91 / 102
尊敬する妃達と再会
しおりを挟むレングストン王宮。
アリシアとカイルは謁見の間に通された。
「失礼します。」
「カイル!久しぶりだな!」
「リュカで………いえ、陛下ご無沙汰しておりました。」
謁見の間には皇帝になったリュカリオン、皇妃ナターシャ、第三皇子タイタス、タイタスの妃アニース、第四皇子コリンが待っていた。
リュカリオンとナターシャの間に皇子が産まれ、リュカリオンの両親は退位し、王都郊外に邸を構え、ひっそりと暮らしている。
タイタスとアニースも子にも恵まれ幸せそうだ。
大きなお腹をした、アリシアの記憶に無い表情をみせている。
トーマスとラメイラはウェールズ領主になり、王都には住んでおらず、謁見の間には来ては居なかった。
「カイル、とうとう根負けか?」
リュカリオンは、アリシアに目線を配り、カイルを揶揄う。
「ええ、押し掛けられたので。」
「らしいな。」
カイルもだが、一点に視線がアリシアに注目される。
アリシアに暴露させようという目線が刺さる。
「は!?…………だって、手紙一つも寄越さないんですよ、この人!ウィンストン領の邸に行って確かめなきゃ、て!」
「それでボサボサ頭に髭生えた男が居た訳だ、そのウィンストン領の邸に。」
「な、何で陛下がご存知なんですか!?」
アリシアは自分しか知らないと思っていたのだが、カイルは苦笑いしている。
「カイルは部屋に篭もるとそうだから。集中してた方がカイルには良かったんだろうな、この5年は。」
「それで?以前私の結婚式から大分髪が伸びてるが、その時期から篭ってたのか?8ヶ月から9ヶ月ぐらい?新薬が次々と出来てくるから、篭ってたんだろ。」
「あ………兄上………勘弁してくれ。」
アリシアを揶揄うのではなく、カイルをリュカリオンとセシルは揶揄った。
「リュカ、セシルお兄様、アリシア様が絶句してますわ。」
「私は、なかなか面白いもの見させてもらっているが?」
ナターシャとアニースはくすくすと笑っている。
「ナターシャお姉様、アニースお姉様……すっごい、モサモサした髪だったんですよ、しかもカーテンで光を遮って、カイルかどうか一瞬分かりませんでしたよ。」
「……………アリシア様と義妹になるんですわよね……わたくし、アリシア様を義姉様とお呼びしなければ………。」
「あぁ、そうなるな。」
「まぁ、俺の妻になるからな。」
ナターシャがしみじみと呟くと、隣に居るリュカリオンやカイルが頷く。
「え!私嫌です!ナターシャお姉様は、今でも憧れる存在ですから!事実は義理姉ですが、私年下ですし!これからも名前で呼んで欲しいし、私ナターシャお姉様、と呼び続けますからね!」
「アリシア様がそれで良いなら………。」
「呼び慣れてるしな………それで?結婚式の予定は?出席するから、早めに決めてくれ。」
「そうそう、カイルはアリシアを僕から奪ってったんだから、行かなきゃね。アリシアがこんなに綺麗になるなら、もっと引き止めておけば良かったよ。」
リュカリオンから結婚式の予定を聞かれると、コリンも祝いたいとばかりに言った。
そういうコリンも今は別の妃候補の令嬢と婚約間近とアリシアはアルフレッドからは聞いている。
「おい、コリン。そんな事言ったら今お前が夢中になっている伯爵令嬢にバラすぞ?」
「やめてよね!タイタス兄上!今大事な時期なんだから!」
コリンはどうやらその令嬢との結婚を前向きに考えているらしい。
「では、コリン殿下の結婚式より前にしなければならないですね、令嬢との結婚に集中して頂かなければ………今の殿下のお言葉は、アリシアに迫られ兼ねないので。」
「過去だよ!安心してよ!………でも本当に綺麗になったよねぇ、アリシア。」
「…………コリン……。」
リュカリオンとタイタスは仕方ない、という顔をコリンに向ける。
ナターシャもセシルもアニースも思い当たる節があるようで、苦笑いをしている。
アリシアに振られてから、コリンは手当たり次第に令嬢達に口説いていたらしい。
「ところで、ウィンストン領には直ぐに帰るのか?」
「そうですね、出来ればそうしたいな、と。まぁ、両親も兄も居ますからね一泊はしようかと。」
「じゃあ、久しぶりに今夜は飲もう。トーマスも少し遅れるだろうが、ラメイラと王都に向かってるから、二泊な。」
「トーマスも来るんですか?」
「ああ、連絡してある。祝いたいんじゃないか?トーマスもラメイラだってな。」
その夜、トーマスとラメイラも到着し、今は王族居住地のタイタス邸に集まり、酒を酌み交わしたのだった。
0
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
ナイショのお見合いは、甘くて危険な恋の駆け引き!
むらさ樹
恋愛
娘を嫁に出そうと、お見合い写真を送り続けている母
それに対し、心に決めた男性と同棲中の娘
「最後にこのお見合いをしてダメだったら、お母さんもう諦めるから」
「本当!?」
と、いう事情で
恋人には内緒でお見合いに応じた娘
相川 優
ところが、お見合い相手の男性はなんと年商3億の社長さん
「私の事なんて早く捨てちゃって下さい!」
「捨てるだなんて、まさか。
こんなかわいい子猫ちゃん、誰にもあげないよ」
彼の甘く優しい言動と、優への強引な愛に、
なかなか縁を切る事ができず…
ふたりの馴れ初めは、
“3億円の強盗犯と人質の私!?”(と、“その後のふたり♡”)
を、どうぞご覧ください(^^)
決めたのはあなたでしょう?
みおな
恋愛
ずっと好きだった人がいた。
だけど、その人は私の気持ちに応えてくれなかった。
どれだけ求めても手に入らないなら、とやっと全てを捨てる決心がつきました。
なのに、今さら好きなのは私だと?
捨てたのはあなたでしょう。
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
子持ち主婦がメイドイビリ好きの悪役令嬢に転生して育児スキルをフル活用したら、乙女ゲームの世界が変わりました
あさひな
ファンタジー
二児の子供がいるワーキングマザーの私。仕事、家事、育児に忙殺され、すっかりくたびれた中年女になり果てていた私は、ある日事故により異世界転生を果たす。
転生先は、前世とは縁遠い公爵令嬢「イザベル・フォン・アルノー」だったが……まさかの乙女ゲームの悪役令嬢!?
しかも乙女ゲームの内容が全く思い出せないなんて、あんまりでしょ!!
破滅フラグ(攻略対象者)から逃げるために修道院に逃げ込んだら、子供達の扱いに慣れているからと孤児達の世話役を任命されました。
そりゃあ、前世は二児の母親だったので、育児は身に染み付いてますが、まさかそれがチートになるなんて!
しかも育児知識をフル活用していたら、なんだか王太子に気に入られて婚約者に選ばれてしまいました。
攻略対象者から逃げるはずが、こんな事になるなんて……!
「貴女の心は、美しい」
「ベルは、僕だけの義妹」
「この力を、君に捧げる」
王太子や他の攻略対象者から執着されたり溺愛されながら、私は現世の運命に飲み込まれて行くーー。
※なろう(現在非公開)とカクヨムで一部掲載中
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜
見丘ユタ
恋愛
意地悪な双子の姉に聖女迫害の罪をなすりつけられた伯爵令嬢リーゼロッテは、罰として追放同然の扱いを受け、偏屈な辺境伯ユリウスの家事使用人として過ごすことになる。
ユリウスに仕えた使用人は、十日もたずに次々と辞めさせられるという噂に、家族や婚約者に捨てられ他に行き場のない彼女は戦々恐々とするが……彼女を出迎えたのは自称当主の少年だった。
想像とは全く違う毎日にリーゼロッテは戸惑う。「なんだか大切にされていませんか……?」と。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる