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邪魔者は消え去る

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 ラメイラがトーマスと共に帰って来た。
 そして、ラメイラがアリシアとアニースに帰宅の挨拶をしに皇女宮にやって来た。
 アニースの元気の無さを気にしたラメイラが皇太子邸の前で、アニースの義姉ヘルンを引っぱたいた事は、またたく間に王城内に知れ渡る。
 衛兵達に客間に押し込まれたヘルン達を見送った後、ナターシャが皇太子邸から出て来た。

「相変わらずですわね、ラメイラ。」
「ナターシャ!ただいま!」
「おかえりなさい、ラメイラ。」
「あ!こら!ラメイラ!ナターシャから離れろ!」

 ラメイラがナターシャの顔を見るなり抱き締める。
 それが面白くないリュカリオンは、引き離そうとするのだが、それは既に日課のようになっており、衛兵達も含め、侍女達も苦笑いをしていた。

「心が狭いですわ、殿下。」
「本当に狭い。」
「わたくし達は、コレが挨拶になってますのに。」
「うん。女同士だし良いだろ?お互い夫も居るんだし、夫が一番なんだから。」
「俺からすれば、ラメイラは『女』に見えないからな。」
「じゃあ、わたくしがナターシャお姉様に抱き着いたらどうなのですか?」

 漫才っぽくなっていく会話にアリシアが混ざりたくて突っ込む。
 ナターシャ、ラメイラ、リュカリオンに他の侍従達も気になるのか、答えに耳を傾けた。

「アリシアは…………妹みたいな感覚?気にならないな。」
「ちょっと!リュカ!!私の事を妹みたいだ、て言ってたじゃないか!」
「俺の中ではラメイラはタイタスと同類からなぁ。」
「…………。」

 クスクスと侍従達から失笑が聞こえる。
 それはラメイラを侮辱する訳でもなく、リュカリオンが興味の無い女の扱いが、ヘルンへの様な態度だと知っている侍従達だからこそ、ナターシャとも違うラメイラへの気さくさが分かるからの笑い。

「ナターシャが、認めた女であれば、あのヘルン姫の様な態度はしない、とラメイラも分かるだろ?」
「そりゃ、ね。一応、私もナターシャとリュカの結婚式前後の事は知ってるから。」
「こんな所で、立ち話も何ですから、ラメイラ、アリシア様、アニース様、皇太子邸でお茶でも如何ですか?」

 ナターシャもリュカリオンとラメイラの関係は見てきているから、ヤキモチを焼く事もないし、ラメイラにはトーマスが居るので、心配もしていない。
 クスクスと笑うと、邸に誘うナターシャ。

「殿下はまだお仕事残ってますでしょ?」
「あぁ、ヘルン姫をボルゾイに帰させるように、手を回さなきゃならなくなったから、今日は帰り少し遅くなると思う。」
「その点については、出来るだけお早目にお願い致します。」

 ナターシャが真顔でリュカリオンに訴える。
 その顔を見たアリシアとアニースは、ナターシャはヘルンを認める事は無いのだ、と悟った。

「さぁ、どうぞ。………あなた達も持ち場に戻ってね。」
「御意。」
「妃殿下、失礼致します。」

 侍従達はそれぞれ持ち場に戻り、リュカリオンとセシルは執務室に戻って行く。

「素直に帰りますかね?ヘルン姫。」
「帰らないだろ、素直には。」
「では、どうします?」
「……………下手に出て、はしたくないが、『正式』な物を破棄出来ないなら、セシルに動いてもらう事になるかもな。カイルはアードラに任せているから………。」
「飛びますか?ボルゾイに。」
「いや、先ずは何故サマーン王と父上の口約束を、書簡にし『正式』な物にし、その相手が変えられたのか、を確認してからだ。サマーン王が病だと聞くが、アードラの様な事ではないのだろう?」
「はい。不治の病で治療も難しいものだ、と報告が入ってます。何でも心臓の病だとか。」
「もっと情報を集めろ。」
「畏まりました。では、私は父に報告し、執務室に戻ります。」
「頼む。」

 王城内の廊下でリュカリオンはセシルと別れ、急ぎ執務室に戻って行った。

 
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