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誤解

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 少し時は遡る。
 アーヴァインは城外にある、近衛兵が待機する詰所に来ていた。
 門番にアーヴァインは声を掛け、近衛兵の証明になる紋章を翳して中に入る。
 
「長官はどちらに居られる?報告したい事があるのだが……。」

 見知った近衛兵に声を掛けた。

「アーヴァインじゃないか!どうしてたんだ!今まで!」
「すまない、今話をしている余裕はないんだ、教えてくれ。」
「今は長官室に居られる筈だ…………。アーヴァイン心配したんだぞ?」
「本当にすまない、また時間取れた時に話す。」

 コンコン。

「はい。」
「失礼します。アレクセイ長官…………アーヴァインです。」
「……………アーヴァイン?アーヴァインか?」
「…………ご無沙汰して申し訳ありません。ジュリアナ様の命により、アレクセイ長官に手紙を持って参りました。」

 一礼し、アーヴァインはアレクセイ王子に手紙を渡す。

「ジュリアナから?」

 執務を直ぐ様辞め、手紙の封を開けて中を確認するアレクセイ王子。

【親愛なるお兄様
 ご心配お掛けした事、申し訳ありません。
 お兄様にお会いしたいのです。
 暫く、城内に戻る予定でおりますが、その前にお兄様に会わせたい者が居ります。
 かの国より、お兄様の使いの者です。
 お兄様のご都合に合わせます。
 どうか、良きお返事をアーヴァインに届けて頂ますよう、お願い申し上げます。
 ジュリアナ。】

(…………かの国………シヴァか………シヴァならまだ会えない……。)
「アーヴァイン、お前とジュリアナだけで来たのか?」
「いえ、カムラ国のシヴァ様とソロという者です。」
「…………ソロが一緒だったら会おう。今から時間を取る。ジュリアナにその様に伝えてもらえるか?」
「はい。承知しました。」


 小屋にアーヴァインが来て、ジュディスに報告し、ソロと一緒なら、と言うつもりだったのだが、ジュディスはソロを連れて小屋から早々と出ていってしまった。
 気不味いシヴァとアーヴァイン。

「おい、こっちだ。洞窟確認するぞ。」

 アーヴァインが小屋から出てシヴァを連れ出す。
 無言の2人だったが、どうしてもシヴァは、アーヴァインに聞きたい事があった。

「…………アーヴァイン、君はジュディスと俺の結婚には反対してるのか?」
「…………アンタは気に入らないが、ジュディス……いや、ジュリアナ様が幸せになるなら俺は反対しない。」
「君はジュリアナ王女が好きなんじゃないのか?」
「…………好きは好きだが、恋愛感情等はない。俺にはコーラルが居るからな。ジュリアナ様とはただの幼馴染だ。」
「は?コーラル?」
「…………アンタ、勘違いしてたのか?俺はコーラルを愛している。妹だがな………。」
「は?妹?」
「俺達の両親は離婚し、兄妹離れ離れにされた。再会した時は兄妹だと気が付かず、男女の関係になり、コーラルは俺の子を妊娠したから、親父に会わせたら、兄妹だと分かってな…………。コーラルは子供を産めない身体にされ、俺達はこの街に居られなくなった。それをジュリアナ様は助けてくれたんだ。恩もあるし、ジュリアナ様は妹のような存在だ。ジュリアナ様も俺に恋心なんて抱いちゃいないさ。…………安心しろよ、俺はアンタがジュリアナ様を幸せに出来るかどうか、見定めてるだけさ。」

 シヴァが知らない事実が一つ解決したのだった。
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