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プロローグ
しおりを挟むイギリス郊外-午前3時
バンバンバン!
『どっちに行った!!捕まえるんだ!!』
ガサッ!
『あっちだ!!』
『そこの、茂みに隠れたぞ!』
『隠れても無駄だ!盗んだ物を返せ!』
『………………』
『出て来ないなら行くまでだ』
ガザガザ……。
!!!
『居ない!!!』
『野良猫と間違えてんじゃないのか!』
『間違えるもんか!人影だったんだからな!』
『どうするんだ!ボスに逃げられたと報告したら、俺達殺されるぞ!』
ホーホー、ホーホー……。
静かな田舎の片隅の豪邸で、騒動が起き始めた頃、1台の大型バイクが走り去って行ったのを見ていたのは、1羽の梟のみだった。
バイクに乗った人物が、その豪邸から数キロ離れた、教会の中に人気を気にしながら入る。
『ボス、任務完了です。間違いなく[真紅の涙]ですよ』
『ご苦労さん』
ボスと呼ばれた初老の男と、傍らに控えるスーツ姿の若い男。
『俺は、この手の鑑定は分からんが、恐らく本物だろう。デニスの情報が間違えてないならな?』
後に控えていたスーツ姿の男に向けて、ほくそ笑む初老の男。
デニスは、苦笑いしながら反論する。
『俺の情報では、偽物を用意する時間も無かった筈ですよ』
[真紅の涙]と言われたルビーのネックレス。
ボスに手渡した、バイクでやって来た男は、暑苦しかったのか、被っていたヘルメットと、着ていたジャンパーのファスナーを下ろす。
美しい仕草をするそれは、ヘルメットを脱いだ姿も美しいなりだった。
金髪碧眼、長身の青年。
『ボス、早く場所を変えましょう。本物だとは思いますが、一応鑑定しなければなりませんし……良かったですよ、カットもされてないままで。でなきゃ足取り掴むのに苦労しますからね』
『そうだな………ん、本部からだ……私だ………うむ、………………本当か、それは!分かった、本部に戻ってから、ノエルに行かせる。物は取り戻したから、これから直ぐに戻る。』
『どうしました?』
金髪碧眼のノエルが、電話で自分の名前が出たのが気になった様子。
『ノエル、準備出来次第、デニスと日本へ行ってくれ』
『…………………え?に、日本に?』
『日本!やった!行きたかったんですよ、日本!』
喜ぶデニスと、気が重いような難色を示すノエル。
『ボス、俺は………まだ……。』
『分かってるが、この件に関してはお前が一番適任だ。半年前、ドバイの富豪から[蒼の洞窟]と名付けられたブルーダイヤ、お前が担当だっただろ。それが今日本の東京の宝石商の手元にある、という情報が入った。だからお前に頼みたい』
『…………分かりました。行きますよ、日本に…。』
渋々な顔をしながら、了承するノエルは、一人になりたくなったのか、そそくさと2人から離れていった。
『……まだ無理だったかな、日本は………』
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『………父親がな、日本で殺されたんだよ、任務中に……。あいつの父親が、日本で刑事やってた時さ』
『え?…………あいつ、日本人なんですか!?』
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それを見た、ボスと呼ばれた男は、やっぱり、と口を開く。
『やっぱり言うんじゃなかった………あいつは日本人には見えない外見だからな……クォーターなんだよ、父親が日本人とイギリス人のハーフでな。父親が亡くなる前迄は日本で生活してたから、日本語もまだ話せる筈だ』
その頃のノエルは教会の外で空を見上げていた。
『……………日本…………か。元気だろうか……俺と同じ名前の女の子……』
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