア……………。」

 セシリアはとても悔しそうな顔を見せる。
 アンジェリークには今迄見せた事の無い顔をする。

「アンジェの前で言いたくありませんでしたわ、わたくし。ですが、この国の婚姻で大切な事は魔力の波長が合うか……。お姉様はキルスト様とは合わないとお父様から言われてるんですから、諦めなさいませ。さぁ、お話は終わりました。アンジェ、行きましょう。」

 ナイアは言いたい事だけ言って、部屋を出て行く。
 アンジェリークは残って話そうとしたが、セシリアと穏やかに話せるような状態ではなかった為、一礼してナイアを追ったのだった。
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