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「じゃあさ、聞くけど、なんで俺と結婚したかったの?」 

「……堂々めぐりですね? それは、まあ、その、前に会った時から気になっていて……」 

「気になってただけ? ちょろそうだから結婚できそうだって?」 

「違いますよ! だから、陽太郎さんのことを好きになったから、私も結婚をお願いしたんです。……あ。ちゃんとしたプロポーズ、お互いしてなかったですね」 


 それ。好きって言ってもらってなかったし。 

 それに隠し事ばっかりで、騙し討ちで結婚したような感じになってて、ちゃんとお互いすべてを知った上での結婚について意思確認してないんだよ。 


「最初っからさ、俺にちゃんと言えば良かったんだよ。次から俺に隠し事とか、騙すようなことしたら承知しねーから」 


 斗貴哉様の目が一瞬見開いた。そして嬉しそうに細くなり、俺に口付けた。 


「いいんですか? それってOKってことですよね、陽太郎さん。オメガになっちゃうかもしれないんですよ? もう次はさっきみたいにやだって言われても、私はもう待てませんよ」 

「つかさ、まだ挿入ってんじゃん」 

「気づいちゃいました? ふふ、まだ萎えてないのでしばらく抜けませんよ」 


 笑いながら斗貴哉様は俺に何度も口付ける。 


 オメガもそうだけど、男同士で俺が下でっていうのも本当は嫌だ。でもさっき泣いてすっきりしたってのもあるし、正直なんだかもうどうでもよくなったってのが本音。 


 それに斗貴哉様がそこまでいうなら、俺だってやってやろうじゃんよ。 


「俺さ、斗貴哉様を利用してのし上がろうかと思ってんだけど、それってアリ?」 


 斗貴哉様との結婚を存分に活用してやる。 

 もしオメガになったとしても、ヒカルみたいにウジウジ人の顔色みてニコニコすんのだけは絶対しねーし、兄貴が家を継いで俺がその下についたとしても、この花咲の家を利用して兄貴よりも上にいってやるんだ。 


「ふふ、ありですよ。どうせなら征佑さんを見返してやりましょう! 陽太郎さんと私ならできますよ」 


 斗貴哉様の口付けが深くなる。俺の唇を啄み、隙間を割って歯をなぞり、舌を弄っては吸い上げる。 

 俺もだんだんと興奮が高まり、冷めていた体が急激に熱くなってくる。このラットもオメガになったらどうなんだろって思いながら、斗貴哉様の舌に吸い付いていく。 

 体を弄られ、尻を揉まれて、再び勃ちあがったペニスを扱かれて、俺は自分から足を斗貴哉様に絡めてさらなる刺激をねだった。 


 あー、やっぱ斗貴哉様のデカいな。本当に全部入るのかなって、頭のどっかで考えながら、尻に全体重をかけてあのデカいのを全部押し込まれたところで、もうそこからは斗貴哉様のラットに飲み込まれ、記憶がすっかりとんで何も覚えてない。 


 ——朝起きたら、2人の出したものでぐっちゃぐちゃになった布団の中にいた。すぐ横にはとてもきれいな斗貴哉様が寝息を立てて、俺の首筋にはしっかりと歯形がついてた。 

 体調的にもいつもと変わりなくいつもの俺で、ただ尻に、まだ何か入っているような違和感だけが残っていた。 

  

  

 ◇ 

  

  

「陽太郎様、いってらっしゃいませ」 

「いってきまーす」 


 朝、広い玄関で美しい妻と使用人らに見送られ、俺はのんびりと大学へ向かう。 

 あの初夜の日から1カ月が経ったが、まだ俺には何の変化もない。身体も心も以前と同じ、いつもの俺。 

 アルファのときのまんま。 

 斗貴哉様は、馴染むまで時間がかかるからまだ分かりませんよと言っていたけど、もしかするとオメガにならなかったのかも、なんて思ってる。 

 大学でも俺はアルファの花咲陽太郎として、周囲からは一目置かれているし、志久の家族もみんな気づいていない。だからきっと実際俺は優秀なアルファで、オメガにはならなかったんだろう。 

 まあ当たり前だ。なんたって俺だもの。 

 斗貴哉様もあの初夜の日はなんだったんだってくらい、今は結婚前のたおやかな斗貴哉様だし、正直俺はこの生活に夜以外は満足している。 


 そうは。 


 いつもは花咲の婿として、あの家では斗貴哉様を筆頭にかしずかれ当主ヅラしている俺だけど、夜だけはなあ。 

 やっぱあの初夜の日に俺が下になっちゃったもんだから、もうずっと俺が挿れられるほう。 

 斗貴哉様ってば、いつもはおしとやかなオメガのくせに、夜だけはしっかりアルファなんだよなぁ。 


 尻を使うことには慣れてきたけど、やっぱ夜も俺が優位になりたいんだよね。 

 いつか逆転してやるのが俺の野望。 

 災難続きだったけど、まあ、幸せだし良かったのかな。 
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