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「ヨウちん、それって浮気じゃね?」
学校で、俺が愚痴のようにヒカルのことや斗貴哉様のことを話していると、それを聞いてた奴らにそんなことを言われた。
「はぁ? なんでだよ。別にプライベートで会うとか、そんなのしてねーし。ただヒカルとは違うなって話してるだけだろ」
「いや、だってよー。どう聞いてもお前、その斗貴哉様とかいう人に恋しちゃってるだろ」
「恋っておまえなー。そんなこっ恥ずかしいこと言ってんじゃねーよ。好きとかそんなんじゃねーし」
「言ってるよーなもんだろ。だったらあのかわいいヒカルちゃんをそこまで貶すことはねーだろ。その斗貴哉って奴が美人系なら、ヒカルちゃんは可愛い系だろ! 比べるのがおかしい」
「そーだぞ。ヒカルちゃん、めっちゃかわいいじゃん。そのへんのアイドルにだって負けてねーよ」
こいつらとヒカルは一度会ったことがある。
一応こいつらも俺同様に有名企業の御曹司とかではあるんだけど、アルファじゃない。それに有名企業と言っても色々あるワケで。そのせいか、こいつらが一度もオメガに会ったことがないっていうから、ヒカルとのデートに偶然を装って会わせたことがあった。
まあ男のオメガなんて公表してない奴のほうが多いらしいし、それよりもなによりも庶民のオメガ自体珍しいもんな。俺の知る限り、ヒカルくらいのもんだ。それも俺と番わせるために公表したようなもんだし。
それで最初は紹介するだけで終わる予定だったんだけど、テンション爆上がりのこいつらと結局その後カラオケを一緒にすることになっちゃって、久々のデートでウキウキだったヒカルに、俺だって後ろめたいもんはあったんだけどね。
でもこいつらに終始「かわいいかわいい」ってチヤホヤされてたんだから、あのニコニコ顔もまんざらでもなかっただろ。だからまあいいだろって思ってたら、あとでそれを聞いた女子たちに、かわいそうなことすんなって怒られた。
「いやでも、マジで斗貴哉様に会ったら、お前らだってびっくりするって。ホントすげーキレイなんだからさ」
「でも結構年上なんだろ? 俺はヒカルちゃん派だなー」
「俺も年上はパス。金持ちのマダムみたいな人に遊ばれるって話なら俺もイケるけどー」
「なんだよそれ~! 俺だってゴージャスで美人のマダムに飼われてみたいっての!」
「だろ~! 極上の女とヒモ暮らしもいいよな~」
ヒカルの話から、そんなくだらない話に横道それて盛り上がっている友人たちに呆れつつ、ぼんやりと窓の外を眺めていると、1人の生徒が校舎から出てくるのがみえた。
今は昼休憩中。これからまだ午後の時間割りが残っているというのに、その生徒は送迎用の車が停まる駐車場のほうへと歩いていく。
見覚えのあるガタイのいい背中に、俺は苦虫を潰したような顔になった。
「ヨウちん何見てんの?」
「んー……べっつにぃ」
「お、あれ、宮前じゃん。もしかして送迎待ちかー?」
俺が嫌な顔してるのに気づいた2人が、窓の外に顔を出す。
「ヨウちん、宮前すっげー嫌いだよな。めっちゃ変な顔してるときって、ぜってー宮前と遭遇してるときだもんなー」
「送迎車待ちってことは、これから仕事ってことか? さすがだなーアイツ。もう親の仕事手伝ってんだろ? まだ高校生なのに幹部候補って本当なんだなー。しかも会社があの大手通信企業って、マジすげーな。」
「早退して仕事って、俺なら勘弁だわー」
校門からデカい高級車が入ってきて、駐車場のほうに行くのが見えた。きっとあれが宮前を迎えにきた車だろう。
「宮前、卒業したあと、大学行きながら仕事もするって聞いたぜ。しかも大学は海外だっていうじゃん。マサチューセッツだっけ? すげーよな。あと自分でも起業するって話だしさ、いやーアルファってのはすげーな。ヨウちんも海外の大学受けんの?」
受けるわけねーだろ!!
考えてもねーよ!! 俺は日本でのんびり大学生活を謳歌すんだよ!!
ヒカルとの結婚のこともあるし、大学在学中にグループ会社のどっかに研修とかそういうのもあるわけだし、海外行くとしたらそのときだし、今から面倒なこと考えたくねーんだよ!!
宮前征佑は、俺の鬼門。
ホントすげー鼻につく。嫌なヤローだ。
背も俺より高いし、俺よりもガタイもいい。英語も喋れて、成績もいい。
女子にはかっこいいって人気みたいだけど、背が高いだけだろ。顔だってスタイルだって俺のほうが上だっつーの!
女子にモテてるのは絶対俺のほうで、家柄だって俺んちのほうが格は上!
それなのに俺に挨拶一つしねーし、俺よりも身長高いからって上からジロジロ見てくるのも礼儀がなってねーし、ちょっと俺より頭いいからってさ、あいつの見下したような態度がまた腹立つ。
「ほんとマジでちょーし乗ってるよなー、アイツ」
「ヨウちん、マジで宮前嫌いだよなー」
俺のぼやきに、ぎゃははと友人たちが笑う。
「まあ、ヨウちんはさ、ヒカルちゃんを大事にするところからだわ。最近すっごい邪険にしてんのかわいそーだし、誕生日くらいは一緒にいてやんなよ」
「そ。いつかヒカルちゃんに愛想つかされちまうぜー」
「うっせー」
愛想をつかすなら、ヒカルじゃなく俺の方だっての。
友人らとそんな話をしてからしばらくして、斗貴哉様の婚約が決まったという噂を聞いた。
相手はなんとあの宮前。
旧家の花咲家とのコネクションなんか、どういう手を使ったのかは知らないけど、ほんとマジ嫌いだわあいつ。
学校で、俺が愚痴のようにヒカルのことや斗貴哉様のことを話していると、それを聞いてた奴らにそんなことを言われた。
「はぁ? なんでだよ。別にプライベートで会うとか、そんなのしてねーし。ただヒカルとは違うなって話してるだけだろ」
「いや、だってよー。どう聞いてもお前、その斗貴哉様とかいう人に恋しちゃってるだろ」
「恋っておまえなー。そんなこっ恥ずかしいこと言ってんじゃねーよ。好きとかそんなんじゃねーし」
「言ってるよーなもんだろ。だったらあのかわいいヒカルちゃんをそこまで貶すことはねーだろ。その斗貴哉って奴が美人系なら、ヒカルちゃんは可愛い系だろ! 比べるのがおかしい」
「そーだぞ。ヒカルちゃん、めっちゃかわいいじゃん。そのへんのアイドルにだって負けてねーよ」
こいつらとヒカルは一度会ったことがある。
一応こいつらも俺同様に有名企業の御曹司とかではあるんだけど、アルファじゃない。それに有名企業と言っても色々あるワケで。そのせいか、こいつらが一度もオメガに会ったことがないっていうから、ヒカルとのデートに偶然を装って会わせたことがあった。
まあ男のオメガなんて公表してない奴のほうが多いらしいし、それよりもなによりも庶民のオメガ自体珍しいもんな。俺の知る限り、ヒカルくらいのもんだ。それも俺と番わせるために公表したようなもんだし。
それで最初は紹介するだけで終わる予定だったんだけど、テンション爆上がりのこいつらと結局その後カラオケを一緒にすることになっちゃって、久々のデートでウキウキだったヒカルに、俺だって後ろめたいもんはあったんだけどね。
でもこいつらに終始「かわいいかわいい」ってチヤホヤされてたんだから、あのニコニコ顔もまんざらでもなかっただろ。だからまあいいだろって思ってたら、あとでそれを聞いた女子たちに、かわいそうなことすんなって怒られた。
「いやでも、マジで斗貴哉様に会ったら、お前らだってびっくりするって。ホントすげーキレイなんだからさ」
「でも結構年上なんだろ? 俺はヒカルちゃん派だなー」
「俺も年上はパス。金持ちのマダムみたいな人に遊ばれるって話なら俺もイケるけどー」
「なんだよそれ~! 俺だってゴージャスで美人のマダムに飼われてみたいっての!」
「だろ~! 極上の女とヒモ暮らしもいいよな~」
ヒカルの話から、そんなくだらない話に横道それて盛り上がっている友人たちに呆れつつ、ぼんやりと窓の外を眺めていると、1人の生徒が校舎から出てくるのがみえた。
今は昼休憩中。これからまだ午後の時間割りが残っているというのに、その生徒は送迎用の車が停まる駐車場のほうへと歩いていく。
見覚えのあるガタイのいい背中に、俺は苦虫を潰したような顔になった。
「ヨウちん何見てんの?」
「んー……べっつにぃ」
「お、あれ、宮前じゃん。もしかして送迎待ちかー?」
俺が嫌な顔してるのに気づいた2人が、窓の外に顔を出す。
「ヨウちん、宮前すっげー嫌いだよな。めっちゃ変な顔してるときって、ぜってー宮前と遭遇してるときだもんなー」
「送迎車待ちってことは、これから仕事ってことか? さすがだなーアイツ。もう親の仕事手伝ってんだろ? まだ高校生なのに幹部候補って本当なんだなー。しかも会社があの大手通信企業って、マジすげーな。」
「早退して仕事って、俺なら勘弁だわー」
校門からデカい高級車が入ってきて、駐車場のほうに行くのが見えた。きっとあれが宮前を迎えにきた車だろう。
「宮前、卒業したあと、大学行きながら仕事もするって聞いたぜ。しかも大学は海外だっていうじゃん。マサチューセッツだっけ? すげーよな。あと自分でも起業するって話だしさ、いやーアルファってのはすげーな。ヨウちんも海外の大学受けんの?」
受けるわけねーだろ!!
考えてもねーよ!! 俺は日本でのんびり大学生活を謳歌すんだよ!!
ヒカルとの結婚のこともあるし、大学在学中にグループ会社のどっかに研修とかそういうのもあるわけだし、海外行くとしたらそのときだし、今から面倒なこと考えたくねーんだよ!!
宮前征佑は、俺の鬼門。
ホントすげー鼻につく。嫌なヤローだ。
背も俺より高いし、俺よりもガタイもいい。英語も喋れて、成績もいい。
女子にはかっこいいって人気みたいだけど、背が高いだけだろ。顔だってスタイルだって俺のほうが上だっつーの!
女子にモテてるのは絶対俺のほうで、家柄だって俺んちのほうが格は上!
それなのに俺に挨拶一つしねーし、俺よりも身長高いからって上からジロジロ見てくるのも礼儀がなってねーし、ちょっと俺より頭いいからってさ、あいつの見下したような態度がまた腹立つ。
「ほんとマジでちょーし乗ってるよなー、アイツ」
「ヨウちん、マジで宮前嫌いだよなー」
俺のぼやきに、ぎゃははと友人たちが笑う。
「まあ、ヨウちんはさ、ヒカルちゃんを大事にするところからだわ。最近すっごい邪険にしてんのかわいそーだし、誕生日くらいは一緒にいてやんなよ」
「そ。いつかヒカルちゃんに愛想つかされちまうぜー」
「うっせー」
愛想をつかすなら、ヒカルじゃなく俺の方だっての。
友人らとそんな話をしてからしばらくして、斗貴哉様の婚約が決まったという噂を聞いた。
相手はなんとあの宮前。
旧家の花咲家とのコネクションなんか、どういう手を使ったのかは知らないけど、ほんとマジ嫌いだわあいつ。
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