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龍の夢
しおりを挟む会話も無く夕食を済ますと、そのまま風呂に入れ、と言われてバスルームに押し込まれた櫻子。バスルームにスェットを用意しておくと言われ、男物ではあったがウエスト部分が調節出来る様なラフな物を用意されていた。監禁をされているにも関わらず、玄関と窓に部下は居るが、襲われる事はなかった。
「お先にお風呂ありがとうございます」
「いえ………そこの部屋で寝て下さい。疲れたでしょう」
「………あ、あの………」
「何でしょう?」
「本当に、私………あの人、私の祖父なんですか?」
「…………私はそう思ってますが?」
「………私……両親の記憶無いし……ただ名前だけは『櫻子』とだけ………」
「………寝酒でもしますか?……間違えであって欲しいなら、寝た方が良いと思いますけど?…………本当に貴女が我々が探す人なら、お話します」
警告が鳴る。櫻子の中で、今は聞くな、と言われている気がした。
「…………いえ……分かった時聞かせて下さい………関わってはいけないですよね………違っていたら」
「……………いい判断です……保育士さんなら、注意深く子供達を相手しなければならない………子供達だけでなく、我々にも注意深く見ていらっしゃる……それでいい」
「おやすみなさい………お部屋、お借りします」
「…………おやすみなさい」
高嶺は、ドアが閉まるのを確認すると、深いため息が出る。部下達の分も作っていたパスタはもう既に食べ終わっていて、片付け終わったキッチンから、酒を出した。
「お嬢のアパートの様子は?」
「…………あいつらが、躍起になって探しています」
「…………結婚式等挙げようとしやがって……龍虎会に恩でも売るつもりか?」
「…………かもしれませんね」
「若頭の俺の親父を殺し、雪お嬢も手に掛けてか?」
「…………頭……」
高嶺はブランデーグラスを握り締める。パリンッとグラスが割れ、ブランデーと血が床に溢れた。
「頭、手当てを」
「………あぁ………久々にやっちまったな……頼む」
カチャ。
「今、何か割れた音が………」
櫻子も気になったのか部屋からリビングに来る。
「大丈夫です、グラスで少し手を切られただけですから………貴女はおやすみ下さい」
部下が高嶺を手当てしていた。
「手を?大変!手伝います」
「大丈夫ですよ、よくやりますから」
「で、でも……」
「本当に………」
「……………っ………はい……失礼します」
高嶺が殺気を纏わすと、櫻子には気付かれるようだ。
「………血かな?………極道の両親を持った血が分かるかもしれんな……」
「俺は、雪お嬢の事は知りませんが、そんなに似ていらっしゃるんで?」
「似ているな………父親も、俺の記憶違いでなければ、知っている男だ」
「その父親、てのは龍虎会の奴だったんで?」
「…………多分な」
♤♤♤♤♤
『桜!桜!………ねぇ、いい加減機嫌直してよ!!悪かったって反省してるでしょ!』
『反省している顔じゃねぇっす!お嬢』
『だって、あまりにも桜也が可愛くて、連れ回しただけじゃない!』
『いいですか!お嬢!貴女は龍虎会の跡取り!桜也は、俺の息子!まだガキだが、桜也はお嬢の壁になるんです!!貴女が壁になったんですよ!!抗争中だって言ってるのに、ふらふらと出歩いて!学校にさえ、行かせんのも怖いんですからね!!』
『桜太は心配症ねぇ………桜也、お父さん小姑だと思わない?』
ガバッ!!
「ゆ、夢か………」
高嶺が幼かった時に父親と雪とのやり取りを記憶した夢。高嶺がまだ5歳ぐらいの時の夢だ。年上の高校生ぐらいだった跡取り娘の雪のボディーガードだった高嶺の父、桜太。極道の父を嫌い、母は息子を産んで家を出た。まだ父親は20代前半だった筈。そんな父親に恋心を募らせていたのが雪だった。だが当時、抗争が激化し、高嶺の父親は亡くなる。雪はその後、極道を避け家を出て行った。
「お嬢…………貴女は今何処に………」
高嶺には気になる事だった。雪と高嶺との関係や雪は子供を産んでいたのか、と。26歳の櫻子。雪は高校を中退し家を出たのが30年は前。生きていたら雪は47歳。産んでいるなら21歳だろう。なら高校中退した17歳から4年、何があったのかは分からない。四方八方探してみたが見つからなかったのだ。何処に居るのか分からないまま、30年は長い。
ソファで眠っていた高嶺は、起きてカーテンを開ける。ネオンがまだ煌々と着いている街中で想いを馳せた高嶺だった。
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