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第15話:閃光の援軍と心の交流

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 深夜、息詰まる戦いが続く中、峡谷の上空にひと筋の光が走った。
 それは魔術師による遠方照明魔法で、援軍が近づいている合図だった。

 ◇

「おお……! 上から光が!」

 護衛兵が声を上げる。
 崖の上に現れた数十名の兵と魔術師集団。
 その先頭にはアーロンの姿があった。

「やはり大変な戦闘になっていましたか。間に合ってよかった」

 アーロンたちはすぐさま魔法で崖周辺に結界を張り、オークたちの足止めを狙う。
 さらに弓矢部隊が岩陰から狙い撃ちし、戦況は一気に好転し始めた。

「このまま一気に押し返すぞ!」

 オズワルドが檄を飛ばし、魔術師たちも攻撃魔法で援護する。
 オークたちはたまらず退却を始め、激闘はようやく集落から離れた場所へと移動していく。

 ◇

 セシルは本部テントで戦況を確認しながら、村の人々を安心させるために声をかける。

「援軍が来てくれたので、もう少しで安全になります。皆さん、もう少し避難先でお待ちくださいね」

 住民たちはほっとした表情を浮かべ、セシルに感謝の言葉を何度も伝える。

「貴女が素早く救援を呼んでくださったおかげです。本当にありがとうございます」

「いえ、私だけの力ではありません。皆が落ち着いて行動してくださったおかげですよ」

 セシルも少し疲労を感じながら微笑むが、その瞬間、テントの入り口が開きオズワルドが戻ってきた。
 彼の鎧は傷や土埃にまみれていたが、瞳は生気にあふれている。

「将軍、おかえりなさい。怪我はありませんか?」

「かすり傷程度だ。アーロンと合流できたから、戦況はほぼ収束した。残党の追撃はアーロンに任せてある」

「よかった……本当に、よかったです」

 セシルはほっと胸を撫で下ろす。
 オズワルドがふと近寄り、彼女の肩に軽く手を置いた。

「お前のおかげで助かった。もし援軍が間に合わなければ、もっと時間がかかっていたはずだ」

「そんな……私は書状を送っただけです。戦ったのは将軍や兵士の皆さんですから」

「お前の司令塔としての働きも大きい。村人の避難誘導も的確だった。……本当にありがとう、セシル」

 そう言って、オズワルドは苦笑交じりに続ける。

「正直、こんなに激しい戦いになるとは思っていなかった。だが、お前がいてくれて心強かったよ」

 セシルは頬を染め、照れ臭そうに視線を落とす。
 そして自分自身も不思議なほど嬉しい気持ちを抑えきれない。

「私も、将軍が前線で踏ん張ってくれていたからこそ、落ち着いて指示を出せました。ありがとうございます」

 小さな声で返したその言葉に、オズワルドはかすかに笑みをこぼす。
 この地で共に汗を流し、命を懸けて守り合うという経験。
 それは二人の間に、かつてなかった特別な絆を育んでいるように感じられた。

 ◇

 その後、夜明け頃にはオークの脅威は完全に去った。
 村に大きな被害はなく、住民の怪我人も軽傷で済んだと確認でき、安堵の空気が広がる。

「ふう、よかった……。念のため、しばらく警戒は続けますが、一先ず落ち着けるでしょう」

 アーロンがそう言って隊をまとめる横で、セシルとオズワルドは最後の確認作業を行っていた。

「これで、集落の皆さんも少しは安心ですね。地形や防衛の実情も分かりましたし、改めて整備計画に反映させたいです」

「そうだな。お前のプランが完成すれば、同じような被害を繰り返さないで済むはずだ」

 激闘の夜を経て、二人の心には確かな手応えが残っていた。
 互いに支え合いながら、この国を守り抜く――そんな強い意志が芽生え始めているのを、セシルははっきりと感じるのだった。
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