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虫刺され

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 NEO EARTH-店舗
 開店前の出勤者はミーティングに参加する事になっている。

(今日、社長いつも以上にキチっとしてるなぁ…。)
(珍しい、いつも髪だけはまとめてるのに下ろしてるねぇ。)

 ポソポソと話すスタッフ達。

 (…………………ノエルのバカ。)

 普段の翡翠の仕事で着るスーツは、清楚感のあるフェミニンなスーツで、胸元、耳、指輪は自分の作ったジュエリーを身に着けているが、今日は無理だった。
 カッチリとしたパンツスタイルなキャリア系スーツに首にはスカーフを結んで、ネックレスは付けていない。
 タイトスカートも履けないぐらい、ふくろはぎにもキスマークを付け、七部袖のジャケットも、手首にもキスマークがあるので隠さなければならないのだ。

「……………以上です。社長から何かありますか?」
「……………。」
「………社長?」
「!!あ、何?」
「ミーティング、終わりましたが?」
「あ、ごめんなさい、大丈夫です。今日も皆さん、お客様に失礼のないよう、宜しくお願いします。」
「お願いします。」

 解散した後も、

(おかしい、絶対おかしい。)

 と、ひそひそ話。

「社長、今日どうかされました?」

 翡翠は秘書から指摘される。

「………何で?何も無いけど?……ただ、ちょっと寝不足気味なだけ。」
「服装、いつもと雰囲気違いますよね?」
(やっぱり突っ込んできた!)
「リクルートスーツのようなキチっとして、普段スカーフ等されるより、ご自分の作られたチョーカーやネックレスをされるのに。」
「虫に、そう虫に刺されちゃって!」
「……………そうですか、季節外れの虫が居たんですね。…………へぇ、そうですか。」
(……………バレてる。)
「仕事の支障のないように程々にしてくださいね、社長。」

 クスクスと笑われながら、社長室に戻ってきた翡翠。
 社長としての当日の仕事の確認で秘書と話す。

「うん、分かった。2時~3時は空いたのね、今日。」
「打ち合わせがキャンセル入りましたしね。」
「もし、この時間帯に入らないようなら、店頭に立つかな。」
「………それはやめといた方がよろしいかと。[虫刺され]ですし。」
「………篭ってろ、て?」
「今日の姿は社長のイメージでは無いですから。」
「……………やっぱり?」
「……社長、今日接待あるのお忘れでした?ファンデで隠せるなら隠された方が…。」
「それは大丈夫。だって、今日は○○の副社長との会食よ?贈られたドレスに合わせたジュエリーまで用意してあるわ。隠せるよう努力はします。」
(…………忘れてました。実は………。)

 手を広げて、大丈夫アピールしながら内心焦っている。

(あのチョーカーと胸元はファンデと…………あぁ!!……あの副社長厳しいからなぁ、着こなし下手だと。)
 「社長室に篭ってます。」
「それが良いと思います。会食は私も同席で良いんですか?パートナーとしては男性のがよろしいんじゃないですか?あの方、女性好きが有名ですし。[虫刺され]さんとか……。」
「……………いや、それはちょっと……。」
 (そんな事したら仕事にならない、て。あのドレス見たら発狂しそうだし……。着てくれ、て言われて贈られたんだよなぁ……。下心丸出しで。)
「さて、仕事しますか。」
「何かありましたら、呼び出し下さい。」
「はい。そうします。」

 事務処理に勤しむ翡翠は久々に事務処理だけは捗っていた。
 誰も来る事もなく、店舗も何事もなく落ち着いている。

 (久々だなぁ、落ち着いて仕事出来てるの。)

 ♫♫♫

「はい、社長室。」
【広告代理店の酒井さんからお電話入ってます。】
「繋げて下さい。……………酒井さん、お世話になっております。」
【翡翠さん、昨日はありがとうございました。早速あの後プロット書き直しまして、近々確認して頂けないかな、と。】
「今日は社に居りますが、5時以降は予定があるので、その前なら確認可能ですよ。」
【本当ですか?良かった。再来週には撮影も入りたいので、OK出たら直ぐにスタジオ抑えます。因みに昨日のモデルさんのスケジュールを聞いておきたいんですが、大丈夫でしょうか?彼等が難しいなら、モデル用意こちらでも出来ますけど。】
「あの、本当に彼等をモデルに?本職がモデルでないので、ご迷惑掛けませんかね?」
【本職じゃないんですか?でも使いたいなぁ……。どうしても、というなら仕方がないですが、聞いていただけますか?スケジュール。】
「分かりました、聞いてみますね。」
【3時頃なら、僕伺えますので、その時間迄お返事もらえますかね?】
「えぇ、聞いてみます。時間も大丈夫なので、その時間にお待ちしてます。」
【では、宜しくお願いします。】

 電話を切り、内線で小林に連絡した後、スマートフォンを取り出しノエルに連絡たものの、留守番電話。

(仕事中かな、留守電に残しとこ。)
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