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第21話:不穏な噂と迫る危機
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あれから数日が過ぎ、グリーゼ王国では新設される災害管理局の準備が着々と進んでいた。
セシルは中心メンバーとして奔走し、日々の業務に追われるような忙しさにありながらも、充実した気持ちで過ごしている。
先日の南部峡谷における魔物襲撃事件を受けて、他の地域でも似たような事態が起こらないよう、オズワルドやアーロンたちと連携して各地を視察する計画も立てている。
その一方で、ラヴィーニア王国の王太子・レナードからの「復縁要請」という個人的な申し出は、セシルの心を少しだけざわつかせていた。
もっとも、彼女自身は今のグリーゼ王国での生活に満足しており、戻るつもりは微塵もない。
そこに揺らぎはまったくないのだが、かつて婚約者だった人物から寄せられる強い執着――それがどこか不穏な影を落としているのではないか、そんな予感を拭えずにいた。
◇
「セシル様、少しよろしいでしょうか」
災害管理局の仮オフィスとして準備している部屋で、同僚の職員が恐る恐る声をかけてきた。
彼女は数日前から一緒に仕事をしている文書係の女性で、セシルより年上だが内気な性格のようである。
その彼女が、どこか落ち着かない面持ちで書類を胸に抱いていた。
「どうしたんですか? もしかして書類の不備がありました?」
「いえ、不備というより……こちらをご覧ください。先ほど届いた報告書なのですが、少し気になる箇所がありまして」
差し出された紙を受け取り、セシルはさっと目を通す。
そこには、北部の辺境地域での不審者の目撃情報がまとめられていた。
それ自体は珍しいことではないが、どうやら“ラヴィーニア王国の人間らしき集団が、大量の物資を運び込んでいる”という噂があり、現地住民が警戒しているとのことである。
「物資を運び込んでいる……軍事的な動きではないですよね? ただの交易品かもしれませんが、北部はもともと雪深く、道が狭い地域。大量の物資を運ぶには不向きですが」
「はい。それが不審に思われているようです。実際にはまだ断定的な情報はなく、ただ“見かけた”という程度ですが……気になりますよね」
セシルは報告書に目を落としながら、小さく唇を噛む。
ラヴィーニア王国の商人が北部ルートを使うのは珍しくないが、“大量の物資”という表現がひっかかる。
グリーゼ王国の中央を通る主要街道のほうがはるかに輸送には便利だからだ。
わざわざ雪深い辺境を通るとなれば、何か隠したい目的があるのではないか……そんな考えが頭をかすめる。
「……ありがとうございます。この情報、オズワルド将軍やアーロン副官とも共有して、今後の対応を検討したほうが良さそうですね」
セシルがそう告げると、文書係の女性は安堵のため息をつき、「よろしくお願いします」と微笑んで頭を下げた。
◇
昼下がり、セシルはオズワルドの執務室を訪れ、先ほどの報告について相談する。
オズワルドは地図を広げ、辺境地帯の街道ルートを確認しながら厳しい表情を浮かべていた。
「確かに妙だな。北部の道は険しいし、交易には向かない。盗賊や魔物も出やすいし、わざわざ選ぶメリットは少ないはずだ」
「そうなんです。もし本当にラヴィーニア王国の民間業者が通っているのなら、なぜこんなルートを選ぶのか。何か別の意図があるかもしれません」
セシルは指で地図の一部をなぞりながら、自分なりの推測を伝える。
たとえば“魔法鉱石”や“特殊な薬草”といった、北部でしか採れない貴重な資源を手に入れようとしている可能性がある。
あるいは、グリーゼ王国を通らずにラヴィーニアの領土へ侵入する秘密の抜け道を確保しようとしているのかもしれない。
「いずれにしても、見過ごすわけにはいかんな。国境近くならまだしも、グリーゼの領内を通過している以上、我々は何が運ばれているかチェックする権利がある」
「はい。私もそう思います。とはいえ、下手に騎士団を動かして“疑っている”と勘違いされるのも避けたいですね。ラヴィーニアとの関係は、表向きは友好を装っているはずですし……」
セシルは考え込むように眉をひそめる。
先日のレナードの言動を思い返しても、彼個人の動きとラヴィーニア全体の政策は必ずしも一致しないかもしれない。
もしラヴィーニア王国が何らかの“策略”を進めているとしたら、今後のグリーゼ王国にとって大きな脅威になりかねない。
「とりあえず、アーロンに探りを入れさせよう。北部の役所や村落にも協力を要請し、あくまで“災害対策の視点”で巡回調査するという建前にすれば角が立たんはずだ」
「わかりました。私も手伝います。報告書の精査と、他の地域からの情報も集約してみますね」
セシルとオズワルドは顔を見合わせ、互いに強い決意を示す。
災害管理局を立ち上げつつ、国家の安全保障にも目を配らなければならない。
それは並大抵の苦労ではないが、二人はもう心を決めていた。
◇
「セシル、くれぐれも気をつけろよ。ラヴィーニア王国といっても、王子個人の思惑だけでは動いていないだろう。裏には別の勢力がいるかもしれない」
執務室を出る前に、オズワルドが低い声で念を押す。
セシルは頷き、その視線をまっすぐに受け止める。
「はい、承知しています。何があっても、私はグリーゼを守るために行動します」
その言葉に、オズワルドは満足げに微笑んだ。
そしてセシルは改めて書類を抱え直し、足早に災害管理局の仮オフィスへ戻っていく。
どこか胸がざわめくような不安もあるが、それ以上に“自分の役目を全うしたい”という意志が強く、彼女を前に進ませていた。
◇
夜、更け。
セシルは官吏としての仕事を終え、自宅として用意された宿舎の一室に帰ってきた。
机の上に資料を広げ、明日の準備を進めるうちに、ふとレナードのことが頭をよぎる。
彼がどの程度、ラヴィーニア王国の方針に関わっているのかは分からない。
しかし、レナードがこの国に興味を抱き、しかも強引にでもセシルを取り戻そうとしているのは事実だろう。
「もしあの人が本気で動くなら、ラヴィーニアの貴族派閥や軍部を巻き込む可能性だってある……」
セシルはペンを置き、小さく溜め息をつく。
そして自分の左手を見つめ、かつてレナードから贈られた婚約指輪の跡を思い出す。
あのときは、心から彼に仕えることこそが幸せだと信じていた。
けれど今はもう、違う道を歩んでいる。
「私はもう、あなたの雑用係じゃない。グリーゼ王国の官吏で、オズワルド将軍の仲間……そしていつか、もっと特別な存在になれたらいいな」
胸の奥に芽生えつつある恋心をかみしめながら、セシルは明かりを消す。
不穏な噂が胸を重くするが、決して自分の生き方を曲げるつもりはないのだ。
セシルは中心メンバーとして奔走し、日々の業務に追われるような忙しさにありながらも、充実した気持ちで過ごしている。
先日の南部峡谷における魔物襲撃事件を受けて、他の地域でも似たような事態が起こらないよう、オズワルドやアーロンたちと連携して各地を視察する計画も立てている。
その一方で、ラヴィーニア王国の王太子・レナードからの「復縁要請」という個人的な申し出は、セシルの心を少しだけざわつかせていた。
もっとも、彼女自身は今のグリーゼ王国での生活に満足しており、戻るつもりは微塵もない。
そこに揺らぎはまったくないのだが、かつて婚約者だった人物から寄せられる強い執着――それがどこか不穏な影を落としているのではないか、そんな予感を拭えずにいた。
◇
「セシル様、少しよろしいでしょうか」
災害管理局の仮オフィスとして準備している部屋で、同僚の職員が恐る恐る声をかけてきた。
彼女は数日前から一緒に仕事をしている文書係の女性で、セシルより年上だが内気な性格のようである。
その彼女が、どこか落ち着かない面持ちで書類を胸に抱いていた。
「どうしたんですか? もしかして書類の不備がありました?」
「いえ、不備というより……こちらをご覧ください。先ほど届いた報告書なのですが、少し気になる箇所がありまして」
差し出された紙を受け取り、セシルはさっと目を通す。
そこには、北部の辺境地域での不審者の目撃情報がまとめられていた。
それ自体は珍しいことではないが、どうやら“ラヴィーニア王国の人間らしき集団が、大量の物資を運び込んでいる”という噂があり、現地住民が警戒しているとのことである。
「物資を運び込んでいる……軍事的な動きではないですよね? ただの交易品かもしれませんが、北部はもともと雪深く、道が狭い地域。大量の物資を運ぶには不向きですが」
「はい。それが不審に思われているようです。実際にはまだ断定的な情報はなく、ただ“見かけた”という程度ですが……気になりますよね」
セシルは報告書に目を落としながら、小さく唇を噛む。
ラヴィーニア王国の商人が北部ルートを使うのは珍しくないが、“大量の物資”という表現がひっかかる。
グリーゼ王国の中央を通る主要街道のほうがはるかに輸送には便利だからだ。
わざわざ雪深い辺境を通るとなれば、何か隠したい目的があるのではないか……そんな考えが頭をかすめる。
「……ありがとうございます。この情報、オズワルド将軍やアーロン副官とも共有して、今後の対応を検討したほうが良さそうですね」
セシルがそう告げると、文書係の女性は安堵のため息をつき、「よろしくお願いします」と微笑んで頭を下げた。
◇
昼下がり、セシルはオズワルドの執務室を訪れ、先ほどの報告について相談する。
オズワルドは地図を広げ、辺境地帯の街道ルートを確認しながら厳しい表情を浮かべていた。
「確かに妙だな。北部の道は険しいし、交易には向かない。盗賊や魔物も出やすいし、わざわざ選ぶメリットは少ないはずだ」
「そうなんです。もし本当にラヴィーニア王国の民間業者が通っているのなら、なぜこんなルートを選ぶのか。何か別の意図があるかもしれません」
セシルは指で地図の一部をなぞりながら、自分なりの推測を伝える。
たとえば“魔法鉱石”や“特殊な薬草”といった、北部でしか採れない貴重な資源を手に入れようとしている可能性がある。
あるいは、グリーゼ王国を通らずにラヴィーニアの領土へ侵入する秘密の抜け道を確保しようとしているのかもしれない。
「いずれにしても、見過ごすわけにはいかんな。国境近くならまだしも、グリーゼの領内を通過している以上、我々は何が運ばれているかチェックする権利がある」
「はい。私もそう思います。とはいえ、下手に騎士団を動かして“疑っている”と勘違いされるのも避けたいですね。ラヴィーニアとの関係は、表向きは友好を装っているはずですし……」
セシルは考え込むように眉をひそめる。
先日のレナードの言動を思い返しても、彼個人の動きとラヴィーニア全体の政策は必ずしも一致しないかもしれない。
もしラヴィーニア王国が何らかの“策略”を進めているとしたら、今後のグリーゼ王国にとって大きな脅威になりかねない。
「とりあえず、アーロンに探りを入れさせよう。北部の役所や村落にも協力を要請し、あくまで“災害対策の視点”で巡回調査するという建前にすれば角が立たんはずだ」
「わかりました。私も手伝います。報告書の精査と、他の地域からの情報も集約してみますね」
セシルとオズワルドは顔を見合わせ、互いに強い決意を示す。
災害管理局を立ち上げつつ、国家の安全保障にも目を配らなければならない。
それは並大抵の苦労ではないが、二人はもう心を決めていた。
◇
「セシル、くれぐれも気をつけろよ。ラヴィーニア王国といっても、王子個人の思惑だけでは動いていないだろう。裏には別の勢力がいるかもしれない」
執務室を出る前に、オズワルドが低い声で念を押す。
セシルは頷き、その視線をまっすぐに受け止める。
「はい、承知しています。何があっても、私はグリーゼを守るために行動します」
その言葉に、オズワルドは満足げに微笑んだ。
そしてセシルは改めて書類を抱え直し、足早に災害管理局の仮オフィスへ戻っていく。
どこか胸がざわめくような不安もあるが、それ以上に“自分の役目を全うしたい”という意志が強く、彼女を前に進ませていた。
◇
夜、更け。
セシルは官吏としての仕事を終え、自宅として用意された宿舎の一室に帰ってきた。
机の上に資料を広げ、明日の準備を進めるうちに、ふとレナードのことが頭をよぎる。
彼がどの程度、ラヴィーニア王国の方針に関わっているのかは分からない。
しかし、レナードがこの国に興味を抱き、しかも強引にでもセシルを取り戻そうとしているのは事実だろう。
「もしあの人が本気で動くなら、ラヴィーニアの貴族派閥や軍部を巻き込む可能性だってある……」
セシルはペンを置き、小さく溜め息をつく。
そして自分の左手を見つめ、かつてレナードから贈られた婚約指輪の跡を思い出す。
あのときは、心から彼に仕えることこそが幸せだと信じていた。
けれど今はもう、違う道を歩んでいる。
「私はもう、あなたの雑用係じゃない。グリーゼ王国の官吏で、オズワルド将軍の仲間……そしていつか、もっと特別な存在になれたらいいな」
胸の奥に芽生えつつある恋心をかみしめながら、セシルは明かりを消す。
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