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 拘束されているのに、騒ぐ村長家族。
 村長の妻は亡くなっていて、男手1つでヒューイとニナを育てていて、甘やかしていたのだと、村人全員が今日程思った事はない。

「放しなさいよ!」
「放せぇ!俺は偉いんだぞ!愚者じゃない!」
「愚者程吠えるものだぞ?」
「あんなのは化物じゃないか!竜から人間に化けた化物だ!」
「グリード様、愚弄罪でもコイツ付けますか?」
「そうだな、あと王太子の婚約者を拉致した罪に乗せてやれ」
「わ、私は違うわよ!化物なんて思ってないんだから!素敵な王太子様!リアナなんかより私の方が美人よ!」
「ヒューイ!ニナ!もう黙れ!黙るのだ!恥を上乗せしおって!」
「俺は強いんだ!そ、そうだ!俺を騎士にしろ!」
「グリード様の竜の姿に失禁した奴が何言ってる」

 ハーヴェイのこの一言で、たちまち爆笑が起きた。
 ヒューイだけなのだ。竜に驚き、グリードに圧倒され失禁したのは。
 ドラヴァールの者なら知っている事で、竜が国を作ったという伝説があるのだ。
 竜が人間の女に恋をし、魔力で人間に変化し、国を治めている。
 それからも、その血脈の第一子は、竜の血を濃く受け継ぎ、唯一竜に変化が出来る。
 変化について、皆が皆知る事は無かったようだが、竜の姿を見れば王族の1人が来たとは思われていただろう。

「あ、あの!」
「何だ?君は」
「俺…………あ、いや……自分、ロブと言います!そんな臆病者のヒューイなんかより、俺……いや……自分の方が、役に立てます!騎士に入れさせて下さいませんか!」
「ロブ!お前何を言い出すんだ!王都の騎士は精鋭中の精鋭だぞ!村のしがない自警団のお前に何が出来る!」

 ロブが騎士団に憧れているのは、リアナもリサも知っていて、村人達もロブの強さには一目置いているが、騎士団との力の差があるのでは、と心配の声が出る。

「リリ…………彼は強いだろ?」
「強いは強いと思うけど………私、騎士様達の強さはよく知らないし………」
「…………他にこの中で、騎士団に入団したい者は居るか!」

 グリードはロブの強さを知っているかの様子。
 リアナを通して、魔力の強さを感知したのかもしれない。
 すると、10人程の腕に覚えがある男達が名乗りを挙げた。
 そして、止めておけば良いのにヒューイも騒いでいる。

「俺もだ!俺も強い!」
「ヒューイは止めておけよ!」
「おもしれぇ!コテンパにやっつけて貰えよ、ヒューイ!」
「如何します?グリード様」
「……………良いだろう………ハーヴェイ、簡単だろ?」
「……………また、そんな簡単に言いますが、知りませんよ?死者が出ても」
「手加減してやれよ」
「10人………あ、アイツも入れます?失禁野郎も」
「入れてやれ、面白いから」
「はいはい…………じゃあ、場所広げてくれ……」

 ハーヴェイが、広い所に1人立ち、男達もハーヴェイの前に並ぶ。

「此処で騎士団のテストを?」
「精鋭は、いつも喉から手が出る程欲しくてね………あの中でなれるとしたら、1人か2人だ」

 リアナは如何やって行うのか見ていたが、リサは祈る様にロブを見つめていた。

「あの男は、騎士団に入れたら、彼女は如何するのだろうな」
「…………あ……そうよね……」
「まぁ、見てみよう………ハーヴェイ!通常の試験と同等だ!」
「え?本気で言ってます?」
「甘い考えでは騎士団には入れん」
「分かりました…………お前達!俺を殺す気で来い!魔法攻撃を許す!その代わり俺の防御はこの剣のみ!全員纏めて来い!」
「え!全員相手するの!」
「ハーヴェイなら軽い運動だ………アイツは銀竜騎士団団長、騎士団の中でアイツに勝てる騎士は居ない」
「…………わ、私の弟なのよね?」
「そうだが?心配する暇も無い筈だ」

 緊張が走る広場で、ハーヴェイは剣に魔力を込めていて、剣が光を帯び輝き始めた。

「いつでもいい!来い!」
「ば、馬鹿にしてるだろ!アンタ!」
「ほらほら、纏めて来いって!」

 ロブが1歩足を踏み入れると、魔法をハーヴェイに掛ける。
 それぞれが得意な属性の魔法がハーヴェイに集中攻撃されて行くが、ハーヴェイはそれらを剣で弾き飛ばしては、瞬時に移動する技を見せた。
 目で追えない者は、ハーヴェイに後ろを取られ、殴り倒されて地面に突っ伏す。
 1人、また1人と戦線離脱し、残すは3人になった。
 何故かヒューイだけ残してなのが、笑いを誘う。
 何故なら、ヒューイは身動き出来ず、ハーヴェイを探し、構えてはハーヴェイが移動するので、攻撃さえも出来ないのだ。
 そんなヒューイをハーヴェイも馬鹿らしくて相手にしたくはないのだろう。

「見ろよ、ヒューイ情けねぇぞ!」
「やっぱり臆病者だね、あの男は」

 大爆笑を誘うヒューイに、妹のニナさえも擁護出来ないぐらいに笑っている。

「如何した、臆病者………来ないのか?臭いから余り近くには寄りたくないんで、棄権でいいぞお前は」
「っ!…………ば、馬鹿にしやがって!」
「お………弱っ………」

 必死に繰り出した炎の玉も、あっさり剣で弾かれ、ハーヴェイから水を出されて、簡単に消えた。

「火事になっては大変だからな、弱い火でも消化は大事だ」
「素敵~!」
「騎士様ぁ~!」
「きゃー!」
「……………キザね、私の弟……」
「アイツはモテるからなぁ」
「クソッ!クソッ!」
「…………あぁ、お前センス無いよ、もうおねんねしな!」

 今度は風を起こし、砂埃を立たせ、ヒューイの視界を遮るだけで、ヒューイは何も出来やしなかった。

「一体幾つの属性を操るんだ?あの男………」
「ロブ!そんな事言ってないで行くぞ!」
「あ、あぁ!」

 残った男は、自警団でも強者で、予想通りの結果だった。
 だが、ハーヴェイの魔力に太刀打ち出来ず、ロブ達は、体力消耗でグリードの静止が入ってしまった。

「そこ迄だ!」
「っ!」
「クソッ………マントに掠りもしなかった……はぁはぁ……」
「ハーヴェイ、如何だ?」
「見込みありますよ、この2人は」
「うん、私もそう思う………お前達、まだ騎士になりたい気持ちがあるなら、荷物を纏め、付いてくるといい」
「…………ほ、本当に?」
「ロブ!やったな!俺達騎士になれるぞ!」
「あぁ!」

 嬉しそうに抱き合うロブ達を見て、リアナはリサに話掛けた。

「リサ………ロブに付いてく?」
「っ!………わ、分からない……ロブが付いて来て欲しい、て言ってくれなきゃ、私は勇気出ないよ………」
「…………そうよね……」

 夢を追う気持ちは邪魔したくはないだろう。
 あとはリサとロブが話て決める事だった。
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