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第5章 仮初めの日常

十四話 戦闘禁止令

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「闘う必要はありません。無駄死にするだけです。第四十七軍団長は元探索師団、その探索能力は狂座に置いて随一と云える存在です」


“ほう……成る程な”


ハルの提案に、関心した様にアザミが呟く。


「今必要なのは戦闘狂ではありません。重要なのは、あの地への確実な侵入経路及び、一族の戦力及び実態調査。そして特異点の存在確認にあります」


ハルは一呼吸置いて続ける。


「そして恐らく特異点はレベル偽装。通常は低レベルに見せ掛ける様、精神にバリアを張る術も心得ている筈」


その為、師団長の二人は相手の実力を見誤り、呆気無く破れた事になる。


ハルの分析は実に正しかった。


「まずは特異点が誰かを特定する事が重要です」


ハルの戦略内容にユーリが口を挟む。


「えぇ~、じゃあボクの出番は?」


ユーリが叱られた子供の様に、ハルに不満を述べた。


「何を言ってるんですかユーリ。そんなの有る訳が無いでしょう?」


ハルの言葉にユーリは、やだやだと駄々をこねる。


“ーーホントに子供なんですから……”


ハルはユーリの駄々っ子ぶりに溜息をつくしかない。


「心配はありません。全ての情報が確保出来次第、我々で総力を以って潰します」


「そう言う事だ。しばらく大人しくしてなユーリ」


ハルの意見に一理有ると思ったアザミは、そうユーリを宥める。


「じゃあ我慢するよ……。残念だけどね☆」


不満そうだが、ユーリはすぐにいつもの笑顔に戻る。


“やれやれ、単純なんだからなぁ……”


ハルとアザミは顔を見合わせ、ユーリの目まぐるしく変わる感情に苦笑した。


それでも三人にとって、ユーリは憎めない存在である事は確かだ。


「よし、ならばまずは情報収集を最優先。暫くは戦闘禁止令を全軍に通達」


ルヅキはその趣旨を高らかに宣言する。


“そう、まずは確実な方法を”


万が一の失敗は許されない。


“冥王様、もう少しだけお待ちください”


四人の想いは皆一緒だった。


決して仲良しこよしな訳では無いが、深い絆で結ばれていた。


“当主直属部隊”


冥王に選ばれた最強のエリート集団。


「それまで彼等には、束の間の平和を楽しんで貰いましょうか」


ハルが冷酷な笑みを浮かべながら呟く。


やがてくる本当の絶望を。
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