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塔へ
しおりを挟む約束したつもりは無いが、アンジェリークは塔に来るというキルストを待つ。
いつもこの塔で自慰をしている為、癖でドレスを脱ごうとしたアンジェリーク。
しかし、脱ぐのを留めた。
窓の外からキルストが行為を見たと言うが、何処に居たのかも気になった。
今も姿が見えるかと、思い見下ろしているアンジェリーク。
「………来てくれたんだ、アンジェ。」
「!?………キルスト様。」
「何だ、今日はまだ慰めてないの?それとも終わった後?」
「………今日は慰めの為に来たわけではありません。わたくしの考えを聞いて頂きたくて。」
「………俺との婚姻は嫌だとか?」
キルストは窓際にある椅子に座るアンジェリークと少し離れたベッドの上に座った。
塔の部屋は、ベッドとサイドテーブルと椅子と小さなクローゼットしかない。
皇女が使う部屋にしては調度品も質素。
幽閉されているような気にもしてしまう部屋だ。
アンジェリークが自慰するだけの部屋で、長居する為の部屋ではないからだ。
「…………結婚が嫌だ、とかではないのです。お父様が最良の夫を探す、とおっしゃいました。魔力の大きさからキルスト様は最良なんだと思います。でも…………わたくしの気持ちとキルスト様のお気持ちが分かりません。そして、セシリアお姉様のお気持ちを考えると、素直にこの婚姻を受け入れる事が出来なくて………。」
「………波長が合ったのは認めたんだ。以前会った時と顔色がいいし。」
「………そう思います。」
「…………アンジェ。」
キルストが肘を自分の膝の上に置き、手を顔の前で手を組んでいる。
セシリアが見たら、その姿にも頬を赤らめるであろう凛々しく見える。
「………はい。」
「俺の事を見てもドキドキしない?」
「…………しないかも。」
「………俺はアンジェを見てるとドキドキするよ。キスをし、アンジェの胸に顔を埋め、蜜を吸い、アンジェの中に入りたい。…………この話を聞いた時嬉しかった。幼い時に見た可愛らしい女の子が、年頃になった姿はどうなっているんだろう、と。会ったら会ったで欲しくなった。」
熱を帯びた眼でアンジェリークを見つめるキルスト。
「セシリアの気持ちは知っていたよ。でも彼女の気持ちを受け入れたとしても、受け入れなくても傷付けるだろう……。彼女とは魔力の波長が合わない。結婚しても、俺の魔力が膨張したら、セシリアだけで賄えないんだ。………恐らく、他の女性を求めてしまう。」
(………それはお父様とお母様や側室のお二方のような関係……。)
「………陛下の様に寛大な正妃を娶られるなら、考えなかった訳ではないが、セシリアには無理だ。………俺が他の女性と話している場面を見ただけで、嫉妬するようでは………。」
「………お母様だって、嫉妬しているとは思います。していない、と言い切れません。でも………お父様は3人の妻それぞれ愛を囁きます。わたくし達兄姉弟にも……真似してほしいとは言いませんし、セシリアお姉様にはその様な立場な夫と結婚して頂きたくないのです。わたくしに愛を囁くのでしたら、先ずキルスト様に向けられている、お姉様のお気持ちに区切りを付けて頂きたいですわ。」
むしろ、私に告るなら、さっさとアンタの事を好きな女を振ってこ~い!!
と言っているアンジェリーク。
セシリアから告白された訳でもないキルストも、どうセシリアと接していいか戸惑っているのも事実。
「…………分かった、じゃあ俺がセシリアから告白してもらえるような状況を作って振れば良いんだな?…………そうしたら、前向きに考えてくれる?アンジェ。」
ベッドから立ち、アンジェリークの側に来るキルスト。
「…………あ、あの……来ないで下さい。」
「ハグも駄目?」
「…………だ、駄目です………。」
「何で?…………ドキドキする?」
「………お、思い出すからっ!」
顔を赤らめ、眼を逸らすアンジェリークの顔を自分の方に向かせるキルスト。
「………キスしたいが、しないよ。嫌がられたら落ち込むし。」
「じゃ、じゃあ何故!?」
「今、言ったじゃないか、俺に取り巻く女達を振れば良いんだな?と」
「………と、取り巻く女達、て何人もいらっしゃるんですか?」
「告白して来ないセシリア含めて留学先にしつこい子が何十人かは居るかな……。相手にしてないけど。」
「お姉様をそんな下品な女性達と一緒にしないで下さい!!………お姉様は美しく、気品のある方なんですから!」
「…………で?振ってこれば、前向きに考えてくれる?くれない?返事今しないなら、キスするよ?」
強迫の様な選択の内容。
縁を切れば、婚姻をする?と聞いているようなものだった。
「わ、分かりました!前向きに考えますから!」
「………よし、じゃあ、待っていてくれ。アンジェに信用してもらえるようにしてくるし、アンジェが俺を好きになってくれる迄、俺からは君に手を出さない。」
「………本当ですか?」
アンジェリークは手を出さない、と言われホッとした表情。
しかし、それが気に食わないキルスト。
「俺も魔力のせいで、性欲を我慢するから、君も頑張って、我慢して魔力をセーブしてくれよ?コントロールが出来ないから、ダダ漏れの性欲を振り回してるんだ、君の為に今日触れ合っておこうと思ったが、それを避けるなら仕方ないよね?」
「…………は?な、何故そんな事になるのです?…………どれだけ辛いか……。」
「………じゃあ、キスだけしとく?」
「………結構です!!」
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