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結婚式迄あと3ヶ月

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 ナターシャは、リュカの仕事を手伝う様になり、主に書類の早急か否かの判断を聞きながら、仕分けをしている。
 それが捗るのか、大分時間に余裕が出来たようだ。

「今日だっけ、ウエディングドレスの仮縫い。」
「はい、午後からお義母様と母も同席する予定になっております。」

 リュカもナターシャと過ごせるだけあり、終始ご機嫌だった。
 セシルはリュカのご機嫌の良さで仕事が捗るので、文句も無い。

「俺も見たい……。」
「仮縫いですよ?」
「殿下、脱がしたい、の言い間違えですか?」
「何故聞き間違えるんだ?」
「殿下の事なので、仮縫いでもこのままなだれ込みそうだな、と。」
「お、お兄様………。」

 ナターシャはセシルの仕事振りを知らず、リュカの手伝いをする様になり、初めて知る。
 冷静沈着の兄は淡々と仕事をすると思っていたが、チクチクとストレスをリュカに当たっているように見える。

「そうだ、来週にまた新しい令嬢が皇子宮に入るから、教育係を頼むかもしれない。」
「あら、許婚の令嬢の1人ですか?」
「トリスタン公国の公女で、何度かお会いした事はあるんだけど………。」
「どんな方ですの?」
「………あのお転婆公女ですか……。」

 リュカとセシルは気難しい顔をする。

「タイタスと敬遠の仲でね………。彼女はどうもトーマスに気がありそうだったんだが、彼女がトーマスに近付くと、タイタスとよく喧嘩ばかりしてね………何故父上が彼女を妃候補に考えたか分からん。」
(…………トーマス殿下を好き?)
「ナターシャ?如何かした?」
「いえ、楽しみですわ。」

 午後になり、皇太子邸に戻ると、マネキンに着せた純白のウエディングドレスが用意してあった。
 Aラインの裾がとても長く、背中は腰迄レースで編み込まれ、美しい白薔薇の刺繍が施された布で出来ている。

「まぁ、素敵!!」
「ナターシャ様!ですよね!!でもこれからサイズの微調整が必要なので、もっと素敵になりますよ!」
「失礼致します、ウィンストン公爵夫人がお見えになりました。」
「お母様………お久しぶりでございます。」
「ナターシャ、今日は楽しみにしていたのよ。」
「さぁ、ナターシャ様お着替えなさって下さい。その後ドレスに合わせるジュエリーも、決める事になっておりますから。」

 ライアに急かされウエディングドレスに着替えていると、皇妃が遅れてやって来た。

「遅くなってしまって申し訳ありませんわ、エマ様、ナターシャ妃。」
「皇妃様、ご機嫌麗しゅうございます。」
「ご機嫌よう。エマ様、昔の様に名前は言ってくれないのかしら?」

 この2人、実は幼馴染。
 侯爵家の出自の2人は最後迄、当時の皇太子の妃候補になっていたが、ナターシャの父、ウィンストン公爵とエマは恋に落ち、妃候補から外れ、皇妃が選ばれた。

「宜しいのですか?侍女達の目もあるのですよ?」
「気にしないわ、わたくしはエマと昔の様に話がしたいもの。あなた達は内緒にしてね。」

 侍女達は皇妃の気さくな言葉使いに驚きはしたが頷いた。
 
「分かったわ、ユリア。」
「昔、冗談半分に言ってたわね、わたくし達が結婚したら、子供達を結婚させよう、て。」
「言ってたわ………まさか実現するなんて……皇帝陛下が、ナターシャをリュカ殿下の許婚に、と言って頂かなかったら、こうならなかったわ。」
「わたくしの子は皇子ばかりだったし、あなたも息子2人だったし。」

 皇妃とエマが談話をしていると、ナターシャが着替え終え、2人の前に出てくる。

「お友達だったのですね。」
「まぁ、ナターシャ妃!なんて美しいのでしょう。」
「…………育てて良かった……。」

 エマは涙ぐむ。

「お母様!まだ結婚はもう少し先ですよ?」
「エマ、ナターシャ妃はわたくし達の娘よ。それは変わらないわ。」
「…………そうね、ユリア……。」

 ドレスのサイズ調整をし、ティアラやイヤリング、ネックレスを選ぶ。
 ああでもない、こうでもない、と母親達は揉めていたが、これはこれで楽しかったナターシャだった。
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