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アリシア無視の婚約決定

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 各国とアードラの話し合いは終わり、吸収合併された国とそうでない国交で留まった国に分かれはしたが、無事に平和条約が結ばれた。

「終ったな。」
「そうだな、思わず拾いもんも出来たしな。アードラの東部諸国との国交も取付けたオマケもあるし、陛下も喜ぶんじゃね?」
「あぁ、特にマリージョな。」
「ホント、良い土らしいぜ。部下がレングストンの陶器職人に見せたら、購入したい、これで食器を作りたい、て願い出たぐらいだったし、マリージョは潤う筈だ。」
「マリージョ王も快諾したしな。」

 今回の仕事の結果を満足そうに話していたトーマスとカイル。
 彼らの帰路は近い。

「カイル殿。」
「…………アルフレッド王子、如何しました?」

 アルフレッドからトーマスではなく、カイルに声が掛かる。

「少しお話したいのですが………アリシアの事で。」
「…………はい。」
「カイル、俺は帰る準備を部屋でして来るから。」
「あ、あぁ。」

 トーマスは察知し、客間に戻って行った。

「何でしょう、アルフレッド王子。」
「…………妹をあなたに託したいのです。父上も母上も、あなたには充分良くして頂いた。感謝してもしきれないのです。」
「アルフレッド王子………良いんですか?私は王族でもなければ、長男でもない、将来領主止まりの男ですよ?」
「でも、あなたは王族の血筋ですよね………いや、血筋だろうが関係ない。私達があなたに掛けたのです。妹を幸せに出来る人だと。」
「…………こんな風貌の男なんて信用してはいけませんよ、王子。」
「でも、あなたの部下や派遣して頂いた医師達は、あなたを尊敬し、決して悪く言わなかった。本当なら、このままアードラに引き留めたいぐらいの人なんですよ、あなたは………でも、そんな事したら多分アリシアから逃げるでしょ?」
「……………如何してそう思います?」
「トーマス殿下とのやり取りを見てです。」
「……………。」
「トーマス殿下と対等で接するあなたは、アードラでは耐えられない。あなたは君主を選ぶ人だ。恐らく、父上や僕は選ばれないでしょう。父上はともかく、僕はまだ未熟でロバートからも今回の事でいっぱい怒られました。それと同時にあなたの自慢話をするんです。僕にはあなたを扱えない。でもアリシアなら扱える………これは僕の我儘なんですが、アリシアとあなたが結婚すれば、僕はあなたと家族になるでしょ?ロバートを通じてあなたを知って、目標にしたいと思った。そしてアリシアを通じて、また僕にいろいろ教えて欲しいんです。どうか………近くにあなたという存在を感じさせて下さい。アリシアが16歳になったら、必ずあなたに嫁がせますから!心変わりなんて絶対にさせません!」

 アルフレッドはカイルに頭を下げる。
 結婚したら、アルフレッドはカイルの義兄になる立場なのだが。
 まるでアルフレッドがカイルに恋をしたのでは、と思うような告白だった。

「アルフレッド王子………。」

 カイルは呆れ気味で失礼だと思いつつ溜息を付いた。

「確かに、私はアリシア王女を愛しく思っています。でも、私には待つ自信が無い。これでも公爵家の息子ですし、父から縁談を持ち込まれ否応無しに結婚させられる可能性だってあります。」
「カイル、宰相からは了承貰ってるぞ。」
「!!トーマス!!盗み聞きは趣味悪いぞ!!」

 部屋で荷物をまとめている筈のトーマスは盗み聞きしていた。

「因みに父上も兄上も了承した、と言っていたと思うが?」
「………………ア、アルフレッド王子………1年です。」
「?」
「アリシアが16歳になり17歳になる迄、音沙汰が無ければ、私はアリシアを諦めます。それで良いなら、アリシアが16歳になったら迎え入れましょう。」
「カイル殿!!ありがとうございます!!コリンに嫁がせたかったけど、どうしてもコリンと違う気がしてて!良かった!父上に早速報告しなきゃ!失礼します!」

 真っ赤な顔したカイルがアルフレッドに取り残されていた。

「おめっとさん。」
「……………う、うるせ………17歳迄は待たん。」
「大丈夫だろ、アリシアは絶対に行動すると思うぞ。」

 カイルもそう思っていたが、確信等出来なかった。
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