10 / 24
10
しおりを挟む
そこに現れた斗貴哉様は、豪奢で品のある細かな花の刺繍が入ったシルクのガウン姿で、長い髪は下ろして片側に流していた。
もう俺の心臓はバクバクと通り越して、止まってしまうんじゃないかってくらいの早鐘だったんだけど、それを斗貴哉様に知られないよう何でもないような顔をするので精一杯だった。
「陽太郎さん、遅くなってしまって申し訳ありません」
「ん、う、あ、いえ、はい、大丈夫です……はは」
そんな俺の姿に、斗貴哉様はふふふと花のように笑った。
「緊張してらっしゃるんですね。私もそうですよ。こんなに若くて素敵な方と添えることができるなんて」
斗貴哉様がこちらへ近づいてくる。フワッといい匂いがして、あの麗しい顔が俺の前に……と思ったら、近づくにつれ顔の位置は目の前から斜め上になり、俺は少し見上げるようにしながら、なんだかちょっと違うぞってなっていた。
(あれ、斗貴哉様こんなに背が高かったけ。もしかして俺のほうが小さい?)
俺はあんぐりと斗貴哉様の顔を見上げた。
これまでお互いの身長のことなんか意識したことなかったんだけど……。もしかして斗貴哉様は実は俺より身長高い? 考えてみれば斗貴哉様は、いつでもどこでも座っていた気がする。
見合いの時もそうだったけど、会うときはいつもちょっと離れたところにいて、こんなに間近で話すことなんかなかった。さすがに式の時は隣にいたけど、緊張しすぎてすぐ隣にいる斗貴哉様のことなんかじっくり見る余裕すらなかったし、それどころじゃなかった。
ちなみに俺は身長183cm。
それより高いってことは、190cmはありそう……。
「どうかしましたか?」
不思議そうに、それでも美しい仕草で小首を傾げる斗貴哉様。
いや、背が高いくらいなんだ。男なんだし。
「あ、いえ! 全然!? なんでもないです!」
「ふふ、陽太郎さんは本当に可愛らしいですね。さ、ベッドにいきましょう、ね?」
「は、はい!」
聞き惚れるほど綺麗に澄んだ少し低めの声。すっと伸びた長く細い手で手を握られて、俺の心は舞い上がった。
たぶんすっごい手のひら汗かいてると思う。
斗貴哉様に手汗を気づかれないだろうかとドキドキしながら、手を引かれて、俺は斗貴哉様とベッドに上った。
ベッドの上で向かい合った斗貴哉様は、薄暗い間接照明でもやっぱり綺麗で、ただボーッと目の前のその美貌を見つめていた。
「陽太郎さんは、こういうこともしかして初めてですか」
「え? あ、はい……」
しまった。
言ってから顔が熱くなった。これって俺は童貞ですって言ったようなものだ。
あーマジで一回どっかで童貞捨てとくべきだった! と激しく後悔する俺。
「ふふ、それはまた可愛らしい」
「え?」
ドギマギしていると斗貴哉様の綺麗な顔が近づいて、あ、これはキスされる! と思って俺は目をギュッと瞑った。
柔らかくてちょっと冷たい唇が俺の口に触れた。それからそっと手が伸びて、俺の体を斗貴哉様が抱き寄せた。
斗貴哉様はすごくいい匂いで、その上、思ったよりも体は筋肉質で力強くて……。
(は? ちょっと待て。筋肉質で力強い?)
俺の頭にさらなる疑問符が浮かんだ。
斗貴哉様はオメガのはず。
確かに最近のオメガはベータと変わりないくらい、体型も安定してきたとは聞いていたけど、さすがにちょっと逞しすぎないか?
弱っちいヒカルはさておいても、オメガはどんなに鍛えても、あんまし筋肉つかないって聞いたし、何より斗貴哉様は病弱だったんじゃ……。
俺がそんなことを考えている間にも、斗貴哉様からのキスは執拗なものになっていく。上唇を吸われたと思ったら、角度を変えてまた口づけられ、いつの間にか斗貴哉様のリードで事が運ばれていく。
「——あ、斗貴哉さ……え? ちょ」
なんとか俺が主導権を握らないとと、斗貴哉様を押し倒そうとするがビクともしない。
それどころか逆に押し倒されて、気がついたら俺はベッドの上に仰向けになり、斗貴哉様を見上げていた。
もう俺の心臓はバクバクと通り越して、止まってしまうんじゃないかってくらいの早鐘だったんだけど、それを斗貴哉様に知られないよう何でもないような顔をするので精一杯だった。
「陽太郎さん、遅くなってしまって申し訳ありません」
「ん、う、あ、いえ、はい、大丈夫です……はは」
そんな俺の姿に、斗貴哉様はふふふと花のように笑った。
「緊張してらっしゃるんですね。私もそうですよ。こんなに若くて素敵な方と添えることができるなんて」
斗貴哉様がこちらへ近づいてくる。フワッといい匂いがして、あの麗しい顔が俺の前に……と思ったら、近づくにつれ顔の位置は目の前から斜め上になり、俺は少し見上げるようにしながら、なんだかちょっと違うぞってなっていた。
(あれ、斗貴哉様こんなに背が高かったけ。もしかして俺のほうが小さい?)
俺はあんぐりと斗貴哉様の顔を見上げた。
これまでお互いの身長のことなんか意識したことなかったんだけど……。もしかして斗貴哉様は実は俺より身長高い? 考えてみれば斗貴哉様は、いつでもどこでも座っていた気がする。
見合いの時もそうだったけど、会うときはいつもちょっと離れたところにいて、こんなに間近で話すことなんかなかった。さすがに式の時は隣にいたけど、緊張しすぎてすぐ隣にいる斗貴哉様のことなんかじっくり見る余裕すらなかったし、それどころじゃなかった。
ちなみに俺は身長183cm。
それより高いってことは、190cmはありそう……。
「どうかしましたか?」
不思議そうに、それでも美しい仕草で小首を傾げる斗貴哉様。
いや、背が高いくらいなんだ。男なんだし。
「あ、いえ! 全然!? なんでもないです!」
「ふふ、陽太郎さんは本当に可愛らしいですね。さ、ベッドにいきましょう、ね?」
「は、はい!」
聞き惚れるほど綺麗に澄んだ少し低めの声。すっと伸びた長く細い手で手を握られて、俺の心は舞い上がった。
たぶんすっごい手のひら汗かいてると思う。
斗貴哉様に手汗を気づかれないだろうかとドキドキしながら、手を引かれて、俺は斗貴哉様とベッドに上った。
ベッドの上で向かい合った斗貴哉様は、薄暗い間接照明でもやっぱり綺麗で、ただボーッと目の前のその美貌を見つめていた。
「陽太郎さんは、こういうこともしかして初めてですか」
「え? あ、はい……」
しまった。
言ってから顔が熱くなった。これって俺は童貞ですって言ったようなものだ。
あーマジで一回どっかで童貞捨てとくべきだった! と激しく後悔する俺。
「ふふ、それはまた可愛らしい」
「え?」
ドギマギしていると斗貴哉様の綺麗な顔が近づいて、あ、これはキスされる! と思って俺は目をギュッと瞑った。
柔らかくてちょっと冷たい唇が俺の口に触れた。それからそっと手が伸びて、俺の体を斗貴哉様が抱き寄せた。
斗貴哉様はすごくいい匂いで、その上、思ったよりも体は筋肉質で力強くて……。
(は? ちょっと待て。筋肉質で力強い?)
俺の頭にさらなる疑問符が浮かんだ。
斗貴哉様はオメガのはず。
確かに最近のオメガはベータと変わりないくらい、体型も安定してきたとは聞いていたけど、さすがにちょっと逞しすぎないか?
弱っちいヒカルはさておいても、オメガはどんなに鍛えても、あんまし筋肉つかないって聞いたし、何より斗貴哉様は病弱だったんじゃ……。
俺がそんなことを考えている間にも、斗貴哉様からのキスは執拗なものになっていく。上唇を吸われたと思ったら、角度を変えてまた口づけられ、いつの間にか斗貴哉様のリードで事が運ばれていく。
「——あ、斗貴哉さ……え? ちょ」
なんとか俺が主導権を握らないとと、斗貴哉様を押し倒そうとするがビクともしない。
それどころか逆に押し倒されて、気がついたら俺はベッドの上に仰向けになり、斗貴哉様を見上げていた。
10
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説
カーマン・ライン
マン太
BL
辺境の惑星にある整備工場で働くソル。
ある日、その整備工場に所属不明の戦闘機が不時着する。乗っていたのは美しい容姿の青年、アレク。彼の戦闘機の修理が終わるまで共に過ごすことに。
そこから、二人の運命が動き出す。
※余り濃い絡みはありません(多分)。
※宇宙を舞台にしていますが、スター○レック、スター・○ォーズ等は大好きでも、正直、詳しくありません。
雰囲気だけでも伝われば…と思っております。その辺の突っ込みはご容赦を。
※エブリスタ、小説家になろうにも掲載しております。
洗濯日和!!!
松本カナエ
BL
洗濯するオメガバース。BL。
Ωの鈴木高大は、就職に有利になるためにαと番うことにする。大学食堂で出逢ったαの横峯大輔と付き合うことになるが、今までお付き合いなどしたことないから、普通のお付き合い普通の距離感がわからない。
ニコニコ笑って距離を詰めてくる横峯。
ヒート中に俺の部屋においでと誘われ、緊張しながら行くと、寝室に山ができていた。
巣作りしてもらうために洗濯物を溜め込むαと洗濯するΩ。
12話一旦完結からの17話完結。
卒業旅行番外編。
(素敵な表紙はpome様。感謝しかありません)
※昨年の大島Q太様のTwitter企画「#溺愛アルファの巣作り」に参加したのを加筆して出します。
※オメガバースの設定には、独自解釈もあるかと思います。何かありましたらご指摘下さい。
※タイトルの後ろに☆ついてるのはRシーンあります。▲ついてるのはオメガハラスメントシーンがあります。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
勃起できない俺に彼氏ができた⁉
千歳
BL
大学三年生の瀬戸結(セト ユイ)は明るい性格で大学入学当初からモテた。
しかし、彼女ができても長続きせずにすぐに別れてしまい、その度に同級生の羽月清那(ハヅキ セナ)に慰めてもらっていた。
ある日、結がフラれる現場に出くわしてしまった清那はフラれて落ち込む結を飲みへと誘う。
どうして付き合ってもすぐに別れてしまうのかと結に尋ねてみると、泥酔した彼はぽつりと言葉を零した。
「……勃起、できないから」
衝撃的なその告白と共に結は恋愛体質だから誰かと付き合っていたいんだとも語った。
酔っ払いながら泣き言を零す結を見ながら清那はある一つの案を結に提示する。
「誰かと付き合っていたいならさ、俺と付き合ってみる?」
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる