48 / 102
引き抜き?
しおりを挟むカイルはロバートの言葉の意味を考える。
それはロバートに突き返す言葉をカイルは言わなければならない。
「俺は手伝えるのは、アマレス、外務大臣、第一側妃マルシアの更迭、国交条約の再締結だけだ。」
「…………カイル様!」
「助言は出来るがソレに関しては動けない。俺はレングストンの者だからな…………今回はアマレスが国王になる事はレングストンに良くない事だと思ったからだ。マリージョとの事はレングストンには関係はない………レングストン皇帝陛下が助力しろ、と言わない限りな………。」
「…………そ、そうですよね………。」
落ち込むロバートを見ると、カイルは頭を掻いた。
「トーマスにも聞いてはみるが、一応マリージョの事も調べさせてはいるから、糸口は見えるかもしれない。それをアードラが利用するかどうか、だな。」
「…………カイル様………。」
「そんな落ち込むなよ、お前はアルフレッド王子の片腕になるんだろ?もっと視野を広げろよ。」
「………カイル様はレングストンで宰相になられるのですか?」
ロバートは何気にカイルに問う。
宰相になるかならないか、でアードラに関係ない筈なのだが、カイルは素直に答えた。
「宰相?俺はならない。なるのは兄上のセシルだ。」
「……………で、では、アードラに来て頂く事は可能でしょうか!カイル様なら、アル様の片腕として補助をして頂ける筈!」
「…………それは、お前の意見か?」
「……は、はい……私にはアル様の片腕は荷が重すぎます。」
「悪いが、俺はウィンストン領主になる事が決まっている。アードラに移り住む事は無い。」
「お願いします!アドラード王もアル様もカイル様に感謝しています!それなりの地位も権力も約束して頂ける筈!」
「では、ロバートがそれになればいい。リュカ殿下から聞けば、殿下はロバートの知能、努力する姿勢は一目置いているようだ。王族への忠義さは俺だって感心してるんだぜ?努力を惜しまなきゃ、アルフレッド王子の片腕になれる筈だ。」
「わ、私はアル様の乳兄弟ですが、母は身分が低く………その様な地位には上がれません……。」
「何で?努力してきたろ?ロバートを信頼しているからこそ、アリシアを託されたんじゃないか。アリシアも言ってたぜ?ロバートのアルフレッド王子への忠義心を認めていた。アルフレッド王子への忠義はアドラード王、アードラへの忠義。お前の今回の仕事振りは今の地位は勿体無い、と思ってると思うがな。」
ロバートは脱力し床に座り込む。
自分の仕事振りを見ていてくれた人が居る事が、アリシアに煙たがられても貫き通した事がロバートへの信頼性を培ったのなら、満更悪かった事では無かったと。
「アリシア様にどんなに嫌われようが、アル様から何としてもアリシア様を守れ、と仰せつかりました………私にとってレングストンは未知の国。アードラ内の事は詳しくても、レングストンと国交し、その内容も付き合い方も知らず、皆様には不快だったのも知っていました。だが、アリシア様が嫁ぐ国だと言うならば、アリシア様に嫌われていようが、アードラでのアリシア様の重要性を知ってもらわなければならなかった………アリシア様はレングストンの風土が合ってらっしゃると思っていた頃に、アル様からの手紙でアードラの現状を知り、レングストンにアリシア様はお預けしていいのだ、と本当に安堵したのです。ならば、アードラ国内のいざこざを早く治める為に、カイル様が居てくれたら、と………。」
ロバートはカイルを見上げて、更に続けた。
「私に……………私に出来るでしょうか……。」
「出来るでしょうか、じゃない。出来ると思う事が大事だ。」
ロバートは打ちひしがれる。
そして、大きく肩を震わし、深呼吸するのだった。
0
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
他人のスキルを奪って強くなる。城を抜け出した王子は自由気ままに世界を放浪する
クマクマG
ファンタジー
王城での生活に窮屈さを感じていた第三王子のラベオン・エンシュリアは王城を抜け出すことを企てる。
王族という縛られた身分では体験できなかったであろう経験を経て、人間としても王族としても成長していくラベオン。個性的な仲間と共にダンジョンを探索したり、クエストを達成したり、はたまた他国に行ったりと自由気ままに旅をする。
人や物のステータスを見ることができる『鑑定眼』、あらゆるモノを盗むことができる『栄光の手』、騙すことに特化した『神の噓』を駆使して、強敵にも挑んでいく。ただ、ラベオンは基本的に善人なので、悪用はしません。……多分。
ラベオンが行きつくのは冒険者としての生活なのか、王族としての生活なのか、それとも……。
虐げていた姉を身代わりに嫁がせようとしましたが、やっぱりわたしが結婚することになりました
りつ
恋愛
ミランダは不遇な立場に置かれた異母姉のジュスティーヌを助けるため、わざと我儘な王女――悪女を演じていた。
やがて自分の嫁ぎ先にジュスティーヌを身代わりとして差し出すことを思いつく。結婚相手の国王ディオンならば、きっと姉を幸せにしてくれると思ったから。
しかし姉は初恋の護衛騎士に純潔を捧げてしまい、ミランダが嫁ぐことになる。姉を虐めていた噂のある自分をディオンは嫌悪し、愛さないと思っていたが――
※他サイトにも掲載しています
転生したら倉庫キャラ♀でした。
ともQ
ファンタジー
最高に楽しいオフ会をしよう。
ゲーム内いつものギルドメンバーとの会話中、そんな僕の一言からオフ会の開催が決定された。
どうしても気になってしまうのは中の人、出会う相手は男性?女性? ドキドキしながら迎えたオフ会の当日、そのささやかな夢は未曾有の大天災、隕石の落下により地球が消滅したため無念にも中止となる。
死んで目を覚ますと、僕はMMORPG "オンリー・テイル" の世界に転生していた。
「なんでメインキャラじゃなくて倉庫キャラなの?!」
鍛え上げたキャラクターとは《性別すらも正反対》完全な初期状態からのスタート。
加えて、オンリー・テイルでは不人気と名高い《ユニーク職》、パーティーには完全不向き最凶最悪ジョブ《触術師》であった。
ギルドメンバーも転生していることを祈り、倉庫に貯めまくったレアアイテムとお金、最強ゲーム知識をフルバーストしこの世界を旅することを決意する。
道中、同じプレイヤーの猫耳魔法少女を仲間に入れて冒険ライフ、その旅路はのちに《英雄の軌跡》と称される。
今、オフ会のリベンジを果たすため "オンリー・テイル" の攻略が始まった。
【完結】婚約者と幼馴染があまりにも仲良しなので喜んで身を引きます。
天歌
恋愛
「あーーん!ダンテェ!ちょっと聞いてよっ!」
甘えた声でそう言いながら来たかと思えば、私の婚約者ダンテに寄り添うこの女性は、ダンテの幼馴染アリエラ様。
「ちょ、ちょっとアリエラ…。シャティアが見ているぞ」
ダンテはアリエラ様を軽く手で制止しつつも、私の方をチラチラと見ながら満更でも無いようだ。
「あ、シャティア様もいたんですね〜。そんな事よりもダンテッ…あのね…」
この距離で私が見えなければ医者を全力でお勧めしたい。
そして完全に2人の世界に入っていく婚約者とその幼馴染…。
いつもこうなのだ。
いつも私がダンテと過ごしていると必ずと言って良いほどアリエラ様が現れ2人の世界へ旅立たれる。
私も想い合う2人を引き離すような悪女ではありませんよ?
喜んで、身を引かせていただきます!
短編予定です。
設定緩いかもしれません。お許しください。
感想欄、返す自信が無く閉じています
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
勇者様はキヨラカで
瀬織董李
ファンタジー
異世界に召還されてしまった私のハナシ
同級生の巻き添え(?)で異世界召喚された主人公が、ワクテカな同級生を冷めた目で観察しつつ、それなりに異世界を満喫する話。主人公は性格悪くてドライです。
なろうからの転載。全五話
後悔するのはあなたの方です。紛い物と言われた獣人クォーターは番の本音を受け入れられない
堀 和三盆
恋愛
「ああ、ラジョーネ! 僕はなんて幸せなのだろう! 愛する恋人の君が運命の番と判明したときの喜びと言ったらもう……!!」
「うふふ。私も幸せよ、アンスタン。そして私も貴方と同じ気持ちだわ。恋人の貴方が私の運命の番で本当に良かった」
私、ラジョーネ・ジュジュマンは狼獣人のクォーター。恋人で犬獣人のアンスタンとはつい先日、お互いが運命の番だと判明したばかり。恋人がたまたま番だったという奇跡に私は幸せの絶頂にいた。
『いつかアンスタンの番が現れて愛する彼を奪われてしまうかもしれない』……と、ずっと心配をしていたからだ。
その日もいつものように番で恋人のアンスタンと愛を語らっていたのだけれど。
「……実はね、本当は私ずっと心配だったの。だからアンスタンが番で安心したわ」
「僕もだよ、ラジョーネ。もし君が番じゃなかったら、愛する君を冷たく突き放して捨てなきゃいけないと思うと辛くて辛くて」
「え?」
「ん?」
彼の口から出てきた言葉に、私はふとした引っ掛かりを覚えてしまった。アンスタンは番が現れたら私を捨てるつもりだった? 私の方は番云々にかかわらず彼と結婚したいと思っていたのだけれど……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる