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恋愛開始

拘束された野獣

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 裕司の開けたドアに紗耶香は入ると、裕司も後から入る。

「あれ?昨日みたいに散らかってない……」
「………あぁ、あの後少し片付けた」

 裕司の部屋は、何故かリビングにベットを起き、唯一ある部屋はクローゼットにしている。見目がいいだけ、服装には気を使っている裕司の服のせいで、寝る場所がリビングになってしまった。

「適当に座ってろ……なんか飲むか?」

 ローテーブルに鍵を投げ捨て、裕司はキッチンの冷蔵庫からミネラルウォーターを出して、一気に半分迄飲んでしまった。

「要らない……羽美さんの所で頂いたから」
「羽美と何の話してたんだ?……最近、よく話すよな」

 紗耶香は、ソファがあるにも関わらず、キッチンに居る裕司と距離を取って立っている。

「…………愚痴聞いて貰ってた」
「愚痴?………仕事の愚痴じゃないよな……お前の事だから………あぁ……俺の愚痴ね」

 裕司の知り合いで、話しやすいのは羽美なのだろう。大方、性的な相談でもしていたのかもしれない、と裕司も予感する。

「で?キスもしてくれない、触れてくれない、て愚痴ったか」
「…………相談からの愚痴よ……経験豊富の裕司と付き合うんだもの……私だって裕司に飽きられない様にしたいし………」
「飽きられない………て?何年お前を見てきたと思ってる………手に入れたくても出来なかった高嶺の花のお前が、俺を諦めなかったから、俺も覚悟してるんじゃねぇか!飽きるかどうかはまだこれからで、立場的にお前が俺を捨てる事はあっても、俺から離れる事はねぇよ!」

 ペットボトルから水が噴き溢れる。裕司が握り潰したからだ。

「………でも、最後迄このまま出来なかったら……」
「んなもん、幾らでも工夫はあるし、昨日のは俺だって悪いんだよ!」
「違う!私が………私が比べちゃったから!」
「…………比べた?」
「…………うん……行儀悪いよ」

 裕司は溢した水の入っていたペットボトルのキャップを締め手を拭く。まだ床に溢れた水は手を拭いたキッチンペーパーを床に落とし足で拭いている。

「………いいんだよ………それで、何を比べたんだよ」
「…………裕司の過去関係あった女達と、私の時の違い」
「………過去の女?………何でそんや奴等と紗耶香を比べなきゃならない?」
「比べちゃったの………だって……裕司……で前はシてた………から……」
「……………昨夜、俺がじゃなかったからか?」
「…………私……見てないから……」
「なるほどね」

 裕司がゴミ箱に汚れたキッチンペーパーを捨てると、紗耶香に近付いて来る。

「…………紗耶香」
「………」
「あいつ等は比べるに値しない………俺が無言だったのは、会話も面倒で、ただ性的欲求を満たしたいだけで、あいつ等には感情も無かった………紗耶香がなんだよ……俺のな」
「…………うん……」
「………また泣いたのか」
「……………落ち込んだから」
「悪かったな」

 ポン、と紗耶香の頭を撫でた裕司は、キッチンから離れてベット脇に座る。

「……………で?如何する?紗耶香」

 両手を広げ、紗耶香を待ち構える裕司。『来い』と言っている。

 ―――失敗出来ない……

 紗耶香も裕司の座るベットへと近付く。バックの中にある手錠は、背中側にスカートで挟んでおいた。
 キッチンに裕司が居る物陰で出して隠したのだ。

 ―――鍵はバックの中だけど……

 ベット脇にはバックは置かず、少し離れた所にバックを置いた。

「裕司………お願いがあるの」
「何だよ」
「電気、もう少し落として」
「…………あぁ」

 電気も常夜灯に落としてくれた裕司。

「他は?」
「………目、瞑ってくれる?……脱ぎたいから」
「俺が脱がしたいんだが」
「き、緊張するの………昨日の事思い出しちゃいそうで……」
「……………分かった」
「ありがとう」

 裕司の手は前にある。後ろに回って手錠を裕司の後ろに回したい。

 ―――脱いで背中から抱き着けば……

 紗耶香は下着だけ残し、裕司の背後に回り、ベットに上がると後ろから抱き締める様に手を重ねた。

「…………紗耶香」

 裕司は押し倒そうとして、振り向こうとするが、片手だけ紗耶香は手錠を掛ける事に成功する。

「!………紗耶香?」
「ごめんなさい!お願い!………私のペースでさせて!」
「な、何を!」

 手錠を外そうと裕司は慌てるが、力では叶わない裕司のもう一方の手に手錠を掛けた。背中ではない腹側だが、これでは裕司は思うように紗耶香に手は出せない。

「な、何すんだ!紗耶香!」
「お願い……裕司………出来なかったら嫌なの………また身体が硬直して出来なかったら………もう裕司に触って貰えないんじゃないか、て………私……裕司の昨日の愛撫が怖かった………他の女達には無言だったのに、私には、や………やらしい言葉聞かせて、違ってて戸惑った………私は……無言でセックスしてる裕司しか見なかったから………セックス知らないから……また愛撫や言葉で………身体が強張ってしまったら、私………出来ない気がして………それなら私のペースでシてみたら?て律也さんが………」
「…………律也?……羽美の旦那にも相談したのか!紗耶香!」
「羽美さんに話してたら聞かれたの!」
「……………そういや、SMバー出入りしてた男だったな………」
「ごめんなさい………私……裕司にどうしたらいいか分からないけど、裕司から教えて貰いながらなら………強張らないんじゃないかな……て」
「…………それを羽美の旦那にアドバイス貰った、と」
「…………う、うん………」
「…………はぁ………どっちかって言うと、俺はシたい派なんだがな……」
「S?」
「…………それもあの男が言ったのか?」
「それは羽美さん」
「…………羽美め………」

 裕司は困り顔ではあるが、怒ってはいない。

「鍵は?」
「……………言わない」
「おい」
「だって、外すでしょ?直ぐに」
「…………外さねぇよ……鍵無きゃ困るから聞いたんだ!それに、1回ヤりゃもう大丈夫だろ………2回目出来るか分からんが、紗耶香に触れねぇのは嫌なんでな」
「…………じゃぁ……いいの?」
「紗耶香が怖い思いしなきゃ、な」
「…………裕司!……あ、それなら背中に付けさせ直していい?」
「…………はぁ……分かったよ」

 諦めに近いが、裕司は紗耶香に付き合ってくれる様で、一旦手錠を外した紗耶香は裕司の腕を背中に回し、手錠を掛けた。
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