24 / 99
第4章 狂座
二話 当主直属部隊
しおりを挟む
「師団では少し役不足だったか……。なら幾つか軍団を投入すれば早く片が付くんじゃないか?」
そう意見したのはアザミだ。
位階制である狂座。軍団は師団の一つ上の階級となっており、規模も戦力も違う。
各々に軍団を束ねているのは、軍団長と呼ばれる者達で、各々の実力は想像を絶する。
アザミの言う通り、軍団を投入すれば一国をも軽く落とせる程の――
「それがそう簡単な話じゃ無いみたいなんですよアザミ」
だがハルは厄介事を抱えた様な、何か気難しい声と共に溜め息を吐いた。
「夜摩一族と交戦したと思われるシオンは、その生体反応が消失する直前に、彼のサーモが裏コードに移行した形跡が記録されているのです」
ハルのその言葉に、直属達に一気に緊張が走る。
「なん……だと?」
“裏コード移行”
その言葉の持つ意味がどの様な事態なのか、その場に居る者達には深い程に理解していた。
「それって……臨界突破って事だよね?」
それまで無邪気だったユーリの表情が真顔になる。
「サーモの故障じゃないのか? 人間界にそんなの存在するはずが……」
そこまで言って、アザミはハッと気付く。
「まさか特異点が!? 四死刀は三年前に壊滅したはず?」
“特異点”
それは人で在って人で無き存在。
人知を超越した存在。
人として生まれながら、人には持ち得ない異能を生まれながら持っている存在。
彼等の間でも、そうした者を特異点と呼んでいる。
調査の段階で過去、現在と合わせても特異点の存在が判明したのは、現時点で四死刀と呼ばれた四人のみ。
「四死刀が現在、存在しないのは確かでしょう。しかし四死刀の一人“魂縛のキリト”が夜摩一族所縁の者という事を考えればもしや……。特異点の存在も有り得ない話ではありません」
ハルはその最も考えられる可能性を口にする。
だとすると――
「それが確かなら、無策に軍団を投入するのは得策では無いな……」
ルヅキが冷静を装いながらも苛々した口調で語る。
「四死刀との闘いで我々狂座は三人の直属に、二十二もの軍団及び六七もの師団を失っている。冥王様復活の前に、なるべくこれ以上の戦力減少は避けたい処だ……」
ルヅキが昔を思い出したのか、深い溜め息をつく。かつては7人の直属に、48の軍団と118の師団。それが現在は半壊しているという現実に。
「事の真意がはっきりするまで、念入りな調査が必要だな」
狂座の当初の目的は変わらないが、方向は大きく軌道修正する事になる。
『簡単に目的を達成出来るはずだったのに』
ルヅキは言い知れぬ苛立ちを感じていた。
「やっぱり楽しくなってきたね★」
ユーリがいつもの無邪気な笑顔に戻る。
「ユーリ、お前なぁ……」
ユーリの無邪気さにアザミは呆れ顔だ。
「だってボク達に匹敵、もしかしたらそれ以上かもしれない奴がいるって事だよ☆ ワクワクしてくるじゃん★ 退屈してたんだぁ☆」
ユーリの言葉の意味に、ルヅキはある想いに耽る。
『退屈か……』
それはかつて、冥王が常に言っていた言葉。
だからこそ狂座は、退屈凌ぎにこの世界を蹂躙する。
冥王の喜びこそが狂座の喜びでもあるからだ。
必ずや再び此所へ復活させんと――
ルヅキは深い決意を胸に、広間を後にしたのだった。
そう意見したのはアザミだ。
位階制である狂座。軍団は師団の一つ上の階級となっており、規模も戦力も違う。
各々に軍団を束ねているのは、軍団長と呼ばれる者達で、各々の実力は想像を絶する。
アザミの言う通り、軍団を投入すれば一国をも軽く落とせる程の――
「それがそう簡単な話じゃ無いみたいなんですよアザミ」
だがハルは厄介事を抱えた様な、何か気難しい声と共に溜め息を吐いた。
「夜摩一族と交戦したと思われるシオンは、その生体反応が消失する直前に、彼のサーモが裏コードに移行した形跡が記録されているのです」
ハルのその言葉に、直属達に一気に緊張が走る。
「なん……だと?」
“裏コード移行”
その言葉の持つ意味がどの様な事態なのか、その場に居る者達には深い程に理解していた。
「それって……臨界突破って事だよね?」
それまで無邪気だったユーリの表情が真顔になる。
「サーモの故障じゃないのか? 人間界にそんなの存在するはずが……」
そこまで言って、アザミはハッと気付く。
「まさか特異点が!? 四死刀は三年前に壊滅したはず?」
“特異点”
それは人で在って人で無き存在。
人知を超越した存在。
人として生まれながら、人には持ち得ない異能を生まれながら持っている存在。
彼等の間でも、そうした者を特異点と呼んでいる。
調査の段階で過去、現在と合わせても特異点の存在が判明したのは、現時点で四死刀と呼ばれた四人のみ。
「四死刀が現在、存在しないのは確かでしょう。しかし四死刀の一人“魂縛のキリト”が夜摩一族所縁の者という事を考えればもしや……。特異点の存在も有り得ない話ではありません」
ハルはその最も考えられる可能性を口にする。
だとすると――
「それが確かなら、無策に軍団を投入するのは得策では無いな……」
ルヅキが冷静を装いながらも苛々した口調で語る。
「四死刀との闘いで我々狂座は三人の直属に、二十二もの軍団及び六七もの師団を失っている。冥王様復活の前に、なるべくこれ以上の戦力減少は避けたい処だ……」
ルヅキが昔を思い出したのか、深い溜め息をつく。かつては7人の直属に、48の軍団と118の師団。それが現在は半壊しているという現実に。
「事の真意がはっきりするまで、念入りな調査が必要だな」
狂座の当初の目的は変わらないが、方向は大きく軌道修正する事になる。
『簡単に目的を達成出来るはずだったのに』
ルヅキは言い知れぬ苛立ちを感じていた。
「やっぱり楽しくなってきたね★」
ユーリがいつもの無邪気な笑顔に戻る。
「ユーリ、お前なぁ……」
ユーリの無邪気さにアザミは呆れ顔だ。
「だってボク達に匹敵、もしかしたらそれ以上かもしれない奴がいるって事だよ☆ ワクワクしてくるじゃん★ 退屈してたんだぁ☆」
ユーリの言葉の意味に、ルヅキはある想いに耽る。
『退屈か……』
それはかつて、冥王が常に言っていた言葉。
だからこそ狂座は、退屈凌ぎにこの世界を蹂躙する。
冥王の喜びこそが狂座の喜びでもあるからだ。
必ずや再び此所へ復活させんと――
ルヅキは深い決意を胸に、広間を後にしたのだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
<完結>【R18】ズタズタに傷ついた私にたぎる溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
長門美侑
恋愛
涼風凛 29歳 鳳条建設総務課に勤めるOL
クリスマスイブに親友に恋人を略奪され、
彼のために借りた多額の借金だけが凛の手元に残った。
親友と恋人に手痛く裏切られ、
突然凛を襲った激しい孤独感。
そして、返す当てのない借金。
絶望のなか、
捨てばちになってベランダから飛び降りると、
突然、全裸の男が現れて・・・
2024.7.20
完結しました。
読んでくださった皆様!本当にありがとうございました。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる