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お行儀見習い開始

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 その日の夕刻、ウィンストン公爵の息子であり、リュカリオンの側近のセシルがアリシアの部屋へやって来た。
 ロバートは、セシルに初めて会った為、扉の向こうで、疑り深いロバートに根掘り葉掘り質問している声が聞こえたアリシア。

『セシル・ウィンストンと申します。アリシア様はおみえかと思いますが、お目通り願えますか?私は、皇太子殿下の代理でお話がありまして。』
『貴方が、皇太子殿下の代理という証明はありますか?』
『一度、アリシア様にお会いしてるのですがね……王宮内で私が皇太子殿下の側近な事は誰しも分かりますから、その様な証明を、と申しましても……。』

 ロバートも、セシルが高級生地の服を身にまとい、気品のある上級貴族なのは分かるのだが、疑り深い為信用等なかなか持てないのだ。

「誰か、ロバート止めてきて。セシル様が入れないわ。」
「はい、直ちに。」

 カチャ。

「セシル様、どうぞお入り下さい。アリシア様がお待ちです。」
「では、失礼します。貴方も護衛ならばご一緒に聞いて下さい。」
「………分かりました。」

 セシルはアリシアの侍女により入室が許可され入ると、ロバートも誘う。
 内緒話では無いのと、内緒にしてもいいが後から口うるさい人間だと、調べが付いているからなのだが、そんな事はロバートは全く気が付かない。

「アリシア様、ご機嫌如何でしょうか、皇女宮の生活に不便はございませんか?」
「セシル様、ありがとうございます。皆様とても良くして頂いて、むしろご迷惑お掛けしているのでは、と思っている所です。」

 とは主にロバートの事なのだが、それにセシルが気が付かない訳ではない。

「アリシア様、私の様な者に『様』は結構です。敬語も要りませんよ。アリシア様がレングストンに来られて賑やかになる事、健やかにお過ごし出来る事は喜ばしい事でございます。こちらでは、のアリシア様が見られているので、のびのびとお過ごし出来ているかとお見受け致します。を除けば、という事でしょうか。」
(…………この人、食えない人ね……。)

 アリシアの素を見せた事が無いのに知っているのは、父のウィンストン公爵から聞いたのか……。

「では、セシル……皇太子殿下の代理で、と聞きましたが、どの様なご用件なの?」
「はい、陛下から伺っておられるかと思いますが、明日からラメイラ様とお勉強をして頂こうかと、本日もナターシャと刺繍をされたと伺いましたし、開始をしても、と殿下が仰るので、王城内の図書館にて昼食後2時間程、お時間を頂き、皇太子殿下からトーマス殿下、タイタス殿下、コリン殿下、ナターシャ、との勉強をお願い致します。必要であればアリシア様が学びたい事をいつでもご用意致します。」
「分かりました。明日からお勉強頑張りますわ。でもわたくし、王城の図書館の場所が分かりませんが教えて貰えるかしら?」
「大丈夫です。明日時間になりましたら、迎えに参りますから、昼食後皇女宮の入り口に降りて来て貰えれば、私が居ります。その時に、王城内の主な説明を致します。その後は衛兵と、アリシア様の護衛と一緒に図書館迄お越し下さい。」
「助かりますわ。アードラと違ってレングストンの王宮は広くて迷いそうでしたから。ロバート、あなたも覚えなさいね、王城の図書館の場所。」
「はい。」

 セシルから大まかの地図は渡されたものの、他国の王族に全てを教えて貰える訳ではない。
 政を賄う主な場所や隠し通路や隠し部屋何て書いてある筈もなく、一般的に貴族が入れる範囲部分の地図だった。

(わたくしだって、アードラ王城の全部知らないものね。)

 地図を机に置いておき、明日からの必要になりそうな筆記具を準備だけはしておいた。
 何を勉強するのか分からないまま、この日は早く寝る事にしたアリシアだった。



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