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「……だいぶ発情が強くなってきたみたいですね。陽太郎さんももう我慢できなくなっちゃったかな」 


 俺の舌にやんわりと歯を立ててから離れると、斗貴哉様は俺の膝を割り広げた。 

 熱いものが尻に当たったと思った瞬間、中に固く大きな塊が捩じ込まれ、息を呑んだ。 


「——…………! く、あっ…………!」 

「——ああ、陽太郎さんの中、とても温かい……」 

 
 一度浅く引き抜かれ、またゆっくりと押し込まれる。 

 その度に亀頭球がグリッと中を抉り、俺の体は反射的に反って腰を浮かせる。 

「……! や……あっ~~~~!」

 頭の中は電気が走ったようにスパークし、さっきまでの指など比じゃないくらいの快感が押し寄せてくる。 


「正直言うと、陽太郎さんとは結婚できないかなって思ってたんですよ。私がオメガじゃないって、あなたのお兄さんは気がついていたみたいだし。そうそう、強いアルファはやっぱりそういう勘が働くみたいです。征佑さんには、会った早々勘付かれちゃいましたし。でもこうやって陽太郎さんと致すことができて、私は幸せです」 

「……あにき? みやまえ?」 


 ぼんやりとした頭に、兄貴と宮前の顔が浮かぶ。 

 ——ちょっと待て、今斗貴哉様はなんて言った? 

 兄貴も宮前も知ってた? 
 斗貴哉様がオメガじゃないって。 

 気づけなかった俺は強いアルファじゃないってこと? 


「ええ。2人はアルファとしての素質が高いですね。あの2人だったらもしかすると、私の力も効かなかったかもしれませんね」 

「——おれ、みんなにだまされたの?」 

「え?」 

「親父も母さんも知ってたってこと? 宮前は斗貴哉様から逃げたくて、俺からヒカルを奪ったの? 俺をみんなして騙したのか」 


 せっかく止まっていた涙が、また溢れ出る。 

 俺はみんなに騙されてここに来たのか? それをヒカルも知ってた? みんな俺のことがそんなに邪魔だったのか? 親父がすまなそうにしてたのも、兄貴が止めたのも、斗貴哉様がアルファだって気づいていたから? 


「俺、弱いアルファだから、みんなは俺がオメガにでもなればいいって思ってたってこと?」 


 泣く声を抑えていたけど、言葉を発したらふぐぅって変な声が喉から出た。 

 でももう泣く声も抑えられない。 

 ボロボロ涙が出て、両手で目を押さえるけど、それでもやまなくて、今日という日を楽しみにしてた自分が本当にバカみたいで、ウキウキしてた俺をみんな憐れんでいたんだって、そう思うともう涙を止められなくなった。 


「あー……ごめんなさい。陽太郎さん。私が悪かったです。違いますよ、征佑さんは知っていたけれど、あなたを私に押し付けたわけじゃありません。あなたのお兄さんも勘づいていただけで、私に直接確かめたわけじゃありませんから、確信はなかったと思います。相手のバース性は、本人に確認しないと正しいことはわからないですから。お兄さんはきっと、弟が私のような年増と結婚することを心配されて反対していたんだと思いますよ」 


 ひっくひっくとしゃくりあげる俺の上で、斗貴哉様の動きが止まり、それまでの怖い斗貴哉様の声がおろおろとしたものに変わった。 


「結婚した当日に、こんな思いをさせてごめんなさい。もっと手順を踏んでお話しすれば良かったのに、陽太郎さんと結婚できたことが嬉しくて、早急に事を進めすぎました。どうしても陽太郎さんと結婚したくて、婚約中も言い出せませんでした。今日もあんまりにも反応がかわいくて、浮かれて興が乗ってしまって……本当にごめんなさい」 

「……斗貴哉様もホントは俺がちょろいから、結婚の話に乗ったんだろ」 


 嬉しいとか、そんなの俺がちょろすぎて、思い通りに事が運ぶのが楽しかっただけだろ。 


「あーもう、本当に違うんです。確かに征佑さんのことがなければ、あなたと結婚しようだなんて思わなかったかもしれません。でも、そうじゃないんです。以前一度だけ、パーティで会ったのを覚えていますか?」 


 ……忘れるはずない。あの日俺は、斗貴哉様に一目惚れしたようなものなんだから。まさかこんなことになるとは思ってなかったけど。 


「あの日、真っ赤な顔で挨拶をしてくれたあなたがとても初々しくて、かわいいなって印象に残ってて。征佑さんとの話が出る前でしたから、婚約者候補としてあなたのことも調べたんです。そうしたらもう決まった相手がいるって聞いて、諦めたんです」 

「……うそばっか」 

「嘘じゃありませんよ。本当です。征佑さんとは家同士の政略結婚みたいなもので、征佑さんは知った上で私との結婚を承諾していました。その代わり、もし運命の番が現れたら婚約は解消してほしいというのが条件でね。まあ実のところ、あのプライドの高い彼が” オメガになる”という条件をよく飲んだなと思うのですが、今から考えると運命の番の存在をその頃にはすでにキャッチしていたのかもしれませんね」 


 確かにそうかもしれない。 

 宮前はいつも俺に何か言いたそうにしていた。でも俺があいつのことが嫌いだったから、ろくに話をしなかったんだ。 

 結婚を遅らせてたってことは、きっと宮前はヒカルのことをもう知ってて、あとは確認だけだったんだろう。 

 俺にはっきりとヒカルが自分の番だってことを知らしめるために、あの日宮前はうちに来たんだ。 
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