10 / 30
所有♡
しおりを挟む「離して下さいませ!」
「駄目だ!」
「歩けます!」
「待てん!」
1階のリビングから3階迄、靭やかかつ俊敏にあっという間に上がって来るヒューマ。メイリーンを肩に担ぎ移動しているのに、本当に早かった。
メイリーンが1階から3階迄移動する時間の半分以下の時間で運ばれるのは、やっと慣れてきたメイリーンだが、正直嫌な行為ではあった。靴も脱げる時もあれば、髪飾りも落ちたり、イヤリングも落ちて無くす。後から見つかるが、侍従達の労力も考えて欲しかった。
「きゃぁっ!」
ぽすん、とベッドに落とされるのも毎回で、逃げ場も無く、そのまま覆い被さるので、メイリーンに拒否権も与えない。
「メイリーン………いい加減、獣人を理解してくれ」
「マーキングが直ぐに消えるならわたくしも躊躇しませんわ!3ヶ月も痕が残るのですよ!」
「それこそ、夜会以降メイクで隠せばいい」
「それでも、分かる方には分かるではないですか!」
「獣人なら分かるな」
「ほら!わたくしは獣人の方と結婚する考え等無いのですから!」
「…………くっ!………なら、俺が生涯妻は1人と決めていたら君は俺と結婚するのか?」
「…………え?…………あ、あの……き、急に仰られても………」
「答えろ、メイリーン………そうでなければ、今夜は乱暴に抱くぞ」
「…………か、考えさせて下さい………」
ベッドに仰向けにされていたメイリーンは、ヒューマから顔を背けた。
「俺が嫌いか?」
「なっ!………そんな事考えた事ありませんわ!第一、嫌いな方と何度も房事出来る程、わたくし阿婆擦れではありません!」
嫌いではない、と否定した答えを返すのに、メイリーンは再びヒューマを見上げ、服を掴み怒りを見せた。自分の気持ちに正直で、真っ直ぐなメイリーンに、ヒューマは好感を持っている。
「……………阿婆擦れ………プッ……そんな事は俺も思わん………好きか嫌いか、で答えてくれればいい」
「……………黒豹のお姿は好きですわ……」
「な、何だその告白は!」
「…………わたくしの誓いは如何なりますの!あれ程、わたくしは獣人の方とは婚姻しない、と固く決めたのに…………ヒューマ様の存在がわたくしを変えてしまったのです!戸惑いますわ!」
「……………そうか……それ程、俺は君の心に入れていたのか………」
「っ!」
そう、メイリーンも気付いていた。ヒューマがメイリーンの心にスッと入った時の事を。それから意識し始めていたが、自分のプライドが邪魔をしていた。プイッと再び横を向き、ヒューマの服を掴んだ手を離すメイリーン。
「…………フッ………いつからだ?」
「………っ!………い、言わないでおきます」
「答えぬと、もう一生消えぬ婚姻の証を付けるぞ?」
「ま、まだ婚約もしておりませんわ!そ、それに……………あの……」
「何だ?」
「………こ、恋人………気分を……味合わせて下さいませ………」
「……………分かった……そうしよう……俺も仕事が忙しいからな………で?いつからだ?」
「っ!執拗いですわ!」
「……………それなら、身体で聞くか………答えぬ恋人に我慢を覚えさせながらな」
「……………え?………あの………今何と仰いました?」
ヒューマは身体を起こし、キャビネットの中から縄を持って来る。
「ヒューマ………様?」
「メイリーン………脱いでしまおうか………それとも破り割くか?」
「っ!」
「全裸になり、足を開いて俺を欲しがれ」
「…………ヒューマ様は脱ぎませんの?」
「俺は、まだだな」
メイリーンが素直にドレスを脱ぎに掛かると、ヒューマは天井の梁に縄を掛けるのをメイリーンは目撃する。その梁はベッドの真上だ。
「な、何をなさるのですか?」
「マーキングをするのに、メイリーンを噛むだろう?痛くて逃げられたら俺は落ち込む」
「に、逃げませんわ!あ、あの本当にマーキングする気なのですか?」
「諄いぞ、メイリーン………もう、俺の女だろ?」
「っ!」
裸になったメイリーンの頬を擦るヒューマ。その眼差しは『好き』と言っていた。ヒューマがメイリーンに顔が近付いて来たのを感じ、目を閉じたメイリーンだが、キスの最中ヒューマは抱き締めてはくれない。しかもメイリーンが抱き着こうとする手がいつの間にか縛られていた。
「え!」
「……………似合うぞ、メイリーン」
「な、何ですの!コレ!」
腕は背中に固定され、胸と腰を縄で括られた状態になっていた。緊縛されたメイリーンの裸体を弛緩され、ヒューマは天井から吊るされた縄を引っ張ると、メイリーンは腹を中心に吊るされてしまう。
「俺の牙は痛いからな………泣いた所でも止めるつもりもない………だから縛ってそのまま抱き締めた状態でマーキングする………1滴残らずメイリーンの血も吸うからな、俺が下から舐め取ってやる」
何だか、恐ろしい事を平然と言いながら、上半身裸にはなったヒューマはメイリーンの下に潜り込んだ。
「ッあん!」
メイリーンの背中を擦るヒューマ。その手は優しく、小さな喘ぎが漏れた。
「メイリーン………ラノックのマーキングは痛かったか?」
「そ、それが………何もわたくし知らなかったので………気が付いたら痣が……」
「言い方を変えよう………今から噛むのはココだ」
「っん!」
ヒューマが今から噛む場所に爪を立て、痛みを与えてからまた擦る指。
「噛まれた時は痛かったか?」
「キ、キスマークだと………思って………ましたから……」
「…………そうか……最中に噛まれたか」
「多分……そうかと」
「同じでは腹が立つ…………痛みは伴うが、直ぐに和らげてやる………少し我慢しろ、噛んでいる時は話が出来ない………いいな?メイリーン」
「っ!………は、はい…………ゔっ!……………ああああああああっ!」
宙に浮く身体を、ガッチリ抱き締められ、項に牙を立てられたメイリーン。房事の時の喘ぎや悶えとも違う声を発し、部屋中に轟く。足をバタつかせ、牙から逃れ様と暴れるが、メイリーンの額を押えるヒューマの腕にも力が入っていた。
―――痛い!噛まれた場所が熱い!
ヒューマの牙が根本迄食い込む痛みは、ラノック公爵に付けられた時より痛いのだと、悲鳴が挙がる。メイリーンは血を吸われ、耳元にヒューマの飲み込む喉が鳴ると、温かく感じる何かがメイリーンに戻された気がする。すると、次第に痛みが薄まっていく。溢れた血を舐め取られ、ゆっくりと牙が抜かれた。だが、ヒューマの声はまだメイリーンに届かない。愛撫をするかの様に、痣の出る場所を癒やしていくかのように、唾液が塗り込まれていた。
「あ………」
額へ押え込まれたヒューマの力も軽くなった時、別の感覚がメイリーンを襲う。縛られ強調された胸を鷲掴みされ、揉み扱かれ始めたのだ。
「あっ……んふっ………っん……」
「痛みは?」
「…………な、無い……ですっ」
「頑張ったな………メイリーン………婚姻したら痛みが無い様に刻印するからな」
「い、痛み無い様に出来たのなら…………始めからして下さいませ!」
「ラノックと同じやり方は、俺の主義ではない」
「なっ!…………酷いですわ!………というか、いつまでこの状態なのですか!わたくしは!」
「……………暫くこのままで楽しませろ」
仰向けのまま吊るされて、胸を鷲掴みされた事も始めてのメイリーン。
「わたくし、ラノック公爵様にこんな事されてませんわ!」
「……………今からラノックの事は禁句にする………だが、ラノックとの房事は緊縛はなかったか………そうか……」
ヒューマは楽しそうにメイリーンの耳元でクスクスと笑っていた。
12
お気に入りに追加
351
あなたにおすすめの小説
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
【完結】王子妃になりたくないと願ったら純潔を散らされました
ユユ
恋愛
毎夜天使が私を犯す。
それは王家から婚約の打診があったときから
始まった。
体の弱い父を領地で支えながら暮らす母。
2人は私の異変に気付くこともない。
こんなこと誰にも言えない。
彼の支配から逃れなくてはならないのに
侯爵家のキングは私を放さない。
* 作り話です
クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった
山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』
色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】王命婚により月に一度閨事を受け入れる妻になっていました
ユユ
恋愛
目覚めたら、貴族を題材にした
漫画のような世界だった。
まさか、死んで別世界の人になるって
いうやつですか?
はい?夫がいる!?
異性と付き合ったことのない私に!?
え?王命婚姻?子を産め!?
異性と交際したことも
エッチをしたこともなく、
ひたすら庶民レストランで働いていた
私に貴族の妻は無理なので
さっさと子を産んで
自由になろうと思います。
* 作り話です
* 5万字未満
* 完結保証付き
【R18】熱い一夜が明けたら~酔い潰れた翌朝、隣に団長様の寝顔。~
三月べに
恋愛
酔い潰れた翌朝。やけに身体が重いかと思えば、ベッドには自分だけではなく、男がいた!
しかも、第三王子であり、所属する第三騎士団の団長様!
一夜の過ちをガッツリやらかした私は、寝ている間にそそくさと退散。まぁ、あの見目麗しい団長と一夜なんて、いい思いをしたと思うことにした。が、そもそもどうしてそうなった??? と不思議に思っていれば、なんと団長様が一夜のお相手を捜索中だと!
団長様は媚薬を盛られてあの宿屋に逃げ込んでやり過ごそうとしたが、うっかり鍵をかけ忘れ、酔っ払った私がその部屋に入っては、上になだれ込み、致した……! あちゃー!
氷の冷徹の団長様は、一体どういうつもりで探しているのかと息をひそめて耳をすませた。
聖女は教会に裏切られ、王子達に輪姦され、奈落の底に落とされました。
克全
恋愛
聖女のオリヴィア・ローウェルは教会に売られてしまった。
ずっと金蔓として働かされ、遂には王子達に売られてしまった。
王子達が極悪非道だった。
何カ月も監禁輪姦して、飽きたら奈落の底に捨てさせた。
奈落の底に落ちた聖女は、復讐の魔女となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる