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改めて、協力者
しおりを挟むその夜、コーウェンの部屋に来て欲しい、と言われた鳥カチュア。
勿論、過去カチュアが席を離れた時にコーウェンに言われた。
過去カチュアの部屋の上階にあるというコーウェンの部屋の窓を開けておくと言うので、過去カチュアの部屋の窓から入った鳥カチュア。
「やぁ、来たね、カチュア嬢」
「………コーウェン様……私を疑わないのですか?」
「何故?僕は人間のカチュア嬢より、鳥のカチュア嬢の方が興味あるのに」
「………それも困るのですが……」
もう寝るだけなのだろう。
コーウェンは、シャツとスラックスだけのラフな姿で寛いでいた。
「へぇ~、それは何故?」
「…………信じてくれるか分かりかねますが、私があのカチュアにコーウェン様を選ばせたので……」
「…………もし、僕が名乗り出なかったらどうするつもり?」
「そうなったらまた考えます」
「そんなに僕に近付きたかった訳?」
ベッドの背凭れに凭れていたコーウェンだったが、ベッドから出て、ソファの背凭れに止まるカチュアの場所に移動する。
「それは、君が精霊の加護がある事と関係ある?」
「……………そう思って頂いても構いません」
お互いに探り合いなのだ。
バッシュの妻になった時のコーウェンは、直ぐに協力を買って出たが、今のコーウェンは違う。
「昨日、夜会で名乗り出るつもりは無かった。しかし、演奏会の時のカチュア嬢と、舞踏会の時のカチュア嬢、そして名乗り出る時のカチュア嬢のオーラが変わったから、カチュア嬢に興味が沸いた………今は最高値と言えるのかな?赤と青、黄色、水色、茶、土色、緑の7色のオーラが君と、人間のカチュアに見える………その前は2、3色ぐらいしかみえなかったけど……」
「変わったから、名乗り出たのですか?」
「勿論さ………僕は精霊が見えるからね」
「…………私は2度人生に失敗しています」
「2度?」
「1つ目は、デューク殿下に嫁いだ事。2つ目は、バッシュ様に嫁いだ事………」
「え?ちょっと待って?君が重婚した記憶は僕には無いけど?」
コーウェンは、額に指を当て、少し考えると、おかしな事を聞かされたと思い、慌てるように言葉を返す。
「当然です。私、過去に戻って来てますから」
「…………か、過去?」
「はい、精霊達の加護によって………私は、1000年に一度に生まれ変わる、聖女カルディアらしいので」
「………聖女カルディアだって!?」
「まだ、私には自覚ありませんけど」
「…………君が、聖女カルディア………」
コーウェンが額に当てた指を口元を覆う。
わなわなと身体が震え、歓喜に満ちた表情に変わる。
「コーウェン様?如何されました?」
「…………やっと………やっと排除出来る………悪魔等居なくていいんだ……」
「………ライナス殿下、ですか?」
「………!!………知っていたのかい?ライナスのやって来た事を……」
「私………ライナス殿下の子を身篭った事ありますから………」
「………今………の……人間の……」
「身篭るのは、この先の未来です!それを阻止したいのです!悪魔の子なんて産みたくありません!」
「…………あながち、ライナスから君を守らなければ、と思ったのは間違ってはいなかったようだ………僕は、ライナスから逃げたくて、表向きは内向的な男を演じてきたんだ………それを辞めれる時が来たんだね…………君の存在が、僕を救うんだ……」
「ご協力して頂けますか?」
「断る理由等ないよ………分かった、過去の君を僕は守ればいいんだね?」
「………はい……鳥の姿では守れなかったですから」
「でも、何故鳥に?」
「………私も分かりません。精霊シャルゼが私の精神を鳥に媒体したので」
「精霊は皆君に協力してると思っていいのかな?」
「………う~ん、如何ですかね?過去に2度戻って来れましたけど」
コーウェンは、聞けば聞く程、興味が沸いているのか、気になる事をじゃんじゃん聞いて来る。
鳥カチュアはコーウェンに説明するのも2度目になるので、何を聞かれて何を言ってきたかさえもごちゃごちゃになりつつあった。
「凄いな………戻れるものなら僕も戻ってみたいよ」
「そ、そんな事になったら、ハチャメチャになります!」
「ははは………そうだね…………っと、もうこんな時間か……そろそろ寝させてもらうよ、また明日にも話を聞かせてもらえるかな?カチュア嬢」
「はい、無理の無い範囲でしたら………コーウェン様のお仕事に差し障る事は避けたいですし」
「そんなに軟な身体じゃないよ、婚約者の未来が掛かってるんだから、最優先にするし」
「…………婚約者………そうですね………」
「………何か気にしてる事がある?……カチュア嬢が嫌なら白い結婚でも構わないよ?どちらにしても、ライナスを排除しない限り、結婚しても安心出来ないしね」
「…………」
(………何かしら……モヤモヤする)
「さぁ、君も休みなさい。」
「………は、はい………おやすみなさいませ、コーウェン様」
鳥カチュアは窓から、過去カチュアの部屋に戻る。
カチュアが居なくなったコーウェンの部屋の明かりが消え、コーウェンはベッドに丸まる。
「………白い結婚……か………無理だろうな、きっと………鳥のカチュアが本来の性格なら、僕が我慢出来そうにない………」
鳥カチュアとの会話が、コーウェンの興味深い事だからなのか、楽しくて時間をつい忘れてしまう程だったのだ。
聖女カルディアの末裔のコーウェンにとって、何処か懐かしく愛しさを感じたカチュアのオーラは、コーウェンの5感を刺激した。
カチュアを見て、一目惚れした、と言ってもいいだろう。
だが、人間のカチュアより、鳥のカチュアへの一目惚れなのだから、たちが悪い。
人間のカチュアがまだ、本音を隠しながらの会話でしかないのがもどかしい。
暴きたくなってしまうコーウェンだった。
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