私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

タイタスの落ち込み

　タイタスは落ち込み、トボトボと歩いていた。

「タイタス？どうした？こんな所で何してる。」

　声が掛かり、顔を上げて見渡すタイタスは、いつの間にか王城に来ていて、リュカの執務室の近く迄来ていた。

「リュカ……兄上……。」
「どうした？タイタス。今日の勉強は終わったのか？」
「…………。」
「今日だろ？」
「うん………。」
「執務室で聞くからおいで。」

　落ち込み度が酷いので、気になったリュカ。
　執務室にはセシルが居るが、内容によっては空気を読み、部屋を出るだろう。

「どうしたんだ？」
「ナターシャに拒まれた。」

　チラっとセシルを見たタイタスだが、セシルは出ようとしない。
　妹の事だ、他言無用にする筈。

「セシルは気にするな、ナターシャの兄上だから。」
「………あ、そうだったっけ。」
「で？」
「俺が試験問題を作って、ナターシャに解かせたんだけど……。」
「うん。」
「300問中、間違え14問………。」
「へぇ～、凄いじゃないか。」
「凄いもんじゃない！凄く捻くれた問題ばかりにしたんだ！でも完全に間違えてる訳じゃなく、誤字だったり、数字の微妙の間違えだったり、凡ミスで……。」
「凡ミス？」
「俺………間違えてたら間違えてた数だけ、ナターシャにお願い事しようとして、わざと難しくしたのに、なんか探られてるような答え方されてるんじゃないか、て。」
「わざとでしょうね。」
「セシル？」

　黙って聞いていたセシルが、タイタスに言った。

「凡ミスをしない妹です。問題は把握した上で、タイタス殿下の動きと表情を見ていたと思いますよ。始める前に何か仰ったのでは？ナターシャに。」
「………言った。」
「何を？」
「間違えたらお願い聞いて、て。」
「最初に言ったのか？」
「うん。」
「で、何を？お願いしたんだ？」
「キスさせて………て。」

　リュカとセシルは、笑いを堪える。

「それで、拒まれた、と？」
「うん。」
「タイタス………口説く前の更に前が問題だな。女性の気持ちを考えてない。」

　タイタスの肩を叩き、リュカは言う。

「間違えたから、間違えてた分だけお願いをする？先ずは答え合わせして、何が間違えていたか教えたりしたか？それにキスをお願いするのにだって、お前のやり方は罰ゲームみたいじゃないか。」
「！！」
「もっと頑張れ、同じ歳だからと言って、男より女の方が精神的に大人なんだ、よく考えろ。」

　タイタスを帰し、再び仕事をするリュカ。

「トーマス殿下には厳しく、タイタス殿下にはお優しいですね。」
「ん？当たり前だ、タイタスでは相手にならん。」
「では、コリン殿下は？率直な方ですし、夜会の時の事もありますよ？」
「………やな事を思い出させやがって。」
「とんでもない、私はいつでも、殿下を応援してますよ。」