上 下
58 / 64

タクシー

しおりを挟む

 


 業務開始前のミーティングで、急な休みをまた取る事に社員に謝罪する翡翠。

「ごめんね、母の我儘で急に休み取って。」
「…………社長は最近大変でしたから、少し休んで下さい。」
「そうですよ、3日で休めるか分かりませんが、仕事忘れて、ね。」
「さ、そろそろ行きますよ~。」

 紫が荷物を持って、店舗に降りてきた。
 50歳を超えても、歳を感じさせない若々しい紫。

「………お母さん、それ私の服……。」
「いいじゃない、サイズ合うし、遠出するから、動きやすい服じゃなきゃ。」

 シフォンのブラウスにワイドパンツの姿の、長い髪をまとめた紫。
 似たような服で翡翠も降りて来ていたので、双子コーデのようだった。

(社長のお母さん、若っ!)
(服のサイズ一緒、て……。)

 どよめきが沸いたので、挨拶もそこそこにし、 荷物を持ち店を出ようとしたら、見覚えのあるシルエット。

「やぁ、翡翠。」

 ノエルが日本に来ていた。

「…………ノエル……。」
「ノエル君ごめんね~。」
「おは~。」
「紫さん、荷物重いでしょ、駐車場迄だけど持ちますよ。」

 と、紫と翡翠から荷物を受け取るノエル。
 駐車場にはノエルが日本で買った車が残されている。
 マンションには駐車場が無いから置かせてくれ、と言われて置いていた、2ドアのスポーツタイプの車。
 しかし、その車では4人は乗れない。

(………車に乗れないよね?)

 すると、その車の横に4ドアタイプの車をレンタルしたのだろうか、日本で乗っていた車とは違う車が待ち構えていた。

「荷物入れますね、これだけ?」

 軽々と紫と翡翠から受取、トランクに入れる。

「黄、はいこれ。約束した鍵。」
「やったぁ!!ホントにくれるんだ、サンキュ、ノエルさん。」
「どういう事?その鍵、ノエルの車のじゃ?」
「………もう、日本で暫く仕事はないだろうから、売ろうと思ったら、黄が欲しい、て言ったからね。じゃ、譲ってあげるよ、て話になってたんだよ。俺、イギリスにも車あるし、乗らないと勿体無いだろ?」
「これ、乗りたかったんだよねぇ。」

 黄龍は、ノエルから譲られた車を撫でている。

「その車の保険入ってからじゃないと、乗っちゃ駄目だからな!あと、免許も手続きしとけよ!」
「分ってるよ、俺もうマフィアじゃないし……。」
「………さぁ、行こうか……どうぞ、お嬢さん。」

 助手席のドアを明け翡翠をエスコートするあたりは、今迄とは変わらないものの、どこかぎこちない。
 後部座席には、ノエルが助手席のドアを開けた時点で、さっさと紫と黄龍が乗ってしまった。
 それにより翡翠は助手席に座らざる得ないのだ。

「奥多摩ですよね?」
「そうよ。奥多摩で黄にプレゼントあるから。」
「プレゼント?」
「……………。」

 どうして、母と弟はノエルと連絡取っていたのか……。

「連絡しあってたの?」
「ノエル君に頼んでおいた事があったのよ。まぁ出来なかったら諦めてたんだけど、やってくれたから。」
「……………なかなか大変でしたけどね。」

 ノエルは苦笑いしてる。



 差し障りの無い話をしながら、途中のサービスエリアに寄った4人。

(…………この時間なら行けるかも。電話電話。)
「もしもし………。」 

 翡翠は紫を気にしながらどこかに電話を掛ける。
 それを見逃すノエルではなかった。

「ノエル、私からも一つ頼みが……。」
「…………長野?」
「………いい?」
「勿論。そのつもりで俺から誘った話だし、これ。」
「……………?どういう事?」
「まだ内緒。」

 誰が誰かに策略をしているのは明らかで、それがまた複雑さを増していた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

高級娼婦×騎士

歌龍吟伶
恋愛
娼婦と騎士の、体から始まるお話。 全3話の短編です。 全話に性的な表現、性描写あり。 他所で知人限定公開していましたが、サービス終了との事でこちらに移しました。

処理中です...