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告白
しおりを挟むその日の夕方、広間での騒ぎで疲れたのと、昨夜眠れていなかったのもあり、部屋に戻った瞬間、ベッドに誘われるように倒れた。
リーナ達侍女に起きて、着替えるように言われても、動ける気がしなかった。
仕方がなく、ドレスを緩めベッドの中央に移動され深い眠りに着いたジュリアナ。
そして、起きたのは夜中………。
月夜も昨夜と同じで、池の水面に月が映る。
ドレスが緩められていたので、整えて外に出るジュリアナ。
着替えればいいのだが、この姿でシヴァへの思いを決意した為か、脱ぐ気になれなかった。
(………今日は疲れた……。アーヴァインと宰相はもう関係修復出来ないよね……。子供の頃はよく遊んでくれた優しい人だったのに、どんどん陰湿な印象になっていって……。)
チャプン………。
風が無いのに、水面が揺れた。
ジュリアナが音の方を見る。
「!!!………シヴァ!」
「…………よっ!」
池から上がり、アッシュブラウンの髪を掻き上げるシヴァ。
シヴァは、プラチナブロンドのジュリアナの髪が綺麗だと言うが、彼の髪も綺麗だと思っていたジュリアナ。
「あ、タオル持って来なきゃ!待ってて!」
「ジュリアナ……直ぐに戻るからいいよ。」
「……え?…………だって、風邪ひいちゃう。」
「………様子見に来ただけだし……アーヴァインから今日の事聞いて心配になって……。」
直ぐに戻るから、と言われ、寂しさを覚えるジュリアナ。
悲しそうな顔に見えるシヴァは話を変えた。
「今日、大変だったな。晒し者みたいになった、て聞いた。」
「えぇ、疲れちゃって、部屋に入ってそのまま寝ちゃって、格好もそのままよ……。」
「………あぁ、だから正装なのか………よく似合ってるよ、そのドレス。」
(…………また我慢出来るかな……。耐えろ、俺。)
話題を変えた内容がまた、シヴァを窮地に陥れる。
「…………お兄様がね、この姿をシヴァが見たら押し倒したくなるんじゃないか、て言ってた………。男の人、てそうなの?」
「ぶっ!!!……………お、押し倒…………。」
(冷静になれ、冷静になれ!!)
シヴァは、ジュリアナの顔が見られない。
見たら、押し倒したくなる………それを確信出来るから。
「………ねぇ?」
ジュリアナは男心が分からない。
分からないから、シヴァの顔を覗き込む。
上目遣いの目線が、シヴァには可愛くて仕方ない。
「…………た、頼む………俺の理性が持たない。」
「………理性?」
「……………押し倒したくなるんだよ………。無理矢理抱き着きたくなるし、君に触れたくなる………もっと先の事をしたくなる……。」
目線を合わせられない、シヴァ。
目線を合わしてしまったら、もう理性が保てない。
「………胸がドキドキしたり?」
「………あ…………あぁ……。」
「……………そっか………私もやっぱりシヴァと同じなんだ……。昨日、別れた後、寂しくて、ドキドキして………髪にキスされた後、私もキスされた髪にキスした……。」
「!!!」
シヴァはジュリアナを見つめる。
「……………私、シヴァが好き。」
ジュリアナもシヴァを見つめる。
「………ジュリアナ………触れていい?キスしたい。」
「………うん。」
「………目、閉じて。」
「…………。」
優しいキスを、ジュリアナの唇に落とす。
唇、おでこ、瞼、頬……何度も軽く触れるキス。
2人の初めてのキスを見守るように、夜空の月が輝いていた。
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