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しおりを挟むリアナが住む村から少し離れた街に到着したリアナは、ロブに付き添われて、リアナに贈り物をした男の家に来た。
その男は留守だった様で、その男の母親という初老の女に、ロブはリアナから贈り物を奪い突き返した。
「息子のレナードに言っておいてくれ!リアナには俺が居るってな!」
「ロブ!何を勘違いされる様な事を言うのよ!すいません、私に贈り物されても受け取れませんから!ほら、行こう!診療所のドクターを待たせちゃうから!」
「ま、待っておくれよ!リアナ!本当にレナードはアンタに求婚したがってるんだよ………突き返されちゃ、私が怒られちまう」
「おばさん、ごめんなさい………レナードと会う訳にはいかないから」
こういう時にも都合良くロブは活躍してくれるが、ロブばかりに頼る訳にはいかないだろう。
リアナがリサの言葉の様に、結婚さえしたらこんな事を繰り返す事も無さそうだが、嫉妬深い男とは結婚は考えたくなかった。
何故、リアナに言い寄る男達が多いのかは、見目でそうなるのだろうが、リアナは望んだ事は全く無いのだ。
レナードの母親はリアナを引き留め様と必死だが、ロブにより阻まれた。
「悪いなおばさん。リアナはプレゼントじゃ靡かねぇんだよ」
「っ!…………ロブ!レナードが帰ってくるわ!」
「お?本当か?先に行け」
「うん」
相変わらず、リアナの勘が冴え渡り、レナードと入れ違いにリアナは診療所に向かった。
「ロブ、何してるんだ?俺の家で………あ!お前!それはリアナに贈った物じゃないか!何でお前が持ってんだ!」
「リアナと返しに来たんだよ!リアナはな、お前の気持ちは受け取れねぇんだとよ」
「それはお前もだろうが!」
「俺は会えないお前と違って、一緒に来てんだよ」
「嘘だ!お前が勝手に付いて来たんだろ!」
「それでも、一緒に今迄居たには変わりないな………じゃあ、返したぜ」
「おい!ロブ!」
リアナを取り巻く騒動に発展すると、リアナの居場所を探されてしまうだろう。
気が付けば、リアナの目的地の診療所に人だかりが出来るのは時間の問題だった。
「今日もありがとうな、リアナ」
「いえ、またこの注文された薬が出来たら持って来ますね」
「いっその事、この街に住んだらいいんじゃないか?リアナ………村から来るのは大変だろう?」
「薬草の採取が大変になるじゃないですか」
「…………あぁ……そ、そうだったな……違いない」
リアナが村に住むのは、それなりの利便性があるからだ。
街に住んでいたら、採取に時間を取り過ぎて、薬の生産性も悪くなる。
「聞いたぞ?この街だけじゃなく、また違う街やお前さんが暮らす村の男達が結婚しないのは、リアナ目当てだってな……もう適齢期なんだ、さっさと決めちまいな」
「結婚したくないんですよ、言わないで下さい」
「俺だってあと30若けりゃ、結婚なんてせずにリアナを口説き落とすだろうよ。カミさんには内緒だぞ」
「言わないですけど、無理ですよ………奥さん、ドクターの後ろで聞いてますから」
「え!…………あ………あはははは……」
「アンタ!」
「す、すまん!悪かった!」
喧嘩が勃発しそうで、リアナは早々に出ようと、荷を纏め始めると、医師の妻がリアナに声を掛けた。
「リアナちゃん、裏から出な」
「え?」
「表に街の独身男達が集まって来てるよ」
「…………助かります、どうやって逃げようか考えてたので」
仕事を放棄する訳にはいかなかったので、薬を届けたら、男達が診療所の前に居るだろうとは予想が付いていた。
ロブがリアナに付いて来ると、高い確率でこの騒ぎになる事が多いのだ。
リアナに会いたくても会えない男達は、リアナに贈り物をし、それを受け取る気の無いリアナは返しに来るので、それが街で噂になってしまい、診療所に集まって来る。
村であればこの騒ぎはあまり起きない事だが、毎日リアナが居る訳ではない街では、これが日常的だった。
「モテるのも大変だねぇ、リアナちゃん」
「変装を本気で考えなきゃ駄目ですね、もう」
「診療しないのに、こう集まられちゃうとねぇ………リアナちゃんの薬さえウチは貰えればそれで良いし助かるんだけど………」
はっきり言えば、商売の邪魔な行動になるのだ。
だから、リアナは必要以上の買い物にも出ない様に心掛けている。
「今度は、髪を染めるなりして来ますね、いつもご迷惑掛けてすいませんでした」
「いいのよ、ウチは」
街がこの状態なので、帰りは乗り合い馬車に乗って帰れる事は少ない。
村に行く方向に向かう馬車を探すのも困難になるからだ。
リアナはそっと、街から出ようといつも勘を働かせて街を出る。
一緒に来た、リサやロブの事も気にはなるが、こんな事が日常なので、彼等も分かっている。
「…………ふぅ………村に行く馬車が通るのを待ちながら歩いて行きますか………これだけで疲れちゃうわね………馬でも飼おうかなぁ……お世話大変かしら」
質素な生活をしているリアナは、蓄えはしているが、馬を買う為のお金があるか等知らない。
村には金持ちの者も居なかったからだ。
金を寄せ集め、皆で共有する家畜は居るには居るが、馬や牛は農業の仕事をしている者が優先に使う事が決められてしまっていて、リアナ1人の為には使わせてはくれないと思われた。
---専用に使いたい、て村人、私ぐらいしか居ないわよね………村長に聞いてみようかな……あ、駄目だ………村長に聞くと、厄介者が口出してくるわね、きっと……
村長にも息子と娘が居て、その兄妹は村ではちょっとした困った性格の持ち主だった。
リアナより少し歳下である兄妹だが、色気づいたのか、最近リアナに好意を見せ始め、村長の息子という立場を傘に、権力を使って来る様になったのだ。
妹も同じ様になってしまい、村では公には言えないが、煙たがっている存在が居るのだ。
「…………如何しようかしらねぇ………」
のんびりと帰路を歩きながら、結局乗り合い馬車とは遭遇出来ず、リアナは村に到着したのは、夕方になった頃だった。
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