上 下
14 / 37

塔へ

しおりを挟む

 約束したつもりは無いが、アンジェリークは塔に来るというキルストを待つ。
 いつもこの塔で自慰をしている為、癖でドレスを脱ごうとしたアンジェリーク。
 しかし、脱ぐのを留めた。
 窓の外からキルストが行為を見たと言うが、何処に居たのかも気になった。
 今も姿が見えるかと、思い見下ろしているアンジェリーク。

「………来てくれたんだ、アンジェ。」
「!?………キルスト様。」
「何だ、今日はまだ慰めてないの?それとも終わった後?」
「………今日は慰めの為に来たわけではありません。わたくしの考えを聞いて頂きたくて。」
「………俺との婚姻は嫌だとか?」

 キルストは窓際にある椅子に座るアンジェリークと少し離れたベッドの上に座った。
 塔の部屋は、ベッドとサイドテーブルと椅子と小さなクローゼットしかない。
 皇女が使う部屋にしては調度品も質素。
 幽閉されているような気にもしてしまう部屋だ。
 アンジェリークが自慰するだけの部屋で、長居する為の部屋ではないからだ。

「…………結婚が嫌だ、とかではないのです。お父様が最良の夫を探す、とおっしゃいました。魔力の大きさからキルスト様は最良なんだと思います。でも…………わたくしの気持ちとキルスト様のお気持ちが分かりません。そして、セシリアお姉様のお気持ちを考えると、素直にこの婚姻を受け入れる事が出来なくて………。」
「………波長が合ったのは認めたんだ。以前会った時と顔色がいいし。」
「………そう思います。」
「…………アンジェ。」

 キルストが肘を自分の膝の上に置き、手を顔の前で手を組んでいる。
 セシリアが見たら、その姿にも頬を赤らめるであろう凛々しく見える。

「………はい。」
「俺の事を見てもドキドキしない?」
「…………しないかも。」
「………俺はアンジェを見てるとドキドキするよ。キスをし、アンジェの胸に顔を埋め、蜜を吸い、アンジェの中に入りたい。…………この話を聞いた時嬉しかった。幼い時に見た可愛らしい女の子が、年頃になった姿はどうなっているんだろう、と。会ったら会ったで欲しくなった。」

 熱を帯びた眼でアンジェリークを見つめるキルスト。

「セシリアの気持ちは知っていたよ。でも彼女の気持ちを受け入れたとしても、受け入れなくても傷付けるだろう……。彼女とは魔力の波長が合わない。結婚しても、俺の魔力が膨張したら、セシリアだけで賄えないんだ。………恐らく、他の女性を求めてしまう。」
(………それはお父様とお母様や側室のお二方のような関係……。)
「………陛下の様に寛大な正妃を娶られるなら、考えなかった訳ではないが、セシリアには無理だ。………俺が他の女性と話している場面を見ただけで、嫉妬するようでは………。」
「………お母様だって、嫉妬しているとは思います。していない、と言い切れません。でも………お父様は3人の妻それぞれ愛を囁きます。わたくし達兄姉弟にも……真似してほしいとは言いませんし、セシリアお姉様にはその様な立場な夫と結婚して頂きたくないのです。わたくしに愛を囁くのでしたら、先ずキルスト様に向けられている、お姉様のお気持ちに区切りを付けて頂きたいですわ。」

 むしろ、私に告るなら、さっさとアンタの事を好きな女を振ってこ~い!!

 と言っているアンジェリーク。
 セシリアから告白された訳でもないキルストも、どうセシリアと接していいか戸惑っているのも事実。

「…………分かった、じゃあ俺がセシリアから告白してもらえるような状況を作って振れば良いんだな?…………そうしたら、前向きに考えてくれる?アンジェ。」

 ベッドから立ち、アンジェリークの側に来るキルスト。

「…………あ、あの……来ないで下さい。」
「ハグも駄目?」
「…………だ、駄目です………。」
「何で?…………ドキドキする?」
「………お、思い出すからっ!」

 顔を赤らめ、眼を逸らすアンジェリークの顔を自分の方に向かせるキルスト。

「………キスしたいが、しないよ。嫌がられたら落ち込むし。」
「じゃ、じゃあ何故!?」
「今、言ったじゃないか、俺に取り巻く女達を振れば良いんだな?と」
「………と、取り巻く女達、て何人もいらっしゃるんですか?」
「告白して来ないセシリア含めて留学先にしつこい子が何十人かは居るかな……。相手にしてないけど。」
「お姉様をそんな下品な女性達と一緒にしないで下さい!!………お姉様は美しく、気品のある方なんですから!」
「…………で?振ってこれば、前向きに考えてくれる?くれない?返事今しないなら、キスするよ?」

 強迫の様な選択の内容。
 縁を切れば、婚姻をする?と聞いているようなものだった。
 
「わ、分かりました!前向きに考えますから!」
「………よし、じゃあ、待っていてくれ。アンジェに信用してもらえるようにしてくるし、アンジェが俺を好きになってくれる迄、俺からは君に手を出さない。」
「………本当ですか?」

 アンジェリークは手を出さない、と言われホッとした表情。
 しかし、それが気に食わないキルスト。

「俺も魔力のせいで、性欲を我慢するから、君も頑張って、我慢して魔力をセーブしてくれよ?コントロールが出来ないから、ダダ漏れの性欲を振り回してるんだ、君の為に今日触れ合っておこうと思ったが、それを避けるなら仕方ないよね?」
「…………は?な、何故そんな事になるのです?…………どれだけ辛いか……。」
「………じゃあ、キスだけしとく?」
「………結構です!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

【R18】聖女のお役目【完結済】

ワシ蔵
恋愛
平凡なOLの加賀美紗香は、ある日入浴中に、突然異世界へ転移してしまう。 その国には、聖女が騎士たちに祝福を与えるという伝説があった。 紗香は、その聖女として召喚されたのだと言う。 祭壇に捧げられた聖女は、今日も騎士達に祝福を与える。 ※性描写有りは★マークです。 ※肉体的に複数と触れ合うため「逆ハーレム」タグをつけていますが、精神的にはほとんど1対1です。

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!

臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。 そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。 ※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています ※表紙はニジジャーニーで生成しました

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

【R-18】逃げた転生ヒロインは辺境伯に溺愛される

吉川一巳
恋愛
気が付いたら男性向けエロゲ『王宮淫虐物語~鬼畜王子の後宮ハーレム~』のヒロインに転生していた。このままでは山賊に輪姦された後に、主人公のハーレム皇太子の寵姫にされてしまう。自分に散々な未来が待っていることを知った男爵令嬢レスリーは、どうにかシナリオから逃げ出すことに成功する。しかし、逃げ出した先で次期辺境伯のお兄さんに捕まってしまい……、というお話。ヒーローは白い結婚ですがお話の中で一度別の女性と結婚しますのでご注意下さい。

完結 チート悪女に転生したはずが絶倫XL騎士は私に夢中~自分が書いた小説に転生したのに独占されて溺愛に突入~

シェルビビ
恋愛
 男の人と付き合ったことがない私は自分の書いた18禁どすけべ小説の悪女イリナ・ペシャルティに転生した。8歳の頃に記憶を思い出して、小説世界に転生したチート悪女のはずが、ゴリラの神に愛されて前世と同じこいつおもしれえ女枠。私は誰よりも美人で可愛かったはずなのに皆から面白れぇ女扱いされている。  10年間のセックス自粛期間を終え18歳の時、初めて隊長メイベルに出会って何だかんだでセックスする。これからズッコンバッコンするはずが、メイベルにばっかり抱かれている。  一方メイベルは事情があるみたいだがイレナに夢中。  自分の小説世界なのにメイベルの婚約者のトリーチェは訳がありそうで。

処理中です...