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第8章 決戦の刻

五話 破滅への幕開け

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ーー降り続く雪は次第に辺りに広がっていき、肌寒くなっていく。


明日にはきっと積もり、辺り一面の銀世界となる事だろう。


「家に帰ろ……ユキ」


早く暖かい部屋へと。温かい飲み物でも飲んで身体を暖めないと、風邪を引きかねない。


「はい……」


ユキの素直な返事に、アミは安堵する。


二人で戻ろうと踵を返した時、アミは異変を感じ取った。


“えっ!?”


森がざわめいている事。それはこの地に、邪悪な何かが侵入してきた警告でもあった。


「大勢の邪悪な者達が……まっすぐこっちに向かってきてる? これは……狂座!!」


アミはそう言い、その方向に目を向ける。


ユキもすぐにアミの異変を察知した。


森のざわめきは破滅への幕開けーーと。


“こちらから出向くつもりが、先手を取られてしまいましたね……。だが、狂座が総力を挙げて来たのなら、此処でケリをつけるーー”


「アミ! 貴女は急ぎ村に戻り、闘えぬ者達の避難と村への防衛網を! 此処は私が食い止めます」


ユキはその邪悪な者達の侵入を感じ、震えていたアミの目を見据えてそう伝える。


「駄目よ! 敵の数が多過ぎるわ! ユキ一人で全部背負うのはやめてと言ったでしょう!? 私も一緒に闘う!」


ユキの言葉に、はっと正気を取り戻したアミはそう応える。


これは一人一人が並大抵では無い。それが何十と此方に向かって来ているのだ。


「この手勢では一人も二人も同じ事でしょう。それに……」


ユキは少し困った様な顔で、でも寂しげな笑顔でアミに向き合う。


「足手まとい……なんですよ」


ユキは戸惑うアミの額へ、人差し指を軽く押し込んだ。


「ーーえっ!?」


それと同時にアミの身体から力が抜けたかの様に崩れ落ち、意識も混濁していく。


「ユキ? 何……をーー」


意識を失っていき崩れ落ちていくアミを、ユキはしっかりと抱き止めた。


辺りは雪がちらつき、寒くなっていく。


ユキはすぐ近くに、無氷による力で氷の形状を創りだした。それはさながら、氷のかまくらの様に。


「此処なら外より暖かいですから……」


ユキはその氷のかまくらの中に彼女を寝かせる。


「すみませんアミ、こんな事をして……。でも貴女をみすみす危険な目に遭わせる訳にはいかないんです」


“私は貴女を護る為の刀なのだから”


そうユキはそっと立ち上がり、目を閉じて横になっているアミを見据える。


「大丈夫です。目が醒めた頃には全てが終わってます。アミ、ありがとう。そしてごめんなさい……。これは自分で選んだ道ですからーー」


ユキは氷のかまくらをそっと後にし、降り続く雪がその姿を掻き消す様、森の奥へと消えて逝くのだった。
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