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尊敬する妃達と再会

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 レングストン王宮。
 アリシアとカイルは謁見の間に通された。

「失礼します。」
「カイル!久しぶりだな!」
「リュカで………いえ、陛下ご無沙汰しておりました。」

 謁見の間には皇帝になったリュカリオン、皇妃ナターシャ、第三皇子タイタス、タイタスの妃アニース、第四皇子コリンが待っていた。
 リュカリオンとナターシャの間に皇子が産まれ、リュカリオンの両親は退位し、王都郊外に邸を構え、ひっそりと暮らしている。
 タイタスとアニースも子にも恵まれ幸せそうだ。
 大きなお腹をした、アリシアの記憶に無い表情をみせている。
 トーマスとラメイラはウェールズ領主になり、王都には住んでおらず、謁見の間には来ては居なかった。

「カイル、とうとう根負けか?」

 リュカリオンは、アリシアに目線を配り、カイルを揶揄う。

「ええ、押し掛けられたので。」
「らしいな。」

 カイルもだが、一点に視線がアリシアに注目される。
 アリシアに暴露させようという目線が刺さる。

「は!?…………だって、手紙一つも寄越さないんですよ、この人!ウィンストン領の邸に行って確かめなきゃ、て!」
「それでボサボサ頭に髭生えた男が居た訳だ、そのウィンストン領の邸に。」
「な、何で陛下がご存知なんですか!?」

 アリシアは自分しか知らないと思っていたのだが、カイルは苦笑いしている。

「カイルは部屋に篭もるとそうだから。集中してた方がカイルには良かったんだろうな、この5年は。」
「それで?以前私の結婚式から大分髪が伸びてるが、その時期から篭ってたのか?8ヶ月から9ヶ月ぐらい?新薬が次々と出来てくるから、篭ってたんだろ。」
「あ………兄上………勘弁してくれ。」

 アリシアを揶揄うのではなく、カイルをリュカリオンとセシルは揶揄った。

「リュカ、セシルお兄様、アリシア様が絶句してますわ。」
「私は、なかなか面白いもの見させてもらっているが?」

 ナターシャとアニースはくすくすと笑っている。

「ナターシャお姉様、アニースお姉様……すっごい、モサモサした髪だったんですよ、しかもカーテンで光を遮って、カイルかどうか一瞬分かりませんでしたよ。」
「……………アリシア様と義妹になるんですわよね……わたくし、アリシア様を義姉様とお呼びしなければ………。」
「あぁ、そうなるな。」
「まぁ、俺の妻になるからな。」

 ナターシャがしみじみと呟くと、隣に居るリュカリオンやカイルが頷く。
 
「え!私嫌です!ナターシャお姉様は、今でも憧れる存在ですから!事実は義理姉ですが、私年下ですし!これからも名前で呼んで欲しいし、私ナターシャお姉様、と呼び続けますからね!」
「アリシア様がそれで良いなら………。」
「呼び慣れてるしな………それで?結婚式の予定は?出席するから、早めに決めてくれ。」
「そうそう、カイルはアリシアを僕から奪ってったんだから、行かなきゃね。アリシアがこんなに綺麗になるなら、もっと引き止めておけば良かったよ。」

 リュカリオンから結婚式の予定を聞かれると、コリンも祝いたいとばかりに言った。
 そういうコリンも今は別の妃候補の令嬢と婚約間近とアリシアはアルフレッドからは聞いている。
 
「おい、コリン。そんな事言ったら今お前が夢中になっている伯爵令嬢にバラすぞ?」
「やめてよね!タイタス兄上!今大事な時期なんだから!」

 コリンはどうやらその令嬢との結婚を前向きに考えているらしい。

「では、コリン殿下の結婚式より前にしなければならないですね、令嬢との結婚に集中して頂かなければ………今の殿下のお言葉は、アリシアに迫られ兼ねないので。」
「過去だよ!安心してよ!………でも本当に綺麗になったよねぇ、アリシア。」
「…………コリン……。」

 リュカリオンとタイタスは仕方ない、という顔をコリンに向ける。
 ナターシャもセシルもアニースも思い当たる節があるようで、苦笑いをしている。
 アリシアに振られてから、コリンは手当たり次第に令嬢達に口説いていたらしい。
 
「ところで、ウィンストン領には直ぐに帰るのか?」
「そうですね、出来ればそうしたいな、と。まぁ、両親も兄も居ますからね一泊はしようかと。」
「じゃあ、久しぶりに今夜は飲もう。トーマスも少し遅れるだろうが、ラメイラと王都に向かってるから、二泊な。」
「トーマスも来るんですか?」
「ああ、連絡してある。祝いたいんじゃないか?トーマスもラメイラだってな。」

 その夜、トーマスとラメイラも到着し、今は王族居住地のタイタス邸に集まり、酒を酌み交わしたのだった。
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