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【あらすじ 紗耶香&裕司視点】Mにされた女はドS上司に翻弄される
令嬢の反抗
しおりを挟む会社に到着すると、株を買占めたのは律也だと知る。
―――そこ迄やるの!この男……
紗耶香は何故かそれが助け舟に見えた。株の変動に気が付かなかったのは紗耶香もだが、祖父や父の慌て振りを見れば、知らなかったと見えるのだ。
―――実質的経営者はお祖父様………責任追及出来る!
この3日後、白河酒造からの業務提携について、最終判断が降される事となり、紗耶香は祖父に反抗を始めた。
「責任、お取りになるのですよね?お祖父様」
「何故儂が責任を取らねばならん!元はと言えば紗耶香!お前が上手くやらなかったからであろう!」
「……………そうですね、全てお祖父様の指示で……」
「ど、どういう事だ、紗耶香」
会社の役員が全員集まる中で、紗耶香は堂々たる態度を取っている。
「私は責任を感じていますので、役員辞任お呼び辞表を提出致します」
「な!」
―――始めからこうすれば良かったのよ……お祖父様が拘っているのは、律也さんと結婚する為に私が白河酒造の後継者である事なんだから
紗耶香が、退職すれば祖父が望む業務提携が出来ないのだ。祖父は律也を婿養子にし、紗耶香との子を産ませ、速水物産を乗っ取る事だから。
紗耶香は祖父の指示を細かく話していく。その通りに動けなかったのは自分の責任だとも付け加え、律也がその反撃に出たのは、正攻法で業務提携の話をしてこなかった、祖父の責任、と続ける。
「私は、律也さんとは結婚する気もありません。既に既婚者ですから……そうなった時点で止めるべきだったのです、違いますか?お父様」
紗耶香は祖父ではなく、父に問う。いつまでも祖父の影では居られないのだ。遅すぎる程に自分の父親に反抗を見せる時なのだ、と紗耶香は訴えている。
「そうだな………私も、父の………会長はやり過ぎたと思っている……業務提携は白紙に戻す!白河会長は辞任を要求する!意義ある無しな者は挙手を願う!」
祖父のワンマン経営に不満を持つ者が大半だった様で、ほぼ全員が挙手をした。
「ここ迄会社を大きくしたのは誰だと思っている!儂だぞ!」
「見苦しいですよ、お父さん………いえ、白河前会長」
「ぐっ…………ぬぬぬ……貴様……」
「そういう事ですので、お祖父様………私と共に此処から立ち去りましょう………邪魔ですから………後はお父様にお任せ致します………速水物産への謝罪は、私もお祖父様も参りますから」
見苦しく祖父は居座ろうとしたが、紗耶香は警備員迄呼び、祖父を退室させたのだ。
―――何か晴れ晴れする……いいのよね、これで……私に、もう何も残ってないけど、無いならないで、裕司に釣り合える仲になるのかな……
身体を伸ばし、大きく深呼吸をする紗耶香。
―――こんなにもスッキリした気持ちになるなら、本当にさっさとやれば良かった……
「紗耶香………お前も許さんぞ!」
杖を振り回そうとした祖父だったが、空振る。
「…………避ければ良かったんですね……もう、私お祖父様が怖く感じません……家に縛られ過ぎました!」
「ぐっ!」
今迄萎縮していたのだと、初めて思えた。両親からは祖父に逆らうな、と言われて、祖父の威嚇に退く事しか許されていなかった、と今なら分かるのだ。
「さて、と何しようかな………これから……」
そして、3日後の謝罪に向けて、準備を始めた紗耶香は、潔く辞表を提出と、引き継ぎ等様々な処理に追われ当日、紗耶香には何も残らない様にした。
律也に持ち株を奪われたが、持ち株を返す条件に、紗耶香の祖父の会長辞任、会社での権利を没収する事で、業務提携をする事になった。
新たにトップとなった父が立て直しを計る事になった白河酒造。
「会長辞任にして頂けたので、新たにこのプランで、事業を展開しませんか?白河社長」
「こ、これは……」
「私が、立てた白河酒造とやりたい仕事ですよ…………申し訳ないが、前白河会長とでは出来ないであろう仕事です」
「…………有り難い……これが成功したら益々事業拡大出来る……」
―――何故、お父様は私もこの席に参加させたのかしら
既に会社を解雇となった紗耶香は無職だ。なのに、父と速水物産に呼ばれていた。
「それで、新たな人事でこちらからお願いしたい人が居るんです」
「それが、娘だと?」
「…………え?私ですか?律也さん」
「えぇ、貴女は経営者に向いていますから……如何ですかね?」
「…………お父様、私やります!やらせて下さい!律也さん!」
それは、若い世代をターゲットとする店舗展開の事業。元々、白河酒造でもやっていた事だが、富裕層向けの店舗しか出来ておらず、主に酒類の店ばかりだ。だが、律也が提案したのは酒でもなくノンアルコールだけを使った低価格のカフェや店舗だ。主に昼営業の収益を見込んでいる。酒に関するノウハウであれば、速水物産より分かっている。
「これが上手く軌道に乗れるであろうプランを組んでます………こちらはあくまでも推測の域ではありますが、新たな店舗は作るのは、暫く待ち、既存の店から、という事にしても良いかと」
「…………でも、数年のプランしか無いですが」
「それは、紗耶香さんの腕の見せ所では?」
「っ!」
「俺もただ、貴女方からの妨害を黙って見ていただけではありませんからね……改善点があるのに、何故やらないのか、と思えたので調べてみたら、白河前会長が止めていた……と思いまして」
「………私が正攻法を取らなかったばかりに……
応接室で、沈黙が走る。暫く3人が黙っていると、律也が口を開いた。
「おかげで俺は惚れた女と結婚出来ましたし、貴女は本当に大事にしていた気持ちに気付かされたでしょう?」
「…………そ、そうなんでしょうか……」
会合が行われた日の後に行われたこの面会。
紗耶香が解雇扱いになり、まだ紗耶香の中で確信等は無い。
「俺は、自分に対して好意を持つ女か如何か等簡単に分かる………貴女は本気で俺を見ていなかった……好きな人、居るんじゃないんです?」
「っ!」
「………紗耶香、本当なのか!……まさかまだ……」
「い、いいえ!…………いいえ………無理なんで……私は……」
晴れ晴れとしていた紗耶香だが、1つの事を覗けば、であった。
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