私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

皇帝と宰相

　皇子達が皇帝の執務室から去り、宰相と部屋に居た王が宰相に確認をする。

「良いのか？あんな事迄皇子達に言って。」
「殿下方のお気持ちは重々承知しております。その気持ちに気付かない娘も悪いのです。陛下から、娘をリュカ殿下の妃に、と打診があった日から、娘には国母となる為の教育をしてきました。リュカ殿下の妃にならなくとも、娘は王家の役に立ちましょう。元より、娘が5歳の時に、リュカ殿下以外の男に嫁がせる気にはなれなかったのです。勿論、リュカ殿下のお気持ちが無くなれば、諦めも付きますが、今しがたのリュカ殿下のお気持ちが聞けたら、私は何も心配しなくても良い、と安堵致しました。」

　自信満々とも言えるウィンストン公爵。
　今迄、不安だった事が消し去り、自信に満ちていた。

「確かに、リュカからの報告で、教養も学問も申し分ない、と聞いている。………それなら、皇子達に任せていいのだな？」
「はい、陛下のご心配はまだ尽きぬかと思いますが。」

　『ご心配』そう、皇帝の心配は、ナターシャに恋い焦がれる4人の皇子。
　もし、ナターシャに選ばれなかった皇子はどうするのか、と心配は絶えないのだ。

「問題はトーマスとタイタスだ。」
「トーマス殿下とタイタス殿下ですか？」
「リュカが、ナターシャ嬢と結婚したい、と強請り、直ぐに宰相に話をして許婚とした………だが、何年かしてトーマスとタイタスも、と言ったが、実は半年も経っていない……。リュカの許婚だから、と幼いトーマスとタイタスに言ったところで、聞く耳を持たないと思い、トーマスとタイタスには大人になったら、と誤魔化してはいたのだが、リュカが言ってしまってな………。ナターシャ嬢は自分の許婚だと……。兄弟仲が良い4人だ。誰か諦めてくれるだろうと、思っていたのだが………。まさかコリン迄も………。」
「そうでしたか………。」
「コリンにはアードラの王女はどうか、と思っておったのに……。」

　隣国アードラ、レングストンと並ぶ大国で、コリンと同じ歳の王子と2つ下の王女が居る。

「ナターシャ嬢が誰かを選んだら、アードラの王女が留学と称し、コリンと会わせようと思っていたのだが……。上の2人は失恋でそれどころでは無いだろうと思っておったのに……。」
「それはまたいい縁談ではありますが、まだ早いかと………。」
「そうだな。アードラには悪いがもう少し先に延ばすか……。」

　ナターシャが誰を選ぶかにも、皇子達の運命が変わるのだ。
　時期は見極めなければならない。

「来週は、王家主催の夜会がある。ナターシャ嬢も出る予定なのだろう？」
「はい、今回は出させようかと。」
「それは楽しみだ。」

　14歳から出席出来る王家主催の夜会。
　ナターシャはお行儀見習いがある為、そちらを優先させていた。
　今回は、ナターシャも出たい、と言っていたのもあり参加する事になっていたのだ。
　お茶会の華だったナターシャ。
　夜会の華になるのか否か……。