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外務大臣拘束
しおりを挟むアードラの隣国マリージョ王宮。
「さぁ、今日は良い鴨肉を取寄せましたぞ、陛下、王妃。」
「ほぅ………これは素晴らしいものをありがたい。」
「本当に………アードラの宰相様のご厚意はありがたいですわ。」
「いやぁ、何とんでもない。私共アードラに隣接する小国をまとめる為に、私がマリージョに身を寄せておりますそのお礼に過ぎません。少々値は張りますが、レングストンのワインはこの鴨と良く合いますので、ワインもご用意させて頂きましたよ。」
マリージョの王と王妃を相手に、アードラの外務大臣、ナバーロ侯爵は豪遊をさせていた。
産業も名産も乏しいマリージョにとって、鴨肉やワインは豪華な物だった。
森に囲まれ、林業や鉱石発掘ぐらいの働き口が無い国民は、その日その日の収入や自給自足で生活をしており、貧しい国だった。
狩りは上流階級の遊びに過ぎない、という認識の国のマリージョ。
貧しい国の為、貴族も狩りをするより、仕事に追われる毎日なのだ。
その生活の中に、近隣諸国が戦火に巻き込まれた、と知ったマリージョは国を滅亡する訳にはいかず、困っていた頃にアードラから使者としてナバーロがやって来たのである。
『近隣諸国で暴動を鎮圧する為にやって来ました。アードラにお任せを。』
と吐かしたのである。
それをいとも簡単に信じてしまったマリージョ王は、ナバーロを受け入れてしまったのだ。
アードラが居てくれているから、マリージョは無事なのだ、と。
そして、ナバーロはマリージョ内で、王や王妃、貴族達をもてなすだけもてなし、諸外国では傍若無人に侵略を続けたのである。
その中でナバーロを拘束しようとするカイルの部下達は秘密裏でマリージョに潜り込んでいた。
「王宮内から出ない限り、無理だな。」
「アードラの兵士に化け、諸外国に連れ出し拉致するか。」
「そうだな。マリージョ王や王妃は、完全に外務大臣を信頼してる………その事もカイル様に報告をしておこう。」
マリージョ王や王妃、ナバーロもレングストンが動いているのは知らない様子。
「レングストンは裕福なのですね………こんなに美味しいワインを作れる技術もあって羨ましい限り……。」
「王妃よ、このマリージョで良質なぶどうは取れぬ………ワインが飲みたいのなら、輸入をしなければならん……しかし、我々マリージョはレングストンとは国交も無い。相手にもしてくれぬよ。」
「レングストンのワインは、アードラ経由でお持ちしますよ。国交しておりますのでね………ただ、関税が掛かりますぞ?今日のは私のコレクションのワインをお持ちしただけですからな。」
「……………う、うむ………。」
高級な物を振る舞い、金を落とすナバーロだが、ナバーロがマリージョに居る間だけの話だと匂わせる。
アドラード王の考えではなく、アマレスとナバーロの考えに過ぎない行為。
「アードラの王は、マリージョと国交をするおつもりなのですか?」
「勿論ですよ。アドラード王が只今危篤状態ですからな。次の王は弟君のアマレス様がその予定にしております。現国王は産業も名産も無い国との国交はする気はありませんからな。」
「…………早く救済して欲しいですわ。」
「アマレス様が王になれば必ずや。クーデターを起こす訳にはいきませんからな、諸外国が荒れている中、アードラが荒れては共倒れになりますしね。」
ナバーロは自分の事を正当化をし、マリージョ王を騙していた。
「失礼致します。ナバーロ侯爵、宜しいでしょうか………緊急事態が。」
「何だ?」
「アードラで暴動が起きております。アマレス宰相への不信感から。」
「何だと!アドラード王ではなく、アマレス宰相がか!」
「はい。至急アードラにお戻りを、とアマレス宰相から連絡が。」
この兵士はカイルが送り込んだ部下。
これ以上、アドラード王への不信感をマリージョ王に擦り付ける訳にはいかないとの判断だった。
「マリージョ王、急な事で申し訳ありませんが、アマレス様の危機。鎮圧の為にアードラへ戻ろうと思います。」
「まぁ………あちらでもこちらでも争いなんて……。」
「早く制圧をしてきてくれたまえ。我々マリージョは争いを好まん。」
「えぇ、私もですよ。」
ナバーロは食事を終わらせ席を立つと、その部下と共に部屋に戻ると、直ぐに馬車に乗った。
「早くアードラに行くんだ。」
「御意。」
警戒心無く馬車に乗り込む後ろから、部下はナバーロに薬を嗅がす。
「ぐっ…………。」
ドサッ。
「さぁ、運ぶぞ。」
ナバーロ、カイルの部下に気絶させられ、拘束。
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