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第7章 破滅への序曲
三話 第四十七軍団長
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「これで全ての情報を送信……と」
集落の外れにある森の木陰で、黒装束を纏った赤い髪の一人の男が、腕に嵌めてある機械の操作をしていた。
「……任務完了」
狂座第四十七軍団長スクはその瞬間、今までの緊張を解き、思わず笑みが零れそうになる。
数日に渡る、完全に気配を消しての調査は流石に骨が折れた。
何より特異点の存在。
戦闘禁止令。
スクはその赤髪をかき上げながら夜空を見上げ、ホッと息を吐く。
残された役目は本部へ帰還するだけ。
近い内にこの地は、一人残らず消滅するだろう。女子供問わず、全員皆殺しの予定だ。
そう思うとスクは自分の功績により、この任務が成功に導かれた事になる事を思うと、自然と心が昂揚していく。
「今までの違和感は、これだったんですね」
そんな心の緩みが、近づいて来る者が自分の近くにまで侵入を許している事に、スクは気付かなかった。
「なっ!」
“何時の間に!?”
スクはその声がした方へと振り返ると、白銀髪をした少年が立っていた。
それは雪一文字を携えたユキだった。
「この私に気配を悟らせず、ここまで接近を許すとは……」
“流石は特異点と謂った所か……”
スクは数日に渡る調査の結果、侍レベルが異常に低く、それに対して異質な迄の雰囲気を持つこの少年こそが、特異点である事を確信していた。
勿論、それらは全て本部へ報告送信済みであった。
「アナタの気配の消し方は流石でしたが、気の緩みが出たのは失策でしたね」
ユキは冷酷にスクを見据えて囁きかける。
「ちっ……」
“どうする? 逃げるか? だがーー”
恐らく逃げられない。逃がすつもりが無い事を、スクは彼の雰囲気で、すぐに察知した。
「全く……」
“見た目は餓鬼だが、こうやって感じる雰囲気は、とんでもない化け物だなコイツは……”
逃げられない以上、闘う以外に道は無い。
スクはサーモの電源を落とした。
下手に測定して、敢えて絶望に浸る必要は無い。どの道、相手は臨界突破の特異点。
とても及ばない事は、測定しなくても雰囲気で一目瞭然。
機械に頼り過ぎると、見えるものまで見誤る事を、良く知っていたスクの判断だった。
“まあいい……”
スクは腰に差した刀を鞘から、ゆっくりと抜き放つ。
特に何の変哲も無い日本刀。
“私の任務は既に完了している。特異点と呼ばれた者との闘いを最後に果てるのも、悪くは無いだろう”
「私は狂座第四十七軍団長スク、イージ。いざ参る」
スクは刀を上段に構え、ユキを見据える。
「軍団長ですか。確かに他の雑魚とは雰囲気が違いますね」
ユキも雪一文字の柄に手を添え、スクを見据えた。
「ーーそれでも全くの役不足ですが、相手になります」
“見た処、普通の刀の様ですが。軍団長……果たしてどの程度の者か”
狂座の者は、それぞれが皆特殊な能力を持っている事は、前の師団長との闘いで立証済み。
“何かありますね……。相手の出方を待ってみますか”
ユキは自分から攻めず、相手の後の先を取る事にした。
自分から強引に攻め崩す事は、レベル差を考えれば容易だが、初の軍団長クラスの相手なのだから、力量を知る意味と今後の事を考えて、此処は慎重になるべきだと判断したのだった。
集落の外れにある森の木陰で、黒装束を纏った赤い髪の一人の男が、腕に嵌めてある機械の操作をしていた。
「……任務完了」
狂座第四十七軍団長スクはその瞬間、今までの緊張を解き、思わず笑みが零れそうになる。
数日に渡る、完全に気配を消しての調査は流石に骨が折れた。
何より特異点の存在。
戦闘禁止令。
スクはその赤髪をかき上げながら夜空を見上げ、ホッと息を吐く。
残された役目は本部へ帰還するだけ。
近い内にこの地は、一人残らず消滅するだろう。女子供問わず、全員皆殺しの予定だ。
そう思うとスクは自分の功績により、この任務が成功に導かれた事になる事を思うと、自然と心が昂揚していく。
「今までの違和感は、これだったんですね」
そんな心の緩みが、近づいて来る者が自分の近くにまで侵入を許している事に、スクは気付かなかった。
「なっ!」
“何時の間に!?”
スクはその声がした方へと振り返ると、白銀髪をした少年が立っていた。
それは雪一文字を携えたユキだった。
「この私に気配を悟らせず、ここまで接近を許すとは……」
“流石は特異点と謂った所か……”
スクは数日に渡る調査の結果、侍レベルが異常に低く、それに対して異質な迄の雰囲気を持つこの少年こそが、特異点である事を確信していた。
勿論、それらは全て本部へ報告送信済みであった。
「アナタの気配の消し方は流石でしたが、気の緩みが出たのは失策でしたね」
ユキは冷酷にスクを見据えて囁きかける。
「ちっ……」
“どうする? 逃げるか? だがーー”
恐らく逃げられない。逃がすつもりが無い事を、スクは彼の雰囲気で、すぐに察知した。
「全く……」
“見た目は餓鬼だが、こうやって感じる雰囲気は、とんでもない化け物だなコイツは……”
逃げられない以上、闘う以外に道は無い。
スクはサーモの電源を落とした。
下手に測定して、敢えて絶望に浸る必要は無い。どの道、相手は臨界突破の特異点。
とても及ばない事は、測定しなくても雰囲気で一目瞭然。
機械に頼り過ぎると、見えるものまで見誤る事を、良く知っていたスクの判断だった。
“まあいい……”
スクは腰に差した刀を鞘から、ゆっくりと抜き放つ。
特に何の変哲も無い日本刀。
“私の任務は既に完了している。特異点と呼ばれた者との闘いを最後に果てるのも、悪くは無いだろう”
「私は狂座第四十七軍団長スク、イージ。いざ参る」
スクは刀を上段に構え、ユキを見据える。
「軍団長ですか。確かに他の雑魚とは雰囲気が違いますね」
ユキも雪一文字の柄に手を添え、スクを見据えた。
「ーーそれでも全くの役不足ですが、相手になります」
“見た処、普通の刀の様ですが。軍団長……果たしてどの程度の者か”
狂座の者は、それぞれが皆特殊な能力を持っている事は、前の師団長との闘いで立証済み。
“何かありますね……。相手の出方を待ってみますか”
ユキは自分から攻めず、相手の後の先を取る事にした。
自分から強引に攻め崩す事は、レベル差を考えれば容易だが、初の軍団長クラスの相手なのだから、力量を知る意味と今後の事を考えて、此処は慎重になるべきだと判断したのだった。
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