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陽太郎と斗貴哉の夜の生活

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「なあ、何してんの」 


 俺はでかいソファの上に寝転んでスマホゲームをしながら、広い机に向かってずっとパソコンをカチカチしてる斗貴哉を、横目で眺めてた。 

 いつもなら風呂からあがって寝室で待ってれば、用事を済ませた斗貴哉が来るんだけど、今日はいくら待っても斗貴哉が来ない。 

 寝る時間になっても来ないから、俺がわざわざ迎えに来てやったのに。 

 それなのに斗貴哉のやつ、ずっとパソコンの前にいて動かないんだよな。 


「ん~……、陽太郎さん、ちょっと待っててくださいね。今まだ手が離せないので……」 

「で、何やってんだって」 

「あー……、今は投資関連ですね。取引先とちょっと今大事なやりとりを……。陽太郎さんこそ、今日はゲームはいいんですか」 

「もうゲームはいい。飽きた」 

「ふふ。ではあとちょっとで終わるので、そこで待っててください」 


 この家には、俺たちが寝る主寝室の他にもたくさんの部屋があって、書斎と呼ばれるちょっとした図書室みたいな部屋や客間、何に使うか分からない和室とかがあったりするんだけど、今俺がいるのは斗貴哉の部屋。 

 漫画やらフィギュアやらばっかりが並ぶの俺の部屋とは違って、斗貴哉の部屋には余計なものがなにもない。 

 存在感のあるでかい横長モニターが設置された広い机に、高級そうな椅子。周囲には小難しそうな本が並び、それ以外に置いてあるのは、俺が今座ってるでっかいソファと小さなテーブル。そして部屋の隅に置いてあるキャビネットのみ。 


 最初部屋にテレビがないのに驚いて、テレビは? って聞いたら、ドラマには興味ないし、報道はネットニュースで十分だって。……まあこの光景を見たら納得しかない。 


 俺は寝転んでいたソファから立ち上がって、斗貴哉の背後に回った。 

 モニターには数字やらグラフやらがいくつも表示されていて、それを見ながら斗貴哉は誰かとチャットをしていた。表示名は英語で、やりとりも全部英語。 

 俺なら確実にゲームチャットなんだけど、明らかにまじめなやつ。 


「……ふーん、斗貴哉、投資家なんだ」 


 背後から首を突き出すと、斗貴哉が少しだけこっちに顔を傾けて微笑む。 


「ええ。引きこもりの擬態オメガができることといったら、投資くらいなものですよ。今は海外の企業に融資をしたり、スタートアップだとか目新しいプロジェクトに出資したり、まあいろいろです」 

「ふーん……」 

「興味があるなら今度、投資のやり方を教えてあげましょうか」 

「興味はねーけど……、ちょっとやってみてもいい」 


 そう言って俺が斗貴哉の口の端にキスすると、斗貴哉がクスクス笑いながらチュッとキスを返す。 


「なあ、まだ? 俺、早くベッドにいきてーんだけど」 

「もう終わりますよ。今日は、というか最近やけに積極的ですね」 

「うっせーな。誰もエッチしたいなんか言ってないじゃん」 

「そうですか。じゃあ今日はすぐに寝ちゃうんですね」 


 俺がムスッと口を尖らせると、斗貴哉がふふっと口に手を当てて笑う。 


「そういえば、最近私の服が間違えて陽太郎さんの部屋にいってませんか?」 

「んー、どうだろ。あとで見とく」 

「着替えるためにいつも寝室から部屋に戻るのも面倒ですし、いっそのこと寝室の隣を共有のクローゼットに改築して、部屋着も全部そちらに移動させたほうがいいかもしれないですね」 


 そんなたわいもないことを話しながら、斗貴哉はパパッとウィンドウを閉じ、システムを終了させると、椅子から立ち上がった。 


「はい、終わりました! 今日は終了です。お待たせしました旦那様」 

「ん」 


 俺が目をつむると、当たり前のように斗貴哉の顔が近づいてくる。 

 俺より少しだけ背の高い斗貴哉のキスは、いつも少し上からかぶさるようにして、唇が重なる。少し乾いた柔らかい唇が、俺の唇を優しく啄み、ちょっとだけ口を開けると俺の舌を探すように斗貴哉の舌が滑り込んでくる。 


「ん……。なぁ、斗貴哉ぁ、ここでしよ。俺、待てないんだけど」 

「ふふ、誰かさんはさっき、エッチする気ないって言ってませんでした?」 

「うっせーな。嫌ならもういい」 


 俺が顔を離して睨むと、斗貴哉がおかしそうに笑う。 
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