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いざ、王宮へ
しおりを挟むラメイラが体調不良になっていたのも知らず、トーマスはカイルとの打ち合わせも終わり、王宮に入った。
「さぁて、ロバート伝にアドラード王とアルフレッド王子が動いてくれる筈だから、俺とカイルはあの2人を曳き釣り下ろすか。」
「あぁ、ナバーロはロバートが部下達と連れてくる筈。」
パキパキッと、カイルは指の関節を鳴らし、気合いを入れると、アードラの王宮へトーマスと中へ進んだ。
以前と同じ応接室に通され、暫く待った2人。
一方、呼び出されたアマレスは、私室で側妃(男)と情事の真っ最中だった。
「失礼致します!只今、レングストンからアドラード王の見舞いで、第二皇子トーマス殿下と、側近のカイル・ウィンストン様がおみえになりました。」
「何!?カイルが!!」
「は、はい。」
「……………ふふふ……仕方ない……相手をしてやろう………。」
「…………アマレス様?」
「お前は部屋に戻れ、もう用は無い。」
側妃(男)を私室から追い出し、侍従達にベッドのシーツを変えさせる指示を出したアマレスは、急ぎカイルが待つ応接室へ歩く。
「カイルめ………今度こそ逃がさぬ。」
応接室へアマレスがやって来ると、アマレスにとっては初めて見るカイルの姿に仰天する。
以前の印象はなよなよとした、気弱な雰囲気のカイルだったのが、ソファに座るトーマスの後で威厳たる態度の青年のカイルとして立っていたからである。
「アマレス宰相、ご無沙汰しております。本日は我が君主、レングストン第二皇子トーマス殿下と共に、アドラード王へ御見舞に参りました。」
カイルが、アマレスに毅然とした態度で挨拶をすると、トーマスは立ち上がり、アマレスに握手を求めた。
「お久しぶりでございます。3、4年振りになるでしょうか、アマレス宰相。私を覚えていらっしゃいますか?トーマスでございます。」
「…………え、えぇ、覚えてますとも、知的な幼かったトーマス殿下が、先日ご結婚されご立派になられ、我が国からも式に参列したかったのですが、アードラ近隣諸国の内戦が落ち着かず、祝の品だけになってしまい、申し訳ありませんでしたな。」
チラチラとトーマスから目線を反らし、カイルをチラ見するアマレスに、トーマスもカイルも笑いを堪えた。
カイルに執着心を見せるアマレス。
「ご無沙汰しています、アマレス宰相。先日はなかなかお付き合い出来ず、レングストンに帰国する事になってしまい、申し訳ありませんでした。」
「………カイル……今回はゆっくり出来るのか?ん?トーマス殿下が結婚されたのだ、今回はゆっくり出来るのではないか?」
「いえ、今回もゆっくりは…………。」
「カイル、以前と印象が違うが、トーマス殿下の前だから、作っておるのか?」
カイルの猫被りを見破れないアマレスに対し、カイルは平然とした態度だ。
アマレスはトーマスをすり抜け、カイルに近付くと手を伸ばした。
しかし、カイルはその手を取る事もせず、カイルはアマレスに一礼する。
「アマレス宰相、アドラード王を見舞わせて下さい。今回の来訪はアドラード王の見舞いだけではないので…………。」
「…………つ、罪なヤツめ…………そんな顔をしても………。」
カイルはアマレスに微笑むと、アマレスは益々デレデレする。
その光景をトーマスは笑いを堪えるのに必死だった。
「アマレス宰相、見舞いが終わりましたら、またお時間頂けますか?私も含めて………。」
「………トーマス殿下………も………分かりました。時間を取りましょう。」
アマレスはトーマスはタイプではない。
カイルと2人きりでないのが残念でならない程の顔を見せる。
それで国の宰相なのが不思議でならない。
力量の差があり過ぎなのだろう、レングストン皇国の宰相、ウィンストン公爵と。
案内されたアドラードの私室にトーマスとカイルは着いたのだが、アマレスも付いて来ると言い、それは予想外だった。
アドラードと会い、更迭を言い渡す次期を話し合う予定だったのだ。
ロバートは今、アルフレッドとその話をしている筈で、アドラードの私室で会う予定だったのだが、アマレスが居ては邪魔になる。
(どうする?トーマス。)
(…………邪魔……だな。)
(………仕方ねぇなぁ………前の手は乗らねぇよなぁ………。)
カイルは前髪を掻き揚げ艶っぽい雰囲気を醸し出す。
オーラを変え、アマレスを見るカイル。
「アマレス宰相。」
「………おぉ………お主、何と艶のある顔を………。」
「実は、我が父レングストン公爵より個人的にアマレス宰相へ土産があるのです。同じ宰相同士、レングストンで収穫した葡萄で作った最高級のワインをお持ちしております。後程私がアマレス宰相にお持ち致しますので、お待ち頂けますか?」
「………おぉ………最高級のワインか!よ、良かろう、2人で飲もうじゃないか!待っておるぞ!」
「夜にお持ち致しますよ。」
アマレスは欲に弱いのを知っているからこそのカイルの言葉。
暫くは、時間稼ぎが出来るように、夜を強調し、アマレスを遠ざけたたカイル。
アマレスはさっさと私室に戻り、トーマスとカイルから離れて行った。
「コレか…………クククッ。」
「前は、軟弱美少年風にしたぞ。」
「で、今は?」
「…………強いて言えば男娼風?」
「それで、最高級ワインは持ってきてあったのか?」
「ある訳ねぇじゃん………デマだよデマ!プライド高いあの男なら、同じ宰相の地位の親父から、て言えば、俺が比べるに値するかどうかを見極めている、て思わせればいい、て含みで、ワインをチラつかせて釣っただけ。餌はねぇよ、俺もワインもな。」
「クククッ………やっぱりお前は宰相の息子だな。」
「それ褒めてんの?嫌味?」
嫌そうな顔するカイルに、面白い物が見れたトーマスは笑っていた。
「褒めてんだよ。セシルとは違う宰相のやり口を見た気がする………駄目だ……笑いが………。」
「何だよやり口、て。」
「いや、以前………宰相のロレイラを事情聴取の仕方を見たんだが、相手の弱みや欲を上手く利用してたからさ……。」
「そりゃ、そうさ…………そう教えられたからな。似て当たり前。兄貴のがもっと上手いぜ?俺よりな……日々、リュカ殿下相手に試してやがるから。」
「……………兄上が気の毒に思うよ……。」
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