13 / 102
お行儀見習い開始
しおりを挟むその日の夕刻、ウィンストン公爵の息子であり、リュカリオンの側近のセシルがアリシアの部屋へやって来た。
ロバートは、セシルに初めて会った為、扉の向こうで、疑り深いロバートに根掘り葉掘り質問している声が聞こえたアリシア。
『セシル・ウィンストンと申します。アリシア様はおみえかと思いますが、お目通り願えますか?私は、皇太子殿下の代理でお話がありまして。』
『貴方が、皇太子殿下の代理という証明はありますか?』
『一度、アリシア様にお会いしてるのですがね……王宮内で私が皇太子殿下の側近な事は誰しも分かりますから、その様な証明を、と申しましても……。』
ロバートも、セシルが高級生地の服を身にまとい、気品のある上級貴族なのは分かるのだが、疑り深い為信用等なかなか持てないのだ。
「誰か、ロバート止めてきて。セシル様が入れないわ。」
「はい、直ちに。」
カチャ。
「セシル様、どうぞお入り下さい。アリシア様がお待ちです。」
「では、失礼します。貴方も護衛ならばご一緒に聞いて下さい。」
「………分かりました。」
セシルはアリシアの侍女により入室が許可され入ると、ロバートも誘う。
内緒話では無いのと、内緒にしてもいいが後から口うるさい人間だと、調べが付いているからなのだが、そんな事はロバートは全く気が付かない。
「アリシア様、ご機嫌如何でしょうか、皇女宮の生活に不便はございませんか?」
「セシル様、ありがとうございます。皆様とても良くして頂いて、むしろこちらがご迷惑お掛けしているのでは、と思っている所です。」
こちらがとは主にロバートの事なのだが、それにセシルが気が付かない訳ではない。
「アリシア様、私の様な者に『様』は結構です。敬語も要りませんよ。アリシア様がレングストンに来られて賑やかになる事、健やかにお過ごし出来る事は喜ばしい事でございます。こちらでは、本来のアリシア様が見られているので、のびのびとお過ごし出来ているかとお見受け致します。一点を除けば、という事でしょうか。」
(…………この人、食えない人ね……。)
アリシアの素を見せた事が無いのに知っているのは、父のウィンストン公爵から聞いたのか……。
「では、セシル……皇太子殿下の代理で、と聞きましたが、どの様なご用件なの?」
「はい、陛下から伺っておられるかと思いますが、明日からラメイラ様とお勉強をして頂こうかと、本日もナターシャと刺繍をされたと伺いましたし、開始をしても、と殿下が仰るので、王城内の図書館にて昼食後2時間程、お時間を頂き、皇太子殿下からトーマス殿下、タイタス殿下、コリン殿下、ナターシャ、との勉強をお願い致します。必要であればアリシア様が学びたい事をいつでもご用意致します。」
「分かりました。明日からお勉強頑張りますわ。でもわたくし、王城の図書館の場所が分かりませんが教えて貰えるかしら?」
「大丈夫です。明日時間になりましたら、迎えに参りますから、昼食後皇女宮の入り口に降りて来て貰えれば、私が居ります。その時に、王城内の主な説明を致します。その後は衛兵と、アリシア様の護衛と一緒に図書館迄お越し下さい。」
「助かりますわ。アードラと違ってレングストンの王宮は広くて迷いそうでしたから。ロバート、あなたも覚えなさいね、王城の図書館の場所。」
「はい。」
セシルから大まかの地図は渡されたものの、他国の王族に全てを教えて貰える訳ではない。
政を賄う主な場所や隠し通路や隠し部屋何て書いてある筈もなく、一般的に貴族が入れる範囲部分の地図だった。
(わたくしだって、アードラ王城の全部知らないものね。)
地図を机に置いておき、明日からの必要になりそうな筆記具を準備だけはしておいた。
何を勉強するのか分からないまま、この日は早く寝る事にしたアリシアだった。
0
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
ナイショのお見合いは、甘くて危険な恋の駆け引き!
むらさ樹
恋愛
娘を嫁に出そうと、お見合い写真を送り続けている母
それに対し、心に決めた男性と同棲中の娘
「最後にこのお見合いをしてダメだったら、お母さんもう諦めるから」
「本当!?」
と、いう事情で
恋人には内緒でお見合いに応じた娘
相川 優
ところが、お見合い相手の男性はなんと年商3億の社長さん
「私の事なんて早く捨てちゃって下さい!」
「捨てるだなんて、まさか。
こんなかわいい子猫ちゃん、誰にもあげないよ」
彼の甘く優しい言動と、優への強引な愛に、
なかなか縁を切る事ができず…
ふたりの馴れ初めは、
“3億円の強盗犯と人質の私!?”(と、“その後のふたり♡”)
を、どうぞご覧ください(^^)
悪役令嬢はお断りです
あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。
この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。
その小説は王子と侍女との切ない恋物語。
そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。
侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。
このまま進めば断罪コースは確定。
寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。
何とかしないと。
でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。
そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。
剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が
女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。
そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。
●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
●毎日21時更新(サクサク進みます)
●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)
(第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
決めたのはあなたでしょう?
みおな
恋愛
ずっと好きだった人がいた。
だけど、その人は私の気持ちに応えてくれなかった。
どれだけ求めても手に入らないなら、とやっと全てを捨てる決心がつきました。
なのに、今さら好きなのは私だと?
捨てたのはあなたでしょう。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる