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お行儀見習い【リュカ】③
しおりを挟むナターシャは、緊張していた。
先週と違い、皇子達のナターシャへの接触の仕方を変えるという。
朝食時、リュカからの宣言でナターシャの意識を変えようとするらしい。
「今迄通りでは駄目なんですか?わたくしがお返事をしないから………。」
「違うよ、ナターシャ。君は悪くない………ただ、選ばれるならナターシャからの愛が欲しいだけだ……義務ではなくね。」
「!!………わたくしのは、義務だと仰るのですか?」
「……今は、ね。」
トボトボと足取り重く、ピアノのあるサロンに行く。
カチャ。
「やぁ、ナターシャ。」
「殿下………お待たせしてしまい申し訳ありません。」
「いや、大丈夫だよ。おや?気が重そうだ。」
表情が暗いのをリュカが、面白そうに指摘する。
ハッと目を見開き、ナターシャは焦る。
「そ、そんな事………ありま……せん。」
「そうかい?さぁ、今日は演奏をしょうか。ヴァイオリンを用意したよ。ダンスはもう完璧だし、今日はヴァイオリンをしよう。俺がピアノ弾くから。」
「はい。」
リュカはピアノの椅子に座り、傍らにヴァイオリンを構えるナターシャ。
楽譜を開き、リュカが曲を指定する。
「この曲弾けるかい?」
「はい、大丈夫です。」
🎼.•*¨*•.¸¸🎶.•*¨*•.¸¸🎶.•*¨*•.¸¸🎶
暫く引いていた2人だったが……。
「痛っ!」
「ナターシャ?」
「………すいません、リュカ殿下……。弦で指を切ったようです……。」
「え!見せて!」
弦を押さえる左指を切っているナターシャ。
「手入れが不十分だったようだ………血が出ている。手当てしよう。」
「大丈夫です、少しですから………でも、このままヴァイオリンは暫く弾けな……。」
「当たり前だ!!弾かせない!」
「!!」
「……あ、すまない、大きな声を出して……。」
「大丈夫です……。でもどうしますか?今日は……。」
既に出血は止まってはいるが、これではピアノも鍵盤を押さえるので左手は使えない。
リュカは、癖の顎に手を当て考える。
(リュカ殿下の癖………覚えてしまった。)
凛々しく見えるので、思わず見惚れている事に自分で気が付かないナターシャ。
暫くすると、リュカはピアノの椅子に座って、ナターシャを呼ぶ。
「ナターシャ、一緒にピアノを弾こう。俺の右に座って。」
「右ですか?」
長椅子を詰めて、右側を空けて座るリュカは、そこを叩く。
「そう!ナターシャが右手パートを弾いて、俺が左手パート。クロスしなければならない曲は弾かなけば、練習出来るだろ?楽しいと思うが?」
「…………わぁ……やってみたいです!」
「決まり!」
ナターシャの表情もいつの間にか明るい物となり、リュカに笑顔を向けると、右に座る。
しかし、あまり密着するのも恥ずかしいからか、微妙な距離。
その距離をリュカは許す訳もなく、ナターシャの腰を自分に寄せた。
「!!」
「ミスしたらペナルティしようか、ナターシャ。」
顔も近くなるので、リュカはコレをチャンスと捉え、ナターシャの耳元で、色香のある声で囁いた。
ゾクッ。
「ひゃっ!」
「近いから、声も控えた方が煩くないだろ?」
「で、でも近いですっ!殿下……。」
顔も赤らめ、照れてしまうナターシャをリュカは愛しいとしか思えない。
(………よし!いい作戦だったな……これで……。)
「さぁ、曲は………これでいいかな?」
ナターシャを包み込むように、楽譜を捲るリュカ。
勿論、ナターシャを意識させる為の行為。
リュカの赤面は治まらない。
「………は、はい……得意な曲です。」
「タイミング良く弾けたら、俺達の相性もいいんじゃないか、て思えるだろうね、ナターシャ。」
「!!」
「………ふふふ……始めようか。」
(可愛すぎる!!)
♪ .•*¨*•.¸¸♬✧♪ .•*¨*•.¸¸♬✧♪ .•
「あ!すいません!間違えてしまいました。」
リュカに合わせるように弾いていたが、リュカの手元を見過ぎて、鍵盤をミスタッチしてしまったナターシャ。
「じゃ、ペナルティ貰おうかな。」
「何のペナルティなんでしょうか……。」
リュカは嬉しそうだ。
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