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第8章 決戦の刻
一話 愛する家族
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ーー早朝。
アミは穏やかな顔で眠っているユキの頭を愛おしそうに撫でながら、そろそろ出掛ける準備をする。
今日は夜摩一族先代巫女であった、おばば様に話があると呼ばれた日。
アミ一人で来る様に言われているので、ユキが寝ている間に行ってこようと決めていた。
『朝ご飯は少しだけ待っててね』
そうユキに囁きかける様、家を後にする。
“……アミ?”
寝ているユキを起こさぬ様、物音を立てず、そっと家を出たアミだったがユキは雰囲気で気付き、目を覚ます。
アミを護ると決めている彼にとって、いつ狂座が攻めてくるか分からない状況の中、アミの傍らにいる為、ユキはアミの跡を追う事にした。
それともう一つ、彼には大きな決心があった。
***********
“一人で来るようにって、一体何の話かしら?”
正直な処、話は早く終わってアミはユキに朝食を早く作ってあげないと、という気持ちの方で一杯だった。
だから後ろから着けてくるユキに気付く事無く、アミはおばばの屋敷へと急ぐ。
おばばの屋敷までそう遠くはない。
すぐに目的の屋敷が見えると、アミは屋敷内に足を踏み入れ、指定されていた居間の障子の前に立つ。
「おばば様。アミです、入りますね」
アミは少し深呼吸をし、意を決して障子を開き、居間の中へと入る。
目の前に座っていた白髪の巫女衣装を着た老婆の前に、アミは正座し頭を深々と下げた。
「朝早くにすまないねぇ」
齢七十位の老婆とはいえ、先代巫女の雰囲気と壮厳さを醸し出す老婆はそう言い、アミに頭を上げるよう促す。
その間ユキは居間の外、障子の横で腕を組み、背を壁にもたれる様に佇んでいた。
「おばば様、お話とは何でしょう?」
顔を上げたアミは目の前の老婆に、その主旨を問い掛けた。
「あの少年……。キリトと同じ特異点と言う事は、アミは知っておるかの?」
「勿論知っていますが、それが何か?」
今更変な事を聞くものだとアミは思った。
特異点が常人とは違う事も。ただ、人を超えた力を持つだけで、本質は一緒。何も変わる事はない。
「私は恐ろしい。キリトと同じあの眼が。いつか我々に厄災をもたらす気がしてならないのじゃよ……」
「そんな事……」
アミには彼女の言う事が理解出来なかった。
人と違えば畏怖の対象になる事は分かる。
特異点の持つ、あの人知を超えた力を目の当たりにすれば、誰もがそう思う事だろう。
だからと言って、アミはその事でユキの事を貶めて欲しくなかった。
きっとキリトも、その力の事で一族から離れていったのかも知れない。
ユキは二人の話を壁越しに黙って聴いていた。
“分かっていた……”
自分は歓迎されていない事を。あくまでも狂座から光界玉を護る為の、利害を越えた協力関係に過ぎない事も。
本来特異点の力は、この世に在ってはならないーー
“だからこそ、九夜は私を消そうとしたのだから……”
この話し合いなら、わざわざ自分が近くに居る必要も無いとユキがその場から離れようとした時、内からアミの心外とでも言わんばかりの声が聞こえてきた。
「そんな事言わないでください! ユキは私の大切な家族です。私はユキの事を信じているし、愛してますから」
その言葉にユキは不意に込み上げてくるものを感じ、右手で顔を覆う。
“家族”
“愛してます”
抑え様の無い位に、目尻が熱くなっていく。
顔を右手で抑えたまま、その場から立ち去ろうと。
「ーー誰!?」
立ち去る時、驚いた様なアミの声が聴こえたが、構わず走り出した。
アミは穏やかな顔で眠っているユキの頭を愛おしそうに撫でながら、そろそろ出掛ける準備をする。
今日は夜摩一族先代巫女であった、おばば様に話があると呼ばれた日。
アミ一人で来る様に言われているので、ユキが寝ている間に行ってこようと決めていた。
『朝ご飯は少しだけ待っててね』
そうユキに囁きかける様、家を後にする。
“……アミ?”
寝ているユキを起こさぬ様、物音を立てず、そっと家を出たアミだったがユキは雰囲気で気付き、目を覚ます。
アミを護ると決めている彼にとって、いつ狂座が攻めてくるか分からない状況の中、アミの傍らにいる為、ユキはアミの跡を追う事にした。
それともう一つ、彼には大きな決心があった。
***********
“一人で来るようにって、一体何の話かしら?”
正直な処、話は早く終わってアミはユキに朝食を早く作ってあげないと、という気持ちの方で一杯だった。
だから後ろから着けてくるユキに気付く事無く、アミはおばばの屋敷へと急ぐ。
おばばの屋敷までそう遠くはない。
すぐに目的の屋敷が見えると、アミは屋敷内に足を踏み入れ、指定されていた居間の障子の前に立つ。
「おばば様。アミです、入りますね」
アミは少し深呼吸をし、意を決して障子を開き、居間の中へと入る。
目の前に座っていた白髪の巫女衣装を着た老婆の前に、アミは正座し頭を深々と下げた。
「朝早くにすまないねぇ」
齢七十位の老婆とはいえ、先代巫女の雰囲気と壮厳さを醸し出す老婆はそう言い、アミに頭を上げるよう促す。
その間ユキは居間の外、障子の横で腕を組み、背を壁にもたれる様に佇んでいた。
「おばば様、お話とは何でしょう?」
顔を上げたアミは目の前の老婆に、その主旨を問い掛けた。
「あの少年……。キリトと同じ特異点と言う事は、アミは知っておるかの?」
「勿論知っていますが、それが何か?」
今更変な事を聞くものだとアミは思った。
特異点が常人とは違う事も。ただ、人を超えた力を持つだけで、本質は一緒。何も変わる事はない。
「私は恐ろしい。キリトと同じあの眼が。いつか我々に厄災をもたらす気がしてならないのじゃよ……」
「そんな事……」
アミには彼女の言う事が理解出来なかった。
人と違えば畏怖の対象になる事は分かる。
特異点の持つ、あの人知を超えた力を目の当たりにすれば、誰もがそう思う事だろう。
だからと言って、アミはその事でユキの事を貶めて欲しくなかった。
きっとキリトも、その力の事で一族から離れていったのかも知れない。
ユキは二人の話を壁越しに黙って聴いていた。
“分かっていた……”
自分は歓迎されていない事を。あくまでも狂座から光界玉を護る為の、利害を越えた協力関係に過ぎない事も。
本来特異点の力は、この世に在ってはならないーー
“だからこそ、九夜は私を消そうとしたのだから……”
この話し合いなら、わざわざ自分が近くに居る必要も無いとユキがその場から離れようとした時、内からアミの心外とでも言わんばかりの声が聞こえてきた。
「そんな事言わないでください! ユキは私の大切な家族です。私はユキの事を信じているし、愛してますから」
その言葉にユキは不意に込み上げてくるものを感じ、右手で顔を覆う。
“家族”
“愛してます”
抑え様の無い位に、目尻が熱くなっていく。
顔を右手で抑えたまま、その場から立ち去ろうと。
「ーー誰!?」
立ち去る時、驚いた様なアミの声が聴こえたが、構わず走り出した。
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